昆虫

2009年12月28日 (月)

河野和男著『カブトムシと進化論 博物学の復権』

河野和男著『カブトムシと進化論 博物学の復権』
新思索社
ISBN978-4-7835-0231-9
2,500円+税
2004年11月30日発行
346 pp.

目次
カラープレート
はじめに
1 カブトムシとダーウィン
2 リンネまでの静的自然観
3 流転のラマルク理論
4 至高の銀メダリスト:ウォレス
5 進化論は進化しないのか?—ネオダーウィニズムと「バベルの図書館」
6 主体性の進化論:今西錦司
7 分子進化の中立説:木村資生
8 進化と進歩、偶然と必然—人間の測り間違い
9 ゆっくリズム対断続平衡—グールドの異議申し立て
10 大進化と小進化—前途有望な怪物、ゴールドシュミットの挑戦
11 進化は末広がり、それとも先細り?
12 たくさんある種の定義—奇人ホールデンとマイヤーの種概念
13 地理的隔離と生殖隔離、種分化の仕組み—ドブジャンスキーの見識
14 種の実在性
15 高位分類群の定義:分岐分類と進化分類
16 高位分類群の実在性:系統発生制約
17 似ているということ—相同と相似そして並行進化
18 生物多様性:熱帯と温帯
19 地球上に生物は何種類いるのか?
20 進化にセカンドチャンスはあるのか?—目下、六回目の大絶滅中
21 甲虫類の性的異型—カブトムシの角はどこから来たのか?
22 カブトムシの角はなぜ長い?
あとがきに代えた最終章—人はなぜ虫を集め、進化を考え、それを語るのか?
文献
著者紹介

 『自殺する種子』に続いて河野(かわの)和男氏の著書である。『自殺する種子』は河野氏の「表芸」である育種を中心に語られた著書だったが、その中にもカブトムシやクワガタムシが登場していた。本書は河野氏の「裏芸」であるカブトムシとクワガタムシを通して進化について河野氏の考えが語られた著書である。この本も5年も前に出版されたものだから、読んだのがいささか遅すぎたという感がある。
 育種家である河野氏は、頭の中で考えたことだけでなく、実際のモノを見ているところが強みだと思う。カブトムシやクワガタムシの実物を手にして、見て、触って、肌で感じているところは、頭の中だけで考えている人と違うところだと思う。その河野氏が、種の壁を越えることをうまく説明できないネオダーウィニズムに違和感を持ち、グールドの断続平衡説に惹かれる様子がよくわかる。
カブトムシの角とクワガタムシの大顎の形態は、いくつもの系統で独立に進化したと考えなければ理解が難しく、それをネオダーウィニズムだけで説明するのは難しい。グールドの断続平衡説はこれをうまく説明できる。ある系統群にはある発生のパターンが備わっており、ある種では表現型として現れるが、ある種では現れないと考えると納得し易い説明ができる。
 河野氏の進化に対する考え方は、『自殺する種子』の中にも書かれていたが、進化は先細りにあるのではないか、というものだ。同所的に近縁な種が何種も棲息するのは、あるときに爆発的に種分化が起こり、今残っているのは絶滅を免れた種であると考えた方が、徐々に種分化したと考えるより説得力がある。
 構造主義生物学という言葉を表に出してはいないが、河野氏の考え方は構造主義生物学的だ。ネオダーウィニズムだけで大進化を説明しきれないわけだから、生物進化に構造主義的な考え方は不可欠だと思われる。
 本書には、河野氏を惹き付けたカブトムシとクワガタムシを通して、進化に対する河野氏の考え方が語られている。いわゆる虫屋には必読の書だと思うし、もちろん虫屋でなくても、生物進化に興味がある人なら読んでみたら良いと思う。細かい目で見れば突っ込みどころはあるだろうが、説得力のある本だと思う。また、頭の中で考えるだけでなく、実際のモノを見ることの重要性を教えてくれているように思う。

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2009年12月13日 (日)

ヒョウモンチョウ類の衰亡について考えてみた

 一昨日の夜の三重昆虫談話会の有志によるサロンでヒョウモンチョウ類のことが話題の一つになった。出席者は中西元男、中村泰、乙部宏の各氏にぼくの4名。いつもよりちょっと少なめだった。
 ぼくは三重県のことはよく知らないが、全国的な傾向としてヒョウモンチョウ類が昔に比べると大変減っており、三重県も例外ではないそうだ。種類相についてもかなり変わってきているようだ。津市の市街地の西方にある青山高原では、昔はウラギンスジヒョウモンがたくさんおり、近縁のオオウラギンスジヒョウモンは比較的少なかったそうだ。ところが、最近ではオオウラギンスジヒョウモンは少ないながら見られるものの、昔たくさんいたウラギンスジヒョウモンは全く見られなくなってしまったそうだ。日本の大型のヒョウモンチョウ類の幼虫はすべて幼虫がスミレ類の葉を餌としているため、特定の種が急激に減少する理由はあまり思いつかない。細かく見れば、それぞれのヒョウモンチョウ類の食性は実際には狭く、それぞれの種が特定のスミレの種に依存していて、スミレ類の種構成が変わったという理由も考えられないわけではない。
 熱帯性のヒョウモンチョウ類であるツマグロヒョウモンが1990年代以降に急激に分布を拡大し、三重県の平野部で最優占するヒョウモンチョウ類になっていることは確かだが、これも一頃と比べると個体数増加の勢いは落ち、少なくなりつつあるようにも思える。
 三重県の話ではないが、オオウラギンヒョウモンについても話題になった。ぼくは福岡県久留米市に住んでいた1990年代半ばに、長崎県の大野原という自衛隊の演習地で採集したことがある。オオウラギンヒョウモンは大型で、特に雌では日本最大の大きさを誇るヒョウモンチョウ類だ。オオウラギンヒョウモンの雌を採集したときの喜びは格別のものがある。
 オオウラギンヒョウモンは、かつて東北地方から九州まで、全国的にかなり広く分布していたが、今でも確実に棲息しているのは、山口県の秋吉台や九州の数か所の自衛隊の演習地などの草原だ。この種は大型種である上に、幼虫がスミレ類の中でも、マスミレとその近縁種しか食べないので(タチツボスミレなどの仲間は食べない)、マスミレの仲間が多量に生えるような場所に分布が限られるのは納得できる話だ。
 このオオウラギンヒョウモンは三重県近辺では、1980年前後まで奈良の若草山や京都府南部の木津川の河川敷などで見ることができた(とのことだ)。ところが、若草山や木津川河川敷では1980年前後にほぼ同時に姿を消してしまった。河川敷は色々手が入れられるので、環境が変わって棲息できなくなったということは十分に考えられるが、手入れの仕方が変わってない若草山での消滅を環境の変化で説明するのは難しい。
 話が少し変わるが、進化は末広がりではなく先細りになっている、という考え方がある。河野和男氏などの主張だ。自然選択による進化は、不適になったものをふるい落とすだけで、新しい種を作ることはない、ということである。この考え方が正しいかどうかわからないが、自然選択だけで新しい種ができる可能性は極めて低いという考え方には賛同できる。
 そのように考えると、種(あるいは個体群)には寿命がある、と考えることができる。
 若草山と木津川河川敷は地理的にもそれほど遠くなく、かつては同一の個体群だった可能性が高いように思える。環境が変わったと考えられる木津川河川敷と環境が変わっていないと考えられる若草山のオオウラギンヒョウモンは元々同一の個体群であり、同時に「滅亡のスイッチ」が入ったと考えると、同時に消滅してしまった一応の理由付けにはなる。「滅亡のスイッチ」のメカニズムが何かはわからないが、その個体群が持つ遺伝的な劣化に関わる性質なども関係しているだろう。
 ・・・・・などと色々考えてみた。
 高橋敬一氏が言うところの「郷愁」なのかも知れないが、今までそこに居たものが居なくなると寂しいと感じるし、岸由二氏が「生物多様性とは生き物のにぎわいである」と言ったように、多様性が小さくなるのも寂しい。種が消滅してしまうのは、人間の業によるものでなければ、それはそれで仕方が無いと思うが、ヒョウモンチョウ類(だけでなく、その他の全ての生き物も)も長く生き続けてほしいものだと思う。

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2009年12月 6日 (日)

三重昆虫談話会2009年度例会

 三重昆虫談話会2009年度例会に出席するため、四日市の郊外にある三重県環境学習情報センターに出かけた。毎度のことながら、車で行かなければいけない不便な場所だと思う。
 去年の例会は、去年の7月に亡くなった市橋甫さんを偲ぶ会になったが、今年は例年どおりの講演2題が予定されていた。そのうち一つは、自分も現場に僅かながら関わっていたので、どんな講演になるのか楽しみだった。
 会長の挨拶や会務報告などのあと、以下の2題の講演があった。
1) 三重県にフェモラータオオモモブトハムシSagra femorata (Drury)が定着か(秋田勝己・乙部 宏・中西元男)
2) ダイコクコガネCopris (Copris) ochus (Motschulsky)(稲垣政志)

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 まず最初の講演。演者は秋田勝己氏。今年の7月、松阪市在住の蝶屋の中西元男氏により、フェモラータオオモモブトハムシが発見された。フェモラータオオモモブトハムシは元々日本には分布していない種だが、東南アジア一帯には広く分布していて、現地では比較的普通に見られる種だ。ハムシの仲間としては非常に大型で、金属光沢があり美しい。中西氏の情報を元に、主に秋田・乙部の両氏による精力的な調査が行われ、松阪市のある地域においてフェモラータオオモモブトハムシが定着していることが確実であるという状況証拠が得られた。情報を辿って行くと、発見地近傍にかつて存在していたペットショップで数年前にフェモラータオオモモブトハムシが売られていたということだ。ということで、人為的に移入された個体が何らかの理由により逸脱し、定着してしまったということになる。熱帯地域にしか分布していない種が、冬にはそれなりに寒くなる三重県に定着してしまったとはかなり意外性があると思う。外来種というと何かと目の敵にされるが、このような美麗種だとついつい許してしまいたくなる。主な寄主植物はクズで、1年性の植物には寄生できないようなので、害虫として問題になることはないだろうと思う。

これはぼくが今年8月8日に撮影したフェモラータオオモモブトハムシの写真。情報を提供いただいた乙部氏には感謝。やはり、美しい虫を撮る(採る)と嬉しい。
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 稲垣氏の講演は野外におけるダイコクコガネの特に繁殖を中心とした生態調査の紹介。ダイコクコガネは様々な理由により、全国的に個体数が減少しているが、今でも比較的たくさん棲息している大分県まで足を運んで調査された。ダイコクコガネの餌である牛糞をあらかじめ日数を変えて野外に設置し、ダイコクコガネによって土の中に掘られたトンネルの中の様子を土を掘り返して観察しようという相当手間がかかる調査だ。ダイコクコガネの繁殖生態についてはある程度明らかになっていると思うが、おそらく実験的な条件での観察に基づいて得られた知見によるもので、このような実際の野外で観察しようという試みは、これまでほとんど成功していなかったと思う。土の中のトンネルの中で発見されたダイコクコガネの幼虫の餌になる糞球やその糞球を作っている成虫の様子や、ダイコクコガネに労働寄生するツヤマグソコガネの野外生態写真が紹介された。ツヤマグソコガネは動きが素早く、野外で写真を撮るのは大変難しいとのことだ。
 ツヤマグソコガネの生態の話を聞いて思い出したのが鳥飼否宇の小説『昆虫探偵~シロコパκ氏の華麗なる推理』。クマバチのシロコパκという探偵が活躍して、昆虫の世界に起こった様々な事件の謎を解いていくのだが、この中でツヤマグソコガネの生態が紹介されていた。この小説は、かなり詳しい昆虫の生態に関する知識に基づいて書かれているので、虫屋が読むとかなり面白いのではないかと思う。この小説を紹介してくれたT氏には感謝!

 講演が終わった後は、全員が順番に自己紹介。昆虫を趣味とする人の高齢化がいわれて久しいが、小中学生が3名もいてビックリ。本当に若い虫屋は絶滅危惧種だと言われているので、我々年長者が大切に育てていかなければいけないと思う。

 例会の後は懇親会も予定されていたが、帰りが遅くなるとキツいので失礼して帰ってきた。

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2009年12月 2日 (水)

冷えた朝のムラサキシジミ

 今日は週に一度の調査の日だ。幸いと晴れていて風は無く、調査をするには気持ちの良い日になった。
 最初の調査場所に着いたのはちょうど9時頃だった。日陰になっているところには、まだ降りた霜が残っていた。朝は冷えたのだろう。持参した温度計で地表近くの温度を測ると約4℃。それでも風が無いので、陽が当たる場所に出れば暖かさを感じる。
 一通りの調査を終えた後、ふとどこからかムラサキシジミが飛んできて、畑のゴボウの葉の上に止まって翅を広げた。ムラサキシジミは成虫で越冬するので、この時期に見られても何の不思議も無いし、特に珍しい種類でもないのだが、目の前に姿を見せてくれると心が和む。
 日向に置いておいた温度計は14℃ぐらいになっていた。
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2009年11月23日 (月)

日高敏隆先生の訃報

 京都大学名誉教授の日高敏隆先生の訃報が届いた。11月14日に亡くなられていたそうである。10月に三重大学で開催された日本昆虫学会第69回大会にもおいでになると聞いていたのだが、実際にはおいでにならなかったので、ご病気だろうと想像はしていた。
 ぼくは子供の頃から虫が好きで、遊びと言えば「虫採り」だった。そんな子供が中学生の頃だったか、日高先生が書かれた「昆虫という世界」(朝日新聞社)という本を読み、本当の昆虫の面白さを知り、大学でも昆虫を学びたいと考えるようになった。
 もっとも、日高先生がおられた京都大学理学部に入学できるだけの学力がなく、農学部に進学したが、やはり日高先生のことは意識していた。
 ぼくは日高先生の弟子ではないので、直接お話しする機会は少なかったが、石垣島で勤務していたとき、日高先生が石垣島に来られ、先生を含めて4人という少人数でテーブルを囲んでお話する機会がたまたまあった。その頃日高先生は『動物と人間の世界認識—イリュージョンなしに世界は見えない 』(筑摩書房)という本を書かれて、「絶対的なものは存在しないのだ」ということを主張されていたようなので、そのときの話もその本に書かれたことが話題の中心になった。イリュージョンという言葉も、そのとき初めて意識した。
 日高先生はダンディで、先生の周りにはいつもすてきな女性がいたような気がする。いつも若々しいと思っていたが、病魔には勝てなかったということだ。ご冥福をお祈りしたい。合掌。

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2009年11月20日 (金)

第19回天敵利用研究会−千葉大会−2日目

 今日は一般講演が14題。お昼ちょっと過ぎまでだ。
 今日の講演は、今年2月に生物農薬として登録されたスワルスキーカブリダニに関する発表が目白押しだった。普段は露地野菜しか相手にしていないので、スワルスキーカブリダニについては状況を把握していなかったので、それなりに勉強になった。
 終了後、同僚と一緒にJR千葉駅に向かう途中のチェーン店の饂飩屋に入った。チェーン店ではあるが、それなりに美味しいと思う。「けんちんうどんセット」780円也。
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 千葉駅からはJR総武快速線に乗り、錦糸町で緩行線に乗り換え、秋葉原へ。昨日の夜、NHKの「ブラタモリ」で秋葉原が紹介されていたので、また行きたくなった。紹介されていた公園は確かに存在し、橋の名残りが見つかった。「佐久間橋」と書かれていた。
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 秋葉原駅で電車に乗ろうとしたら、見慣れない色の電車が走ってきた。確認するとE231系なので、単なる色違いの山手線の電車だった。「山手線命名100周年」と書かれていた。
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 その後、東京駅に出て家族への土産を買い、横浜石川町の某所に向かった。某所でちょっと買い物をし、石川町から新横浜駅に出て新幹線に乗った。千葉→秋葉原、秋葉原→石川町、石川町(横浜市内)→名古屋(市内)と3つに分けて乗車券を買ったが、あとで計算してみたら、千葉→名古屋(市内)と乗車券を買うのと、ピッタリ同じ値段になった。さらに細かく見てみたら、東京から名古屋に行くのに、東京→石川町、石川町(横浜市内)→名古屋(市内)と移動する方が安くなることがわかった。意外な発見だ。川崎駅も横浜市内の扱いなので、東京→川崎、川崎(横浜市内)→名古屋(市内)と移動すればさらに安くなる。
 たまたま新横浜で乗った「のぞみ」は、東京を16:30に出発した博多行きだった。名古屋到着は18:13。名古屋18:30の「快速みえ」に乗るのにちょうど良い時間だったので、名古屋駅の地下街「エスカ」で担々麺を食べるのを諦め、そのまま「快速みえ」に乗った。

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2009年11月19日 (木)

第19回天敵利用研究会−千葉大会−1日目

 昨日、東京都内で開催された某シンポジウムに参加し、南千住の安ビジネスホテルに泊まり、今朝、京成線の千住大橋駅まで15分ほど歩き、京成線の電車を3本乗り継いで京成千葉中央駅直結の会場にやってきた。千住大橋は隅田川を渡る橋だ。松尾芭蕉の奥の細道への旅への出発点はここらしい。隅田川はコンクリート3面張りのきたない川だとしか思えなかったが、芭蕉の時代はもっときれいだたのだろうと思う。20091119blog2
 昼食は駅近くの「タンメン胖(ばん)」という店で食べた。ちょっと時間が早かったので、誰も客がいなかったが、ぼくが入った後からは、続々と人が入ってきた。食べたのは「タンメンセット」。タンメンと餃子と小さい御飯で800円。タンメン単品なら650円。野菜たっぷりで美味しかった。出張に出ると、野菜が不足するので、たっぷりの野菜は嬉しい。この店のメニューに「ラーメン」というのもあるのだが、入ってくる客のほとんどが「タンメン」(セットを含む)を注文し、ごく一部の人が「みそタンメン」を注文して、「ラーメン」を注文する人は誰一人としていなかった。
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 研究会は午後からの開始。最初は一般講演が8題。そのあとは「露地作物における天敵の保護利用とそのための植生管理」という題目のシンポジウムだった。天敵利用研究会は、これまでに地元開催だった一昨年に参加したことがあるだけで、今回は2回目の参加だ。今回参加したのは、このシンポジウムがあるからだと言って良い。
 シンポジウムの1題目は平井一男さんによる「海外における植生管理と天敵保護の事例−環境直接支払いから機能的生物多様性の活用までー」、2題目以降は具体的な事例紹介で、國友義博氏と赤池一彦氏による「山梨県の有機栽培圃場における間作・混作とその普及」、豊嶋悟郎氏による「長野県における複合交信撹乱剤を用いたキャベツほ場の土着天敵保護とその問題点」、豊島真吾氏らによる「果樹栽培における植生管理と土着天敵の保護」。平井氏の話題提供は、ヨーロッパ各地における取り組みの紹介で、広大なコムギ畑の周辺の植生を管理したり、ビートルバンクを設置したりすることによって生物多様性を維持し、それに対して、農家に対する直接支払いが行われている国があることなどが紹介された。後の3題は、日本国内における、畑と果樹園の園芸作物における事例の紹介だったわけだが、平井氏によって紹介された、普通作物における事例とは性格的にかなり異なっており、ヨーロッパの事例をそのまま日本に当てはめるわけにはいかないと感じた。ヨーロッパにおける事例を日本にあてはめるなら、水田作であろうと感じたので、その点について総合討論のときに平井氏に質問しようと思ったのだが、討論は後の3題の方に集中し、平井氏に質問するのが場違いな雰囲気に思われたので、質問するのを躊躇し、そのまま総合討論は終わってしまった。
 シンポジウムが終了したあと、平井氏に直接質問したところ、平井氏が言いたかったのは、ぼくが質問しようと思っていたまさにそのことであり、平井氏も総合討論の雰囲気の中で発言できなかったとおっしゃっていた。日本で生物多様性を考えた農業を行うとすれば、やはり水田作を中心に据えなければ話にならないと思う。
 そのあとは、情報交換会という名の懇親会。料理は美味しかったと思うが、開始後30分でほとんどの食べ物が無くなってしまい、量的に不満が残った。ちょっと高級感のあるホテルが会場だったので、会費(安かったわけではない)を考えるとそんなものかも知れない。

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2009年11月13日 (金)

まだマツムシが鳴いていた!

 今晩、三重昆虫談話会のサロンに出かけた。津駅西口からほど近いいつものホテルのレストランに行くと「本日貸切」の張り紙。ここでできなければ、コメダ珈琲店津県文前店で集まることになっていたので、そちらに向かう。雨もほとんど上がっていたので、自転車で出かけたわけだが、途中起伏の多い道を1キロ以上ある場所に行くのは疲れた。しかし、思いがけぬことに、途中でマツムシの鳴き声が聞こえた。我が家の近所では、とうの昔に聞かれなくなっていたのに。
 サロンが終わってからは、三重県総合文化センターの前を通って帰宅したが、こちらでもマツムシの鳴き声が聞こえた。
 そろそろ「秋の夜長」という言葉を使っても良い季節になってきたと思うが、この前、「秋の夜長を鳴き通す、ああ面白い虫の声」というのはウソくさいと書いたのを多少は訂正しなければいけないかな、と思った。が、そのほかの虫の声を確認することはできなかった。マツムシは秋遅くまで鳴く虫なのだろうか?

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2009年11月 3日 (火)

日本のアカヘリカメムシは誤同定かも知れない

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【写真は波照間島で撮影したコフウセンカズラ(ムクロジ科)の上のアカヘリカメムシ(ヒメヘリカメムシ科)】

 最近、下記の文献(河野・高橋,2006)を読んだと思われる外国人研究者二人から立て続けに電子メールが届いた。一人はアカヘリカメムシとフチベニヘリカメムシの標本が見たいと言ってきている。もう一人はアカヘリカメムシのLeptocoris augurLeptocoris vicinusの誤同定ではないかと言っている。台湾ではLeptocoris augurはもっと明るいオレンジ色のような色でタイワンモクゲンジに寄生し、Leptocoris vicinusはコフウセンカズラに寄生しているという。ここに示した写真はコフウセンカズラに寄生していたもの。八重山諸島でみられるアカヘリカメムシはコフウセンカズラとアカギモドキに寄生しているのを確認している。タイ国に出張したとき、アカヘリカメムシだと思われるものを見たが、それは赤色というよりはオレンジ色と言える色だったが、単なる色彩変異だと思っていた。ぼくは分類学に関しては素人なので、事の真偽はわからない。今後の研究の進展の経過を見守りたい。

文献
・河野勝行・高橋敬一 (2006) 八重山諸島におけるアカヘリカメムシとフチベニヘリカメムシ(カメムシ目:ヒメヘリカメムシ科)の生態と分布.Rostria (52): 72-74.(英文要約付き)

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2009年11月 1日 (日)

養老孟司・河野和男著『虫のフリ見て我がフリ直せ』

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養老孟司・河野和男著『虫のフリ見て我がフリ直せ』
明石書店
ISBN978-4-7503-3045-7
1,800円+税
2009年9月25日発行
228 pp.

目次
第I部 虫の目で世界を眺めて
 人はなせ虫を集めるのか
 「種」や「属」は存在するのか
 進化論者たち
 発生遺伝子と遺伝率
 種の分布と分化の関係性
  コラム
   個体発生と系統発生
    −クワガタムシの大顎のパターンによる属の記述(河野)
   高位分類群とホックス遺伝子(河野)
   内部選択説(養老)
   バベルの図書館(河野)
   進化は末広がりではなく先細り(河野)
   ネオダーウィニズム(河野)
   工業暗化(河野)
第II部 生き物たちのつどう社会
 人為的な生態系
 文化と地形
 「お国のため」と「愛国心」
 日本人と森
 世界と日本−大気、海洋資源、森林
 進化と進歩
 生物は遺伝子の「乗り物」なのか?
 生物学は情報学だ
  コラム
   愛国心か「お国のため」か(養老)
   ダーウィンの図(河野)
   似ているということの異端児−並行進化(河野)
対談のあとで(河野)

 解剖学者の養老孟司氏と熱帯作物であるキャッサバの育種家の河野(かわの)和男氏との対談である。両者とも、昆虫の収集家でありアマチュアの昆虫研究者としてよく知られている。
 「対談のあとで」で河野氏が「この対談は好みと思考パターンが初めから一致している仲良し子供会的な話し合いではなかったのは当然として、またもう一方の極端である思い込みと見解の表示様式に初めから全く共通点のないすれ違いの意見交換でももちろんなく、知的緊張感がバランスよく保たれた議論の時間だったと思う。」と書いているように、これまでの養老氏を交えた虫屋どうしの対談(例えば、「虫屋」である池田清彦氏や奥本大三郎氏などとの)とはひと味もふた味も違うものだったように思えた。これまでの養老氏による虫屋との対談は、学問的なものというよりも、放談に近いものだったが、本書では、生物進化という現象に対する考え方についてかなり真面目に議論していると感じられた。
 ぼくは学生時代に出現したネオダーウィニズムの洗礼を受けないわけにいかなかったが、その後ずっと生物を見てきていると、ネオダーウィニズムだけでは大進化を説明できないということが徐々にわかっていた。育種家として仕事をしてきた河野氏は、生物進化は先細りである、という考え方を肌で感じてきているようだが、この対談を読んでいると、確かにそのように思えてくる。
 原理主義的なネオダーウィニストが読めば、滅茶苦茶けなす対象になるかも知れないが、目の敵にせずに読んでみると良いと思う。
 面白い本だったが、ちょっと残念なのは、写真の印刷が悪いこと。本文と同じ紙にモノクロで印刷されているので仕方がないのかも知れないが、もうちょっと鮮明な写真を載せて欲しかった、というのが本音だ。できればクワガタムシの写真だけでも、アート紙にカラーで印刷して欲しかった。
 それともう一つ。『虫のフリ見て我がフリ直せ』という表題は編集者が付けたものだろうと思うが、本書での対談の内容から全くひねりだせないような表題だと思う。だからと言って、どんな表題が良いかと言われても困るが、もう少し内容に即した表題の方が親切だと思う。『虫のフリ見て我がフリ直せ』の方が本がよく売れるかも知れないが。

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