Diptera

2013年7月14日 (日)

森上信夫著『虫の呼び名辞典』

森上信夫著『散歩で見つける 虫の呼び名辞典』
2013年7月15日発行
世界文化社
ISBN978-4-418-13422-9 C0045
1,500円+税

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出版社サイトは>>こちら<<

目次
春の虫
 モンシロチョウ、ギフチョウ、ほか
夏の虫
 アゲハ、ツマグロヒョウモン、ほか
秋の虫
 キタテハ、モンキチョウ、ほか
コラム
 ナミテントウの斑紋図鑑
 虫たちのカムフラージュ
 身近な夏のセミ
 身近なチョウの幼虫
 カマキリの卵のう

 著者の森上信夫さんから新刊を贈っていただいたので紹介したい。
昆虫写真家である森上さんの「虫の呼び名辞典」というのは、少々意外な感じがした。さいしょパラパラと見た時の印象も、なんとなく意図がわからない感じがした。しかし、あらためて最初から読み直してみたら、面白い着想だということが理解できた。
 虫には名前が付けられている。普通の人が使っているのは「和名」である。和名には、その虫の形態が表されていたり、生き様が表されたりしていることが多いが、中には意味がよくわからないものがある。ボク自身の頭の中では虫の名前はほとんど記号化していて、その意味を深く考えることは無くなってしまっている。
 この本は、身近な虫の名前について、その名前の意味するところを解説している。なかにはよく分からないものもあるが、それは森上さんの解釈の説明がある。これを読んでみると、自分の名前の解釈には色々な思い込みがあることもわかった。ようするに、自分は名前のことを深く考えていなかったということである。
 名前の本だけなら、写真家である森上さんが書くのに違和感を感じるわけだが、それぞれの種のすばらしい写真が添えられている(というか、写真が主役なわけだが)ので、名前が意味するところが理解しやすい。写真だけでも中途半端になっていただろうが、文章と写真が結びついて、完成度の高いものになっている。
 それはともかく、虫の名前の由来を知ることによって、虫への理解がより深まると思われるので、自然観察する人には、本書はお勧めだと言える。しかし、身近な虫でありながらゴキブリが掲載されていないのは、何からの意図があってのことか?

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2013年3月 3日 (日)

三重昆虫談話会2013年総会兼日本鱗翅学会東海支部例会(2013年3月3日)

 今日は午後から三重県教育文化会館(津市)で開催された三重昆虫談話会2013年総会兼日本鱗翅学会東海支部例会に行ってきた。近くなので歩いて出かけたが、気温が低く、風が吹いて、寒かった。体調もまだ思わしくないので、よけいに応えた。

会長の挨拶と会務報告のあと、3題の講演。

1)三重県のムシヒキアブ(篠木善重)
2)今までやってきたこと、これからやれそうなこと(大島康宏)
3)ウスバアゲハの分布の拡大と縮小(間野隆裕・山田昌幸・高橋匡司)

 篠木さんの話は、一般の虫屋にはあまり興味を持たれていないムシヒキアブの話で、三重県のムシヒキアブをまとめていきたいので皆さんお願います、というような内容であった。ムシヒキアブの仲間は、見ても採集しないことが多いので、目立つ種以外は名前を知らない。採集して篠木さんに渡さなくては。
 大島さんは去年の4月に三重県立博物館の新任学芸員として着任したチョウの専門家である。まだ完成していない新・三重県立博物館をどのようにしていくか、という意義込みに溢れた話であった。これからが楽しみである。
 間野さんの話は、愛知県の矢作川流域のウスバアゲハ(ついついウスバシロチョウと呼んでしまうが、ボクはウスバシロチョウの名前の方が好きである)の分布の拡大と縮小の話で、たくさんデータが取られていて説得力がある話であった。

 総会のあと、夕方には懇親会があったが、体調がすぐれないので失礼してしまった。

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2011年10月18日 (火)

秋の深まりを感じる(2011年10月18日)

 今日は代休だったが、処理しなければいけない仕事もあったので、午前中だけ出勤した。
 職場の庭ではサザンカが咲き始めていた。サザンカの花を見ると秋の深まりを感じる。サザンカにはスズメバチが何頭も来ていたし、オオハナアブはたくさんいた。コアオハナムグリも何頭かいた。
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 あれだけたくさん居たヒメジュウジナガカメムシもほとんど居なくなってしまった。何処へ行ったのやら。今日見つけたのは、わずかな成虫と5齢幼虫のみ。本当にわけがわからない虫である。
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2011年10月17日 (月)

個体群生態学会第27回大会@岡山大学・印象記(2011年10月14日〜16日)

 個体群生態学会の大会というかシンポジウムに参加するのは、1997年10月に沖縄県知念村(当時)のホテルサンライズ知念で開催されたシンポジウム以来だから14年ぶりである。こちらにその時の写真が掲載されているが、みんな若いので時が経ったことを嫌でも感じさせられる。どうでも良い話であるが、その年はボクが石垣島に赴任した年で、まだ出張慣れしておらず、飛行機に乗ったあとでパンツを持ってくるのを忘れたのに気付き、那覇に着いてから牧志の商店街に行ってトランクスを2枚買ってから開南のバス停から38番の東陽バスに乗ったことが思い出される。その14年前のトランクスは去年ぐらいまで長期にわたって使っていたが、そんなに長く使っていられた理由は、普段はトランクスを履かずブリーフを履いていたからである。
 個体群生態学会は、もともとは害虫の防除や水産資源の管理などの応用分野に大きく関係する個体群動態や分布様式の解析などがテーマの中心だったが、社会生物学とか進化生態学と呼ばれる分野が日本に押し寄せてきた1970年代の終わり頃から、それらの新しい分野の研究が中心的になってきた。そのため、応用分野に身を置くボクとしては、個体群生態学会の大会あるいはシンポジウムに出席しようという動機が薄くなっていた。ところが今回の大会は、応用分野のシンポジウムがいくつも組まれていたので、久しぶりに出席してみようという気になった。
 1日目と3日目は2〜3つのシンポジウムが同時並行して開催されていたので、どちらに出ようか迷うものもあった。2日目は本大会のメインのシンポジウムであり、参加者は半ば強制的に出席させられた。シンポジウムの他には、自由応募によるポスター発表が2日目と3日目に開催されていた。
 1日目のシンポジウムは大学の授業が終わってからの18:00からの開始であった。ボクは「ここまでわかった昆虫の長距離移動」のシンポジウムに出た。4名からそれぞれ、イネウンカ類、ハスモンヨトウ、ナモグリバエ、コガタアカイエカの長距離移動についての話題提供があった。イネウンカ類については、かなり良い精度で海外からの長距離移動の予測が可能になっている。ハスモンヨトウについても、かなり海外から来ていることは間違いないし、コガタアカイエカについても、遺伝子型をみる限り海外からたびたび飛来があることは確かだと思える。よくわからないのがナモグリバエである。ここ三重県辺りでは冬場しか見られないが、北海道では越冬できずに夏場に見られる。どのように移動しているのか、まだはっきり言えない状態である。
 2日目は朝から夕方まで、2人の日本人に加え、外国人の演者4名を招いて社会性の進化に関する最近の研究の紹介であった。これは、通訳無しの英語で行われた上に、普段馴染みの無い社会性に関する話題が中心だったので、テクニカルタームがわからず、何が語られているのかさっぱりわからない、非常に情けない状態だった。日本語で話されていてもわからなかった可能性もある。
 そのあとは総会と奨励賞の受賞記念講演が行われた。受賞記念講演は内海俊介氏による「時々刻々と変化する植物から昆虫の多様性に迫る」という演題で、ヤナギをモデルにしてそこに棲息する昆虫の多様性の違いが紹介された。あたりまえと言えばあたりまえのような話ではあったが、自然生態系の中で起こっていることを体系立てて説明することはやっかいなことなので、奨励賞に値する良い研究内容だったと思う。
 このあと懇親会があったが、既に書いたように、出席しなかった。
 最終日3日目は午前中に1コマ、午後に2コマのシンポジウムが組まれていた。
 午前中は「外来生物の侵入と拡大−植物保護の最前線−」に出た。外来生物はしばしば多量に繁殖して問題を起こすことがあるが、そのようなことに関わる話題として、輸入検疫からみて警戒すべき害虫、チャトゲコナジラミ、既存の天敵が効かないミツユビナミハダニ、外来雑草、計4題が紹介された。雑草の話を聞く機会は少なかったが、植物検疫という関門がある病害虫と違い、検疫フリーで入ってきてしまう雑草の問題は厄介な問題だと思った。
 午後の1コマ目は「寄生生物の進化と多様性〜楽しい強制から怖い感染症まで〜」に出た。テレビなどでも引っ張りだこの五箇公一氏がオーガナイザーである。五箇氏が趣旨説明をしたわけだが、氏の話し振りは人を惹き付けるものがあり面白い。そのあと5題の話題提供。寄生−被寄生の関係を持たない生物はほとんどないと思われるが、様々な寄生あるいは共生関係が紹介され、寄生−被寄生関係の面白さがあらためて感じさせられた。
 最後の午後の2コマ目は「農業生態系における個体群生態学」に出た。奥圭子氏の趣旨説明のあと、4題の話題提供があった。金子修治氏のカンキツ園におけるニホンアブラバチの個体群に関する話は、様々な生態的な関係のしっかりしたデータが取られており、充実した内容だと思った。上野高敏氏は現在ボクも関わっている農耕地の生態系の生物多様性の指標から農法を評価しようというプロジェクトの紹介のような話であったが、話のまとめかたや話し振りが非常にうまく、あらためて自分が何をやってるのかを再確認させられるような思いであった。最後に中筋房夫先生のコメントがあったが、このエントリーの最初の方に書いた、個体群生態学会の歴史について触れられ、今でも個体群生態学は農業害虫研究にとって重要である、と締めくくられた。
 時間が前後するが、ポスター発表について。ボクは石垣島に住んでいたときのホシカメムシの研究以来、配偶干渉について興味をもっていたが、そのときいろいろと教えていただいた西田隆義氏がご自身や学生さんとの共同研究のポスターを発表されており、在来タンポポと外来タンポポの分布が配偶干渉で説明できるということで、大変面白いと感じた。最優秀ポスター賞を獲得したのも配偶干渉に関したもので、京極大助氏と西田隆義氏の共同研究の「マメゾウムシにおいて種間交尾がアリー効果を引き起こす」であった。
 今回の大会は200名弱の参加者だったと思うが、規模が大きすぎず小さすぎずというところで、なかなか良かったと思うし、内容的にもボクには有意義なものだったと感じられた。しかし、来年も参加するかどうかは、開催されるシンポジウムの内容次第ということになると思う。

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2011年7月16日 (土)

日本学術会議公開シンポジウム「新時代の昆虫科学を拓く2」(2011年7月16日)

 前日に開催されたシンポジウムに引き続き、今日もまた名古屋大学野依記念学術交流館で開催された日本昆虫科学連合、日本学術会議応用昆虫学分科会およびその加盟学協会主催のシンポジウムに出かけた。

プログラム
開会(13:00)
1 日本昆虫科学連合活動報告
山下 興亜(中部大学学長、日本学術会議連携会員)
2 応用昆虫学分科会からの「報告」
藤崎 憲治(京都大学大学院農学研究科教授、日本学術会議連携会員)
3 講演
1)細胞内カルシウム動態のかく乱を特徴とする殺虫作用
正木 隆男(日本農薬株式会社; 日本農薬学会)
2)アジアにおける昆虫媒介性感染症とそのベクター
沢辺 京子 (国立感染症研究所 昆虫医科学部; 日本衛生動物学会)
3)食品への昆虫混入とその防止法
宮ノ下 明大 (農研機構食品総合研究所 食品害虫ユニット; 日本家屋害虫学会)
4)アルカロイド利用昆虫の化学生態学
本田 計一 (広島大学大学院 生物圏科学研究科 生物機能開発学専攻; 日本鱗翅学会)
5)トンボにおける色彩多型の発生・進化機構
二橋 亮 (産業技術総合研究所; 日本動物学会)

 昨日のシンポジウムはちょっと期待はずれだったが、こちらの方は面白かった。
 講演はともかく、藤崎先生からの「報告」は、昆虫科学が置かれている立場やこれからなすべき仕事について、的を射た「報告」だったように思われた。
 正木氏の講演は、最近開発された優れた殺虫剤フルベンジアミドの作用機作の解説が中心であったが、勉強になった。
 沢辺氏の講演は、最近軽く見られがちの昆虫伝搬性疾病にかかわる媒介昆虫の重要さをあらためて示したもので、面白いと思った。
 宮ノ下氏の講演からは、意外なところで昆虫が問題になっているということを知ることができて勉強になった。
 本田氏の講演は、もうかなり解明されてきたかのように思われたマダラチョウとピロリジジンアルカロイドの関係が、まだ十分には明らかにされていないことを示したもので、昆虫と植物の共進化の奥の深さをあらためて感じさせられた。
 二橋氏の講演は、トンボに見られる「色」について、様々な面からその機能を明らかにしてきたもので、大変興味深かった。
 昨日のシンポジウムもこのシンポジウムも、もともとは東京で開催される予定だったものが、震災の影響で名古屋に会場を移して開催されたものである。このようなシンポジウムは、東京ばかりでなく、地方でも開催して欲しいものである。言うまでもなく、東京に行くより、名古屋に行く方が気楽である。

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2011年7月 2日 (土)

日本応用動物昆虫学会2011年度 学会賞・奨励賞授与式 名誉会員推挙状授与式 および受賞者による特別シンポジウム@三重大学(2011年7月2日)

 3月下旬に九州大学で予定されていた日本応用動物昆虫学会の大会は3月11日の震災の影響で中止されたが、行わなければいけないことを行うため、「日本応用動物昆虫学会2011年度 学会賞・奨励賞授与式 名誉会員推挙状授与式 および受賞者による特別シンポジウム」が開催された。場所はぼくの地元の三重大学。
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式次第
1. 開会の挨拶:河合 章 会長
2. 名誉会員推挙状授与:湯川淳一 会員
3. 学会賞・奨励賞授与:松村正哉 会員、深津武馬 会員(学会賞)、前野浩太郎 会員、徳丸 晋 会員(奨励賞)
4. 受賞者による特別シンポジウム
徳丸 晋(京都府農林水産部)「侵入害虫を含めた難防除野菜害虫の生態解明と防除に関する一連の研究」
松村正哉(九州沖縄農業研究センター)「イネウンカ類の発生予察と管理に関する一連の研究」
深津武馬(産業技術総合研究所)「昆虫類と微生物の共生現象に関する研究」
湯川淳一(九州大学)「害虫および天敵タマバエ類の分類と生態に関する研究」
5. 懇親会

推挙状など
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会長の挨拶
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 今回はホスト側ということで、タイムキーパーを仰せつかった。シンポジウムの講演は面白いものが多く、つい聞き入ってしまい、深津さんの講演のときにはベルを鳴らし忘れ、2分ばかり講演時間を長くしてしまったが、誰も気づかなかったと思う。昆虫と共生微生物の関係は今後解明されるべきものがたくさん残されていると感じられ、研究ネタの宝庫のように思われた。なお、奨励賞の前野浩太郎さんは海外に出られたので、授与式には代理でお父さんがおいでになっており、講演はなかった。
 夕方は場所の移して懇親会。再び河合会長の挨拶から。
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 懇親会は三重大学の生協のカフェテリアで行われた。2009年の昆虫学会の大会の懇親会も三重大学生協の料理だったが、質量ともに申し分なかった。今回も料理は美味しく、量も十分すぎ、最後はかなり食べ残しが出てもったいないと思った。
 懇親会のあと、多くの人は二次会へと津市内へ向かったが、それは失礼して帰宅した。

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2011年5月21日 (土)

ハルゼミ(2011年5月21日)

 午前中、いつものフィールドに出かけた。ここに行くのは4月10日以来である。今回は同行者なし。
 晴れていて適度に湿気があるので、虫を見るにはちょうど良い天気ではないかと思ったが、最初のうちは活動している虫はそれほど多くないように感じられた。
 するとそのとき、湿地の向こう側の林からハルゼミの鳴き声が聞こえた。
20110521blog1 この界隈では何度かハルゼミの鳴き声を聞いたことがあるので、今日は姿を拝めるのではないかと思って、湿地の向こう側に行ってみた。すると思いがけぬことに、今度はハルゼミの合唱が始まった。三重県に来てからハルゼミの合唱らしい合唱を聞いたことがなかったので、大変嬉しかった。合唱をするぐらいの個体数がいることがわかったので、今度は姿を見つけることができるのではないかと思って、アカマツの枝をじっくり探した。するとすぐに2頭のハルゼミが見つかった。残念ながら(とは言え、当然のことなのだが)、それほど近い場所ではないので、ハルゼミと同定できるような写真は撮れないと思われた。でも、一応の証拠写真ということで撮影だけは試みた。すると、何とか姿が確認できる程度の写真は撮れていた。
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 その後、この里山のあちこちを徘徊しているうちに、いろいろな虫を見つけた。やけに小さいコマルハナバチが飛んでいたので、もうワーカーが出ているのかと思ったら、それはオオイシアブだった。
 チョウもいろいろ見た。ダイミョウセセリ、イチモンジチョウ、ツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハ、キチョウ、クロヒカゲ、サトキマダラヒカゲなど。アカマツの幹に止まったサトキマダラヒカゲは羽化したばかりと思われる新鮮さだった。
20110521blog3 種名不明のマメ科植物の茎にはハラビロヘリカメムシがいた。
20110521blog4 例によってヒトクチタケではクロハサミムシを探すが見つからず。ゴミムシの仲間が見つかったが、逃げられてしまった。
20110521blog5 林床ではヤマトシリアゲも見つかったし、オオスズメバチも見られた。
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 最初は虫が少なく感じられたが、結果的にはけっこう色々な虫が見られたと思う。特に珍しいものは無かったと思うが、ハルゼミの鳴き声だけでなく、姿そのものを見たのは中学生のとき以来だから、実に39年ぶりである。やはりこれが嬉しかった。

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2010年11月 6日 (土)

第154回日本昆虫学会・第91回日本応用動物昆虫学会東海支部合同講演会

第154回日本昆虫学会・第91回日本応用動物昆虫学会東海支部合同講演会が名古屋の金城学院大学で開催された。
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講演:森勇一氏
演題:先史〜歴史時代の昆虫化石から探る人々の暮らし
コメンテーター:河野勝行氏、山岸健三氏、桐谷圭治氏
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 昆虫学会と応動昆の東海支部会の講演会としては異色の人選である。これまでは、生きた昆虫を相手にしている研究者による講演ばかりであったが、今回は遺跡から発掘された昆虫を研究されている森勇一氏が講演者である。
 様々な時代の遺跡からは様々な昆虫化石が見つかっている。そこで発見された昆虫から、当時の人々の生活がうかがわれるという話であった。人間の糞尿の処理に関しても、昆虫が何らかの役割を果たしていたはずで、それが昆虫化石にも反映されている、ということである。
 ぼくは全くの専門外ではあったがコメンテーターを依頼されており、事前に森氏の論文をあらかじめ送っておいていただいたのであるが、やはり直前までどのようなコメントをしたら良いのかわからなかった。ちょっと気になっていたのは、中世(鎌倉時代あたり)の遺跡からヒメコガネの化石が多数発見され、異様な塊として発掘されることがあるという話だったので、それはひょっとしたら当時の人間がヒメコガネを食べて、食べられない部分をまとめて捨てたのではないかということを思いついたので、そのようなコメントをした。もちろん、自信があっての話ではないが、昆虫食の文化が当時あった可能性は否定できないと思っている。
 次に、今では北海道には分布していないアカスジキンカメムシの化石が北海道でも発見されるのに、オオキンカメムシの化石は発見されないのが不思議である、という話があったが、これについては、オオキンカメムシが日本在来ではないアブラギリを寄主植物としており、アブラギリの栽培され始めた時代が新しいので古い時代の古墳からは発見されないのではないか、とコメントした。
 山岸氏からは、地質学についても深く突っ込んだコメントがされたが(ぼくは十分に理解できなかった)、あとからうかがったら、中学生時代には地学部に入っていて、化石を掘っていた経験があるとのことであった。
 桐谷氏からは、深い昆虫学の経験と知識をもとづいて、森氏の研究について(あらかじめ送られていた論文を読んだ上で)幅広いコメントをいただいた。
 講演会のあとは懇親会。人数が少なかったので、懇親会でも濃い議論ができたように思う。今回の講演とは全く関係無いが、最近、保湿性に着目されて(冬に乾燥しても土が風に吹き飛ばされないなど)学校の校庭に蛇紋岩を砕いたものが撒かれているそうであるが、蛇紋岩は超塩基性で毒性もあるため、特殊な植物(例えばツゲ)しか生育できず、木々が枯れている事例が多発しているそうである。地質に詳しい人からは、普段は聞けないような話が聞けて面白いと思った。

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2010年9月19日 (日)

日本昆虫学会第70回大会・第2日目(2010年9月19日)

 今日は自分の発表があるので、多少緊張していた。実際の予行演習はしておらず、イメージトレーニングだけで、12分で話を収められるだろうと、だいたいの見当はついていたのだが。
 自分の発表の前は、それなりに面白そうな発表の会場をまわったが、特に心を撃たれるような発表はなかった。自分の発表は、だいたいの想定通り。やや終盤で時間が足りなくなりそうになったが、まあ何とか喋りたいことは喋ることができたように思える。その後は自分の発表会場の講演を聴いていたが、最後は久保田耕平さんらのタカネルリクワガタの講演を聴くために会場を移った。タカネルリクワガタは最近話題の種である。狭い範囲に分布している種だが、山のピークごとに遺伝的な変異がみられるとのことで興味深かった。
 午後からは会場を「東京第一ホテル」に会場を変えた公開シンポジウム「昆虫から眺めた温暖化と生物多様性」。最近のキーワードである、「温暖化」と「生物多様性」の両方が入っている欲張りなテーマである。講演は以下の5題。
・桐谷圭治「外来種の北進が在来種を絶滅に追いやる:ミナミアオカメムシとアオクサカメムシ」
・湯川淳一「昆虫の出現期と植物の開葉期のずれが生物多様性に及ぼす影響」
・石井実「温暖化と南方系チョウ類の分布拡大」
・沼田英治・森山実「都会のセミの多様性が失われた理由」
・藤崎憲治「温暖化のカスケード効果:シカの増加が昆虫の多様性に及ぼす影響」
 いずれも興味深いテーマである。どの話も、いつかどこかで聴いたことのある話であったが、最後のシカの影響については詳しくは知らなかった。シカは積雪に弱いので温暖化により積雪地帯が縮小し、それによってシカの分布が広がり、その地域の樹林帯の下層植生に影響を与え、それに依存する昆虫が絶滅の危機に瀕している、というストーリーである。
 5題のいずれも、気候変動が生物相に直接的・間接的に様々な影響を与えているという話で、何とかする必要があると思われるのだが、だからどうしたら良いのだ、というところにまでは話が及んでおらず、もう少し踏み込んでも良いのではないかと思った。とは言え、現状をあらためて認識するという点では有意義なシンポジウムではなかったかと思う。
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 シンポジウムのあとは、再び山形大学農学部に会場を移しての小集会。「季節適応談話会」に出席した。ここでは3題の講演。
・遠藤千尋「ケラの翅型二型の地理的変異」
・中尾史郎「温度反応と光周反応からみた植食性アザミウマの越冬と翅型」
・後藤三千代「庄内地方における昆虫の休眠と耐寒性」
 どの演者も話し方にメリハリがなく、どこがポイントなのかわかりづらいのは残念だった。だが、ケラの話は面白いと感じられた。翅型の違いと越冬態が関連しており、2つの異なる生活環をもつ生活史型が存在するのではないか、というような内容だったが、よくよく考えてみると、いまぼくが興味を持っているオオハサミムシの生活史との共通性が見えてきた。生活史のパターンと翅型の問題の両方が同じようにケラの生活史に似ている。オオハサミムシの生活史を解明するにあたり、参考になりそうだと思ったので、演者である遠藤さんには論文の別刷を送ってもらえるようにお願いした。
 小集会のあとは、小集会のメンバーでの二次会が企画されていたが、それには参加せず、同僚らと一緒に別の店に入ったら、大学の先輩のTさんが既にその店におり、一緒に食事をした(飲む人は飲んだ)。その場で、今日のぼくの講演についてコメントをいただいた。自分では大した内容ではないと思っていたが、他の人が無視してしまうようなことをやったのだからオリジナリティはあるんじゃないの、ということで、ちょっとホッとした。ここでは軽く無理無く食事をしてホテルに戻った。

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2010年8月16日 (月)

盛岡・繋温泉にて(2010年8月16日)

 盛岡・繋温泉にやってきた。妻や息子たちはほぼ毎年盛岡に帰省しているが、ぼくは7年と5か月ぶりの盛岡訪問である。今年の盛岡は暑いらしいが、それでも明らかに津よりは涼しい。
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 旅館の前の御所湖は茶色の泥で濁っている。ちょっと前の大雨が山の土を流したのだろう。岩手山には少し雲がかかっていたが、山頂を望む事ができた。
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 旅館で一休みしたあと、妻の兄の車で近くの「盛岡手づくり村」へ。アブラゼミ、ツクツクボウシに加え、チッチゼミの鳴き声も聞こえた。村内にはナナカマドがたくさんあり、多くの木が果実をつけていた。まだ色づいてはいなかったが。カメムシがいないかと思って探すと、何頭か見つけることができた。クサギカメムシの幼虫やセアカツノカメムシと思われる幼虫(写真)など。
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 旅館の宿には露天風呂があったが、「虻に注意」との張り紙があったとおり、何頭もアブが寄って来た。
 旅館の部屋も食事も満足。今晩は、妻の両親や兄らと一緒。上等な宿に泊まるのは、今晩だけ。明日からは我が家族だけで盛岡駅前の安ホテルに宿泊である。

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