今年も二度目のフジの花(2018年7月10日)
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著者の石森さんと初めてお会いしたのは、今から10年以上前のこと。ハサミムシの話を訊きたい、とのことでわざわざ拙宅まで出版社の方と一緒においでいただいた。
そのときいろいろお話をしたのだが、自然と接する感覚がボクと近い感じで、気軽にお話できる方だと思った。
仕事をしている世界が違うので、お会いする機会はそれほど多くないのだが、7年前には子供向きの月刊誌の付録で初めて一緒にお仕事をさせていただいた。
今年になってから、本の内容をチェックして欲しいと依頼されたのが本書。
ラフを読ませていただいての最初の印象は、「絵本で昆虫形態学の基礎をやってしまおうという本だな!」ということ。石森さんにそのことをお話したところ、ご本人はそのような目論見でやったわけではなかったとのこと。しかし、ボクの印象が石森さんの無意識の部分を言葉にしたものだとご自身も納得された。
ボクと石森さんの自然に対する感覚が近いと書いたけれど、見方はかなり違っていて、ボクが虫の暮らしぶりに興味の重点を置いているのに対して、石森さんは虫の形に重点を置いている。
この本(に限らず石森さんのほかの本も)の虫のイラストは、虫の形を抽象化したものには違いが無いのだけれど、石森さんのイラストは現物に忠実で、基本的な形をデフォルメしたりしていない。だから(だと思うけれど)、精密画ではなくイラストなのだけれど、たいていの場合、種まで同定できる。だからこそ、「昆虫形態学の基礎」の教科書になりえるのではないかと思ったのだと思う。子供向きの本ではあるけれど、だからこそオトナにも役に立つと思う。
この本には様々な昆虫が登場している。日本産昆虫の目(もく)のレベルで登場していないのはシロアリモドキ目ぐらいではないかと思う。ありとあらゆる昆虫が登場している本は他に例が無いのではないかと思う。虫オタクを自認される方にもオススメする。
出版社のサイトはこちら!
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体調は相変わらず良くないので、休日は家でおとなしくしていることが多いのだが、少しは体を動かした方が良いと思ったし、アサギマダラの南下の季節でもあるので、我が家から気軽に行ける鈴鹿市の岸岡山緑地にでかけることにした。
10月10日はやや雲っていたが、それほど悪い日ではないように思われた。しかし、なかなかアサギマダラが現れず、諦めかけていた正午過ぎ、やっとのこと遊歩道の脇のハギの花を訪れていたオスを発見した。マークがついていなかったので「KK001 Oct 10 KISHIOKA」のマークを付けて放した。その後、昼食を摂ろうと千代崎駅に向かっていたら、緑地の駐車場の近くの畑のコスモスを訪れていたオスを見つけた。これにもマーク。昼食後も緑地を訪れたが、だんだん雲が厚くなり、蝶が飛ぶような天気でもなくなったので終了。この日は2♂にマークしたのみ。
10月11日は天気が悪かったので出かけなかったが、天気が回復した12日、妻と愛犬の柴犬「さくら」と一緒に車で出かけた。10日のことを妻が妻の友人に知らせたところ「見てみたい」とのことだったのだが、緑地でその友人と会うことができた。この日はそこそこ多くの個体を見ることができた。風がやや強かったせいか、林内で見られる個体が多かった。この日は捕獲に失敗した個体も多かったが、6♂2♀にマークし、10日にマークした「KK002 Oct 10 KISHIOKA」の個体を再捕獲した。2日と20分で約150mの移動が確認された。(10月12日撮影)
今日(10月17日)は天気が良くないという予報だったので諦めていたのだが、朝起きたらそれほど悪い天気ではなかったので、また出かけた。朝の冷え込みもなく、風もなかったのだが、陽射しがあまりないせいか、なかなかアサギマダラは見られなかった。11時過ぎごろ、やっと1頭のアサギマダラを見つけたのだが、ネットが届かず捕獲できず。その後もあまり天気がよくなく、昼過ぎまで滞在したが、諦めて退散。マークはできず。
この緑地公園にはカクレミノがたくさん生えていて、実をつけているこの時期、アオモンツノカメムシが多い。(10月12日撮影)
そのカクレミノだが、よく見てみると、幹に傷がついてヤニが出ている個体が多い。穿孔する虫がいるに違いないが、何かはわからない。(10月17日撮影)
また、コナラやカシ類に枯れた木が多く、幹を見てみるとカシノナガキクイムシと思われる虫が加害している様子がわかった。下葉の上に木屑が溜まっている。(10月17日撮影)
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相変わらず体調は良くない。昨日から年休消化モードに入っているが、昨日は寒くてフィールドに出ようという気が起こらなかった。今日も寒いが、風は弱まって晴れたので、午後から少しだけフィールドに出た。本当に久しぶりのフィールドだ。
お目当てはクヌギカメムシ。そろそろ産卵している頃かと思ったのだが、何とほとんど産卵が終わっている感じだった。卵塊はたくさん見つかったが、生きている成虫は1頭見かけただけだった。
以前からうすうす気付いていたのだが、クヌギカメムシの産卵は特定の木に集中するようである。今日はそれが顕著であった。下の写真の中央の2本のクヌギの木のうち、左側の木からは数十卵塊発見できたが、右の木からは全く発見できなかった。その他の木を見ても、ほとんどの木からは全く発見できず、2本の木から1卵塊ずつ発見できた。上の写真は1卵塊のみ発見できた木での産卵シーンである。何を目印にクヌギカメムシが産卵する木を決めるのか、皆目見当がつかない。
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広島大学で先月開催された日本昆虫学会の大会の会場で、これまで名前といくつかの研究業績を知っていて、いつかはお会いしたいと思っていた蔡經甫博士にお会いすることができた。蔡博士は台湾の中興大学で学位を取得され、現在は日本の北海道大学で研究しているカメムシの分類の専門家である。
今日、これということもなく蔡博士の名前でネットを検索していたら、蔡博士と蔡博士の親友のDávid Rédei博士がイワサキオオトゲカメムシAmblycara gladiatoria (Stål, 1876)の近縁種を記載していることに気付いた。記載論文はこちら。
これまでイワサキオオトゲカメムシには近縁種は知られていなかったので、琉球列島に棲息するイワサキオオトゲカメムシの同定で問題になることは無いと思われていたが、ひょっとしてひょっとしたら琉球列島にも新種が棲息しているかも知れないので、注意しなければいけないと思った。
ぱっと見たところ、良く似ているが、前胸背板の棘の形が明らかに異なるし、点刻の密度も異なることがわかるので、同定はそれほど難しくなさそうである。
手元に標本は無いが、これまで自分で撮影した写真を見た所、新種ではなく既知種のイワサキオオトゲカメムシに間違いなかった。
イワサキオオトゲカメムシの寄主植物は知られているが、新種の方はまだ成虫が知られているのみで、生態は全くわかっていないようである。これまで台湾の南部とフィリピンのパラワンから知られているようであるが、まだ他の場所からも見つかるだろうと思う。
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名古屋市に発生している外来種の蝶の発生地を訪ねてみた。
駆除の対策が取られているとのことだが、寄主植物はたくさん生えていた。外来種の蝶を根絶するためにはその寄主植物を十分に取り除くことが必要だと思われるが、困難なことであろうと思う。とは言え、今回は蝶を確認できなかった。
しかし、この場所には外来の植物がたくさん生えていた。外来種の蝶の寄主植物も外来種である。外来種の植物がたくさん生えている中、外来種の蝶だけを根絶しようとするのは、やはりある種の差別ではないかと思う。
外来種が多かったとは言え、在来種の雑草であるウマノスズクサの花を見ることができた。これまでウマノスズクサの花をまともに見たことがなかった。
マンネングサの一種
ウマノスズクサ
マツバギクの一種?
コバンソウ
アオイ科?(どなたかご教示ください)→ヤノネボンテンカとのご教示がありました
ハッカの一種?
ヤナギにはヤナギグンバイが発生していた
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2013年9月14日から16日の日程で開催された日本昆虫学会第73回大会に参加したので、印象をまとめておきたいと思う。
日本昆虫学会第73回大会は北海道大学農学部で開催された。学会で北海道大学を訪れたのは、1986年の日本昆虫学会第46回大会・第30回日本応用動物昆虫学会の合同大会、2004年の日本昆虫学会第64回大会、2009年の第53回日本応用動物昆虫学会大会に続き4回目である。1986年のことははっきり記憶がなく、北海道大学の中の何処で開催されたのか思い出せない。2004年と2009年は旧教養部で開催されたが今回は農学部であった。農学部は広い北海道大学の中でも最も札幌駅に近い場所にあり、北海道大学における農学部の位置の重要性を伺い知ることができる。
1日目(14日)の午前中は一般講演、午後は学会賞受賞講演と総会、夜はアサヒビール園白石はまなす館に場所を移しての懇親会。2日目(15日)の午前中は一般講演と高校生のポスター発表のコアタイム、午後は3本並列のシンポジウム、夕刻には6件の小集会。3日目(16日)
は午前から午後にかけて一般講演、夕刻に6件の小集会。高校生のポスター発表は、地元北海道の高校のほかは九州の高校だけだったのは何故か?
大会前日と終了の翌日は良い天気だったが、大会期間中は毎日雨が降り、けっこう激しい雨が降ることもあった。天気の面ではちょっと鬱陶しい大会となった。
一般講演は主に生活史や生態に関する講演を聴いたが、一部は分類に関する講演も聴いた。2日目のシンポジウムは「昆虫分類学若手懇談会シンポジウム:分類学の過去・現在・未来」、小集会は「第15回昆虫の季節適応談話会」、3日目の小集会は「日本半翅類学会小集会」に出席した。
ボクが聴いた講演の中で、ボクが面白いと思ったものをいくつか挙げて簡単な感想を書いておきたい。
◎ D106 ヒメマルカツオブシムシの蛹化の概年リズムは同一の親由来の幼虫集団でも見られる(西村知良・沼田英治)
集団飼育条件でのヒメマルカツオブシムシ(衣類や昆虫標本などの害虫としてよく知られている)は20℃12時間日長の条件で、孵化後25週、60週、100週に蛹化が集中するリズムを示すが、同じ親由来の幼虫でも蛹化にリズムがあり、親個体によってそれぞれの蛹化時期における蛹化個体の比率に変異があるとのこと。非常に世代時間が長い種での調査は大変で骨が折れることだと思った。
◎ C204 石垣島に生息するニイニイゼミ2種の求愛歌の特徴(立田晴記・佐々木健志)
石垣島に側所的に分布するヤエヤマニイニイとイシガキニイニイの鳴き声の成分を分析することによって、両種を鳴き声によって判別できるとのこと。ボクが石垣島に住んでいた頃、この2種の鳴き声を聞いたことがあるが、同時に2種の鳴き声を聞くことができないことが主な理由で、2種の鳴き声を識別する自信はなかった。ニイニイゼミ類の鳴き声は互いに非常によく似ているが、鳴き声の成分を分析することによって、おそらく他のニイニイゼミ類も識別できるのだろうな、と思う。
◎ C206 アオゴミムシの色彩選好性(榊原充隆)
ストローに各色のビニルテープを巻き付けたものを隠れ家として2種類ずつ入れておくと、隠れ家に入るアオゴミムシの個体数が見事に異なり、明確に順位がつけられることが示されていた。アオゴミムシにとって隠れ家の色など一見どうでもよさそうに思えるが、はっきり識別しているとしか思えないようなデータが示されると、これには何か意味があると思わなければいけないように思える。
◎ C207 ケムシの「毛」は被食防衛に有効か?(杉浦真治・山崎一夫)
クロカタビロオサムシ成虫に各種鱗翅目幼虫を餌にして与えたら、「毛」の長い幼虫を与えた場合には攻撃成功率が低く、「毛」が長い幼虫(クワゴマダラヒトリの幼虫)の「毛」を短くして与えたら攻撃成功率が高まったことが示されたことから、鱗翅目幼虫の密な長毛は捕食者に対して物理的な防衛機能を果たしているが示された。「毛」の長い幼虫の「毛」を取り除いて比較するというのは簡単なことだが、これまでにこれをマトモに調べた人は居なかったらしい。ヨーロッパからアメリカ大陸に侵入したマイマイガ(典型的なケムシである)に対して、捕食者であるニジイロカタビロオサムシが導入されたという実例があることを知っていたので、「マイマイガはどうなんや?」と疑問に思ったが、マイマイガは「毛」がそれほど密では長くないため、捕食者に対してあまり効果的ではないとのこと。
◎ C307 クロウスタビガの生態−野外での幼虫発見と営繭場所(三田村敏正・月田禮次郎)
これまでに知られていなかったクロウスタビガの営繭場所を発見したことの報告。ヤママユガ科の多くの種は樹上で営繭することが知られているが、クロウスタビガは地上に降りて落葉の下などで営繭することが明らかにされた。大型のガの生態がこれまで謎だったことも驚きであるが、それを明らかにしたことも素晴らしい。
◎ C309 ニールセンクモヒメバチによるギンメッキゴミグモの網操作は健全クモが張る休息網を使用している(高須賀圭三・中田兼介・松本吏樹郎・前藤薫)
ギンメッキゴミグモに寄生したニールセンクモヒメバチがギンメッキゴミグモの行動を操作して網の形を変えさせるという報告。寄生者が寄主の行動を操作するという事例はいろいろ知られていると思うのだが(不勉強なので具体的な事例は挙げられないが)、クモの網の形を変えさせるとは、見事としか言いようがない。
「昆虫分類学若手懇談会シンポジウム:分類学の過去・現在・未来」
◎ 昆虫分類学若手懇談会の40年にわたる歴史から見えてくる展望(三中信宏)
三中さんの「高座」を聴いたのは初めてかも知れない。これまで40年の日本における昆虫分類学の若手の状況を知ることができて意義があった。
◎ 分類学研究の新しい可能性としての情報技術と情報学(神保宇嗣)
データベースやインターネットの発展によって、昆虫分類学の展開が変わって、可能性が広がるように感じられた。
◎ ゲノム配列を利用した網羅的系統解析とこれからの分類学(戸田正憲)
ゲノムやそれに基づく系統のことはよく理解していないので・・・・・
◎ 種多様性解明、それは底知れぬ魅力的な泥沼(丸山宗利)
若手のホープの丸山さんのこれまでの研究戦略の披露のような感じの講演。さらに若い人には良い刺激になっただろうと思う。
小集会「第15回昆虫の季節適応談話会」
◎ 熱帯昆虫の個体数変動に季節性はあるか?(岸本圭子)
マレーシア・サラワク州のランビル国立公園でライトトラップで調査したコガネムシ類とハムシ類のデータをもとに熱帯における昆虫の季節性を考察。世代時間が短いハムシ類と長いコガネムシ類を同列に扱うことはよくないと思ったが、まだまだ未知の領域である熱帯における昆虫の季節性の解明には期待したい。
◎ 過変態昆虫マメハンミョウの環境適応(新谷喜紀)
発育過程で擬蛹になったあとでまた幼虫形態になる過変態という段階を経るマメハンミョウが、条件によっては擬蛹を経ることなく生育する場合もあるとのこと。バッタの卵しか餌としないマメハンミョウにとって、変態の可塑性は重要であるように思われた。
◎ ショウジョウバエの寄生蜂の季節適応(木村正人)
申し訳ありません。よくわかりませんでした。
小集会「日本半翅類学会小集会」
◎ カメムシ図鑑第3巻の表の話、裏の話、先の話(石川忠・長島聖大)
20代から90代までの幅広い年齢層の15名の著者の執筆により去年12月に出版された『原色日本カメムシ図鑑第3巻』は予想を上回る売れ行きとのこと。ボクもその中に加わることができて大変嬉しかった。この図鑑の完成までにはいろいろ紆余曲折があり、石川さんのご苦労は並大抵のものではなかったと思う。石川さんの話のなかでは「裏の話」がほとんど無かったのは、ちょっと残念だった。カメムシ図鑑は第3巻まで完成したわけであるが、第3巻には未記載のまま掲載されている種もあるし、その後に初めて記録された種もあるし、将来第4巻を出さないわけにはいかないと思う。この図鑑が出版されたことにより、新しいカメムシファンが増えて、充実した4巻ができると良いと思う。
△ 石川さんの講演の後は、参加者全員による「一人一話」
さらにその後には懇親会もあったが、体調に気を遣って残念ながら欠席することにしたので、懇親会の場所であったかも知れない「裏の話」を聞くことができず残念。
さて、自分自身の講演だが、タイトルの付け方をもうちょっと工夫すれば良かったと若干の後悔。オオハサミムシの低温発育臨界温度が意外に高いことをもっと強調すべきだった。話は変わるが、この自分の講演は、懇親会の翌日の朝一番。前々回もそうだったし、昆虫学会の大会では応動昆との合同大会を含めれば、これまでの19回の講演のうち今回を含めて4回が懇親会の翌日の朝一番である。前々回はスタッフを除けば7人しか聴衆がいなかったが、今回はその倍以上、20人程度は聴衆がいた。雨が降って虫と採りに行けないので、仕方なく学会会場に来た人が多かったのかも知れない。
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森上信夫著『散歩で見つける 虫の呼び名辞典』
2013年7月15日発行
世界文化社
ISBN978-4-418-13422-9 C0045
1,500円+税
出版社サイトは>>こちら<<
目次
春の虫
モンシロチョウ、ギフチョウ、ほか
夏の虫
アゲハ、ツマグロヒョウモン、ほか
秋の虫
キタテハ、モンキチョウ、ほか
コラム
ナミテントウの斑紋図鑑
虫たちのカムフラージュ
身近な夏のセミ
身近なチョウの幼虫
カマキリの卵のう
著者の森上信夫さんから新刊を贈っていただいたので紹介したい。
昆虫写真家である森上さんの「虫の呼び名辞典」というのは、少々意外な感じがした。さいしょパラパラと見た時の印象も、なんとなく意図がわからない感じがした。しかし、あらためて最初から読み直してみたら、面白い着想だということが理解できた。
虫には名前が付けられている。普通の人が使っているのは「和名」である。和名には、その虫の形態が表されていたり、生き様が表されたりしていることが多いが、中には意味がよくわからないものがある。ボク自身の頭の中では虫の名前はほとんど記号化していて、その意味を深く考えることは無くなってしまっている。
この本は、身近な虫の名前について、その名前の意味するところを解説している。なかにはよく分からないものもあるが、それは森上さんの解釈の説明がある。これを読んでみると、自分の名前の解釈には色々な思い込みがあることもわかった。ようするに、自分は名前のことを深く考えていなかったということである。
名前の本だけなら、写真家である森上さんが書くのに違和感を感じるわけだが、それぞれの種のすばらしい写真が添えられている(というか、写真が主役なわけだが)ので、名前が意味するところが理解しやすい。写真だけでも中途半端になっていただろうが、文章と写真が結びついて、完成度の高いものになっている。
それはともかく、虫の名前の由来を知ることによって、虫への理解がより深まると思われるので、自然観察する人には、本書はお勧めだと言える。しかし、身近な虫でありながらゴキブリが掲載されていないのは、何からの意図があってのことか?
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石川 忠・高井幹夫・安永智秀 編『日本原色カメムシ図鑑第3巻−陸生カメムシ類−』
全国農村教育協会
ISBN978-4-88137-168-8
12,000円+税
2012年12月25日発行
576 pp.(カラー図版128枚)
編著者一覧
林 正美・井村仁平・石川 忠*・菊原勇作・河野勝行・宮本正一・長島聖大・中谷至伸・庄野美徳・高井幹夫*・友国雅章・山田量崇・山本亜生・山下 泉・安永智秀*(アルファベット順:*は編者を兼ねる)
1993年に発行された「第1巻」、2001年に発行された「第2巻」に続くもので、長い間発行が待たれていた。もう出版されないのではないかと噂されることもあったが、若手の石川 忠さんと、これまでの図鑑でも中心的な役割を果たしてきた高井幹夫さんの努力があって、ついに発行にこぎ着けた。ボクもこの図鑑に関わらせていただくことになったが、最初の原稿を出してから10年近く経ってからの発行なので、実に感慨深いものがある。
「第1巻」では陸生カメムシ全般、「第2巻」では主にカスミカメムシ科とハナカメムシ科が扱われていたが、「第3巻」は「第2巻」で扱われなかった陸生カメムシの科がすべて扱われている。「第1巻」から分類学的に変更があったものもいくつかあり、とくに「第1巻」ではナガカメムシ科として扱われていた大きな科が「第3巻」では細分化された最新の分類体系に従っている。
日本産のカメムシ類の研究は未だ発展途上にあり、まだ解明されていない部分も多い。本書は現時点での最新の情報を網羅したものであり、これを土台として、新たな日本のカメムシ相が解明されていくことになるだろうと思う。
「第3巻」では扱っている科の種すべてについて解説が書かれているが、「第1巻」以降に変更されていない種については写真が掲載されていない種が多いので、絵合わせで同定する場合には「第1巻」も併せて参照することが必要となる。
12,000円(+税)と決して安い本ではないが、内容を見ていただければ、決して高い本ではないと納得していただけると思う。
本書についての詳細が書かれている出版社のホームページはこちら。「第1巻」も「第2巻」も現在販売中。
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東京都町田市にある玉川大学で9月16、17日に開催された日本昆虫学会第72回大会に参加した。ボクは評議員ではないのだが、代理出席を依頼されていたので、その前日の15日の午後に玉川大学入りした。日本昆虫学会の評議員会は、各地域の支部選出の評議員が、各地域から最低1名が出席していないといけないという規約があり、東海地域の評議員が0になってしまう可能性があるから出席して欲しい、ということで依頼されたわけである。
15日に玉川大学に着いたときは、蒸し暑くて、駅から大学までのダラダラの上り坂を歩いていると汗が噴き出してくるぐらいだった。しかし、評議員会の会場になっている教室に入ると、冷房が効いており、寒いぐらいだった。議事は滞り無く終了した。夕方5時半頃、評議員会を終えて外に出るとヒグラシの鳴き声が聞こえた。その他にも玉川大学ではアブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシの鳴き声を聞いた。
16日からが学会の本番である。16日の午前中は一般講演。主に生活史関係の発表が行われる会場にいた。
◎C102 山崎和久・Schüte Kai・名和哲夫・土田浩治「ムネアカハラビロカマキリ(仮称)の日本からの発見と分布に関する報告」
ハラビロカマキリに近縁なハラビロカマキリよりも大型の日本未記録種が岐阜その他数か所で発見されたという発表である。こんな大型種がこれまで気付かれずにいたというのは驚きである。ハラビロカマキリよりも大型で前胸が長く、胸部の腹面が赤色を帯びているので、ハラビロカマキリとの識別は難しくないと思われる。もともといた種なのか、移入種なのか、興味惹かれる。
◎D108 横地亮祐・三浦一芸・山岸健三「ミンミンゼミの形態的・地理的変異と遺伝子変異について」
ミンミンゼミは斑紋や色彩の変異に富む種であるが、それの遺伝的変異を調べた研究である。が、遺伝的変異はほとんどない、ということであった。ミンミンゼミとクマゼミは棲み分けているという通説があるが、愛知県の知多半島にある美浜町では、両者が混棲する地域があるという言及があった。発表者の横地氏は広島大学の大学院生であるが、同じ広島大学に勤務していてセミの図鑑の著者でもある税所康正氏とは全くコンタクトしていなかったらしい。同じキャンパスにいるのにもったいない話である。
午後の最初はアメリカ昆虫学会の会長のG. C. Brown氏による研究の国際連携に関する講演。アメリカ昆虫学会からは日本昆虫学会に対して、学生会員の相互会員制度が提案されており、その宣伝でもあったようだが、随所に日本語のスライドが使用されているにもかかわらず(「Google翻訳」を使ったそうである)、英語を聞くのが苦手なボクには内容を十分に理解できたとは言えない。情けないことである。
次は学会賞受賞講演2題。
◎上村佳孝・三本博之「Comparative copulation anatomy of the Drosophila melanogaster species complex (Diptera: Drosophilidae).
ハサミムシの交尾器の形態の進化を得意とする上村氏がショウジョウバエの交尾器についても優れた論文を書いているところがすごい。
◎丸山宗利・小松貴・R.H.Disney「Discovery of the termitophilous subfamily Termitoxeniidae (Diptera: Phoridae) in Japan, with description of a new genus and species.」
アリやシロアリの巣に見つかる昆虫を得意とする丸山氏が日本産のシロアリの巣からもノミバエを発見したという興味深い発表である。
次は総会。議事は滞り無く進行し、九州大学名誉教授の湯川淳一先生が名誉会員に決まった。
さらに、大会主催のシンポジウム「昆虫の社会的貢献」。
◎Y. J. Kwon「Role and contribution of entomology for public in Korea」
韓国昆虫学会の会長による、韓国の事例の紹介であった。マルハナバチが授粉昆虫として利用されていることなど。
◎中村純「みんなが知っている昆虫ミツバチは本当によく知られているか」
ミツバチは、よく知られているようで実は誤解されていることが多い、という事例の紹介であった。一度誤った理解が定着してしまうと、その誤解を解くことはなかなか困難である、とのこと。この話を聞いて、「カマキリの雪予想」の話を思い出してしまった。
◎松浦健二「シロアリ研究における基礎と応用のフィードバック」
新進気鋭のシロアリ研究者、この春、30代にして京都大学昆虫生態学研究室の教授に着任した松浦氏の講演は面白かった。緻密な観察に基づいた基礎的な研究から、シロアリの新しい防除法の開発に至るまでのワクワクさせられる話だった。松浦氏の今後の研究の発展を期待させられる内容であった。
夕刻終了したシンポジウムの後は懇親会。大学内の食堂で開催された。懇親会の料理は学会の印象を大きく左右するだけに、学会で最も重要なプログラムだと言っても良いかも知れない。今回は去年の松本大会のように料理が足りなくなってしまうようなことはなく、落ち着いて話をしながら食事をすることができた。料理の質は素晴らしかった2009年の三重大会のように、これと言って高いわけではなかったが、最後に玉川大学特製のハチミツ入りアイスクリームが出たところは良かったと思う。
このあと二次会には参加せず、おとなしく町田市内のビジネスホテルへ。町田の駅前は異様に人口密度が高く、息苦しさを覚えた。
学会2日目の午前中は2本の公募シンポジウムが同時並行で開催された。ボクは「ネオバイオミメティクス:昆虫学と工学の協調」に出席した。昆虫の形態や機能を模倣した技術が様々な用途に利用されつつあることが紹介された。普段はあまり聞かない内容の話だったので、目新しさもあり、面白かった。
昼休みには会場で売られていた玉川大学ブランドのハチミツを買った。何種類かあったが、それほどお安くなかったので、いくつも買うことは躊躇させられ、結局、「ソバとシナノキのハチミツ」を1つだけ買った。
学会2日目の午後は一般講演。この日もやはり生活史関連の講演が行われる会場にほとんど張り付いていた。ボクはC213の講演で「ヒメジュウジナガカメムシの生活史に関する若干の知見」という演題で、このブログに断片的に書いてきたヒメジュウジナガカメムシの観察記録をまとめて話をした。オチの無い話ではあったが、京都大学名誉教授の藤崎先生から「秋にガガイモの種子に来ているカメムシはヒメジュウジナガカメムシではないのか?」と質問され、「多分そうだと思うが、ヒメジュウジナガカメムシは、種子がなくても、茎葉からの吸汁だけで繁殖ができるところが生活史戦略的にみても面白いところだと思う」と答えた。
一般講演の後は小集会。参加したい小集会が2つ重なってしまい(と言うか、今回の大会では会期が2日間と短いために、小集会の時間帯が1つしかないのがそもそもの問題であるわけであるが)、よく考えたあげく、「日本半翅類学会小集会」の前半に出席したあと、「第14回昆虫の季節適応談話会」の後半に出席することにした。
「日本半翅類学会小集会」では、北九州の小倉高校の高校生によるクワキヨコバイ類に関する研究発表があった。奥寺繁さんの指導のもと、今年の春から研究を始めたばかりだと言うことだが、しっかり調査されていると感じさせられた。
「第14回昆虫の季節適応談話会」では田中誠二さんの「亜熱帯昆虫の休眠の意義と進化」の話を聴いた。季節適応としての休眠は温帯地域を中心に研究されてきており、亜熱帯地域の昆虫における休眠はまだ十分に研究されているわけではない。田中さんは自身の豊富な亜熱帯地域での研究経験をもとに、いくつかの昆虫(クモを含む)の亜熱帯地域における休眠の適応的意義について解説した。ボク自身、石垣島に暮らしていた経験から、亜熱帯地域の昆虫の生活史に深く興味を抱いており、納得させられる話が多かった。
小集会の終了後は、再び「日本半翅類学会」のメンバーと合流して、町田市内に繰り出して飲んで(ボクはノンアルコールビール)いろいろ虫談義に花を咲かせた。世界でも片手で数えられるほどしかいないハサミムシの分類の専門家のNさんが参加していたので、ハサミムシの話をたくさんした。まだ、日本のハサミムシには分類学上の問題がたくさん残されているようである。
学会の最中は天気が不安定で、突如として激しい雨に降られたりと、けっこう大変であった。18日の朝に帰路についたわけだが、ボクが乗った新幹線は何事も無く無事に名古屋まで着いたが、少しあとの新幹線は岐阜羽島と米原の間で運転が見合わせになったので、名古屋に着くのも大変だったかも知れない。とにかく、昼過ぎには無事に自宅に帰り着き、自宅で昼食をとった。
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