Mecoptera

2017年7月 8日 (土)

いしもりよしひこ(石森愛彦)著『昆虫って、どんなの?』

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 著者の石森さんと初めてお会いしたのは、今から10年以上前のこと。ハサミムシの話を訊きたい、とのことでわざわざ拙宅まで出版社の方と一緒においでいただいた。
 そのときいろいろお話をしたのだが、自然と接する感覚がボクと近い感じで、気軽にお話できる方だと思った。
 仕事をしている世界が違うので、お会いする機会はそれほど多くないのだが、7年前には子供向きの月刊誌の付録で初めて一緒にお仕事をさせていただいた。

 今年になってから、本の内容をチェックして欲しいと依頼されたのが本書。
 ラフを読ませていただいての最初の印象は、「絵本で昆虫形態学の基礎をやってしまおうという本だな!」ということ。石森さんにそのことをお話したところ、ご本人はそのような目論見でやったわけではなかったとのこと。しかし、ボクの印象が石森さんの無意識の部分を言葉にしたものだとご自身も納得された。

 ボクと石森さんの自然に対する感覚が近いと書いたけれど、見方はかなり違っていて、ボクが虫の暮らしぶりに興味の重点を置いているのに対して、石森さんは虫の形に重点を置いている。
 この本(に限らず石森さんのほかの本も)の虫のイラストは、虫の形を抽象化したものには違いが無いのだけれど、石森さんのイラストは現物に忠実で、基本的な形をデフォルメしたりしていない。だから(だと思うけれど)、精密画ではなくイラストなのだけれど、たいていの場合、種まで同定できる。だからこそ、「昆虫形態学の基礎」の教科書になりえるのではないかと思ったのだと思う。子供向きの本ではあるけれど、だからこそオトナにも役に立つと思う。

 この本には様々な昆虫が登場している。日本産昆虫の目(もく)のレベルで登場していないのはシロアリモドキ目ぐらいではないかと思う。ありとあらゆる昆虫が登場している本は他に例が無いのではないかと思う。虫オタクを自認される方にもオススメする。

 出版社のサイトはこちら

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2011年5月21日 (土)

ハルゼミ(2011年5月21日)

 午前中、いつものフィールドに出かけた。ここに行くのは4月10日以来である。今回は同行者なし。
 晴れていて適度に湿気があるので、虫を見るにはちょうど良い天気ではないかと思ったが、最初のうちは活動している虫はそれほど多くないように感じられた。
 するとそのとき、湿地の向こう側の林からハルゼミの鳴き声が聞こえた。
20110521blog1 この界隈では何度かハルゼミの鳴き声を聞いたことがあるので、今日は姿を拝めるのではないかと思って、湿地の向こう側に行ってみた。すると思いがけぬことに、今度はハルゼミの合唱が始まった。三重県に来てからハルゼミの合唱らしい合唱を聞いたことがなかったので、大変嬉しかった。合唱をするぐらいの個体数がいることがわかったので、今度は姿を見つけることができるのではないかと思って、アカマツの枝をじっくり探した。するとすぐに2頭のハルゼミが見つかった。残念ながら(とは言え、当然のことなのだが)、それほど近い場所ではないので、ハルゼミと同定できるような写真は撮れないと思われた。でも、一応の証拠写真ということで撮影だけは試みた。すると、何とか姿が確認できる程度の写真は撮れていた。
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 その後、この里山のあちこちを徘徊しているうちに、いろいろな虫を見つけた。やけに小さいコマルハナバチが飛んでいたので、もうワーカーが出ているのかと思ったら、それはオオイシアブだった。
 チョウもいろいろ見た。ダイミョウセセリ、イチモンジチョウ、ツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハ、キチョウ、クロヒカゲ、サトキマダラヒカゲなど。アカマツの幹に止まったサトキマダラヒカゲは羽化したばかりと思われる新鮮さだった。
20110521blog3 種名不明のマメ科植物の茎にはハラビロヘリカメムシがいた。
20110521blog4 例によってヒトクチタケではクロハサミムシを探すが見つからず。ゴミムシの仲間が見つかったが、逃げられてしまった。
20110521blog5 林床ではヤマトシリアゲも見つかったし、オオスズメバチも見られた。
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 最初は虫が少なく感じられたが、結果的にはけっこう色々な虫が見られたと思う。特に珍しいものは無かったと思うが、ハルゼミの鳴き声だけでなく、姿そのものを見たのは中学生のとき以来だから、実に39年ぶりである。やはりこれが嬉しかった。

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2009年4月29日 (水)

この春も堀坂山へ・・・2009年

 運動不足で体が鈍っているので、山に行こうということになった。妻が誘ってくれたのだ。こういう時に一緒に付いて来てくれるのは、一番下の息子だけ。というわけで3人で出かけた。
 手軽に行ける、ということで、去年の5月6日にも登った堀坂山(ほっさかさん)に行くことになった。おにぎりを持って、熱いお湯を入れたポットを持って、途中でカップヌードルを買って行くことになった。
 登山口までは、車で一時間弱。良い天気で気持ちが良い。
 本当に体が鈍っていたので、登り始めてすぐに息切れするような状態だった。そのような時に目を楽しませてくれるのは植物や昆虫。登り始めてすぐにウラシマソウが目についた。
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特徴のある植物なので、つい気になる。
 さらに目についたのは、シリアゲムシの仲間。去年も見たのだが、去年はそれほど個体数も多くなく雌がほとんどだった。今日は個体数も多く、雄も多かった。去年より多少時期が早いので、ちょうどこのシリアゲムシの発生時期のピークに当たったのだろうと思う。名前は・・・・・まだ調べていない。
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 山頂にはちょうどお昼ぐらいに着いた。家で食べるカップヌードルは美味しいとも何とも思わないのだが、山の上で食べると美味しく感じられる。
 山頂はこんな感じ。登山者はけっこう多かった。結構年配の方も多かったが、それだけ手軽な山だということなのだろう。
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 去年に較べると、山頂の虫は少ない感じだ。去年たくさん見られたウスチャコガネはほんの僅かに見られただけ。蝶はミヤマセセリが見られたぐらいだ。

 せっかくなので、今日はアマチュア無線の無線機を持参した。交信できるとは全くあてにしていなかった自分で組み立てた50MHzのAMのたった10mWしか出ない無線機。受信部も非常にシンプルな超再生式。
 ところが、聴いてみると、交信している局の声が聞こえてくる。交信している局の一方は大台ケ原の日出ガ岳で、もう一方の局は伊豆半島の万三郎岳。大台ケ原の局ははっきり聞こえたが、伊豆半島の局はかすかに存在が確認できる程度で、話す内容はわからない。交信が終わるのを見計らって、こちらからCQ呼び出しをする。すると、その大台ケ原の局が応答してくれた。直線距離にして約45kmぐらいだ。それにしても、おもちゃのトランシーバと大して変わらない無線機で何十キロも先の局と交信できたのには感激した。何かアマチュア無線に復帰するきっかけになりそうな出来事になったような気がする。
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 無線機を持ったボク。

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2008年5月18日 (日)

アケビコノハの幼虫など

 昨日までの疲れが残っており、とても遠出は無理だったが、気持ちの良い天気になったので、いつものフィールドに出かけた。
 緑はますます濃くなっていたが、端境期にあたるのか、思ったほど虫が多かったわけではなかった。しかし、もう気温が低い時期ではないので、たくさんの虫が見られた。
 今日のヒットはアケビコノハの幼虫だろうか。成虫で越冬したアケビコノハが産んだはずの卵から生まれた幼虫は、もうかなり大きくなっていた。目玉模様が印象的だ。白い花に来ていたコガネムシ。調べれば名前はわかるだろうが、さぼっているので名前を知らない。ヤマトシリアゲもたくさん目についたが、ほとんどが雌で、雄は写真に撮った1頭しか見つからなかった。クロヒカゲは猛烈な速さで飛び、地面などによく止まるのだが、人の気配に敏感でなかなか近寄らせてくれない。
 あと1週間か半月もすれば、アカシジミやウラゴマダラシジミなどの、いわゆるゼフィルスも姿を見せてくれるのではないかと思う。
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2008年5月 6日 (火)

堀坂山へ

 今日は特に予定していたわけではなかったが、朝から良い天気になったので何処かへ行こうという話になった。山のガイドブックを頼りに決めた目的地は松阪市の堀坂山(ほっさかさん)。同行は妻と三男。家を出発したのは10時半だった。
 距離感がよくわからなかったが、登山口の堀坂峠にはほぼ1時間で到着した。ガイドブックには数台の車が置けるというようなことが書かれていたが、10数台の車が置けるスペースがあった。
 登り始めてしばらくは植林の中だったが、まもなく西側は二次林となり、30分も行かないうちに、ほとんど二次林の中の道になった。津市近郊の山は、経が峰にしても錫杖岳にしても、山頂近くまでスギやヒノキの植林ばかりの山が多く、歩いていてもつまらないのだが、この山はまあまあだと思った。
 堀坂山の山頂の標高は757mで経が峰よりも低く、登山口の堀坂峠の標高もかなりあるので、40分ほどで山頂に着いてしまった。ちょっと物足りないぐらいだ。山頂は見晴らしが良く、爽やかで気持ちが良かった。
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 山頂で弁当を食べていると、地表近くを様々な虫が飛んでいた。ハエのように飛び回るウスチャコガネはたくさんいた。職場の畑の回りにもいる種で珍しいというわけではない。三男も一緒に虫を追いかけていると、三男がウスチャコガネの雌を見つけた。職場にもたくさんいるコガネムシなのだが、まだ雌を見たことはなく、ここで初めて見ることができた。山頂にはチョウもたくさん飛び回っていて、アゲハ、キアゲハ、ミヤマカラスアゲハなどのアゲハチョウや、ミヤマセセリやルリシジミやヒオドシチョウがいた。ヒオドシチョウは子供の頃、一宮市の市街地でも見ることができるほど普通の種だったが、近頃ではずんぶん数が減ってしまったらしく、なかなか見る機会がない。こちら三重県に来てからも、はっきりと見た記憶がないので、今回が本当に久しぶりの対面のような気がする。
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 山頂の開けたところでは見られなかったが、登山道ではシリアゲムシの一種がよく目についた。平地に見られるヤマトシリアゲとは別の種であることはわかったが、名前はわからない。家に帰ってから調べようと思ったのだが、資料がなくてわからない。とにかく、歩いている間に相当な数を見たので、普通種には違いないだろうと思う。何故だかわからないが、見つかるものはほとんどが雌だった。
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 ゆっくり歩いて山を下りて、ゆっくり車を走らせて帰ってきたが、午後3時前に家に着いてしまった。ちょっとお手軽すぎる感じだった。しかし、すぐ近所の山に比べれば気持ちが良い山なので、またいつか登ることになるような気がする。

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2006年9月20日 (水)

ベッコウシリアゲ

 今日は代休だったが、飼育実験している虫の餌替えのために昼過ぎまで研究所に出かけた。しかし、せっかくの休みなので、午後からは郊外のいつもの雑木林に出かけた。
20060920blog  この雑木林に来たのは3か月ぶりぐらいになる。景色はすっかり変わって、もう秋の装いとなっている。早速見つけたのはシリアゲムシの一種だった。クモの網に引っかかった虫から体液を吸っていた。何故か家主のクモは見当たらない。春に見られるヤマトシリアゲ Panorpa japonica Thunberg, 1784 とは色が違うが、今日見たのはそれと同じヤマトシリアゲの季節変異ということらしい。昔はベッコウシリアゲという名前で呼ばれていたそうだ。この時期にゆっくりと散策することはなかったので、この時期にシリアゲムシを見ることは初めてで、このことは知らなかった。
 次の予定があったのでゆっくりできなかったが、久しぶりの散策で気持ちが落ち着いた。

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