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2012年6月24日 (日)

柴谷篤弘著『構造主義生物学』

柴谷篤弘著『構造主義生物学』

東京大学出版会
ISBN4-13-063318-X
2,800円+税
1999年10月20日発行
237+20 pp.

目次
序章−もうひとつの生物学総合理論はありうるか
 科学戦争をめぐって/現代生物学「脱構築」のとき
第1章−「構造」への招待 タマゴが先かニワトリが先か
 循環/「構造」という「法則」あるいは「拘束」/拘束あるいは法則の恣意性/言語における恣意性/生物学における「構造」着想の由来/物理法則と生物の恣意性
第2章−遺伝子還元論の限界
 遺伝子万能のわな−遺伝子本質論と社会的構築/職業的専門家と「しろうと」のちがい/細胞とDNA/ヒト・クローンの「恐怖」/遺伝性と生得性の拘束 
第3章−生物学での「情報」概念の矛盾
 細胞にたいする外来性作用因の働き方/同族の遺伝子やタンパク質/連結子と受容子の「対」概念/「構造」か「情報」か/細胞内部で「情報」がもつ矛盾−分子介添え役の登場/「遺伝子の支配」とはなにか/「遺伝情報」とはなにか/予期されたものだけが記号としての遺伝指令になれる
第4章−遺伝子機能の多重性
 タンパク質分子などの機能は一通りとは限らない/遺伝子の徴募あるいは共用/多細胞生物での遺伝子の働き方の全体像−環境と遺伝子/同じ発生遺伝子がつくりだすかたちの多様さ/ちがった生物での発生遺伝子の働き
第5章−生物進化について
 ダーウィン的進化−生物多様性の説明原理/ダーウィン理論と生物模型/ダーウィンの進化論とラマルクの進化論との関係/適応突然変異−その発見/適応突然変異−その性質/隠れ遺伝子を求めて/細胞の相互作用
第6章−生物の多様性について
 隠された同一性/「種」につくりつけの多様性/高次分類群(類位)に含まれる多様性の逆説−並行放散進化/隔離による並行放散の例/「特異化」と「先祖がえり」のはざまで
第7章−個体発生における「構造」
 キリンの頸−体の部分どうしの相互調節/形態の展開/形態の合成/発生遺伝子の組み合わせによる多数の論理回路の創造/発生の論理回路か遺伝子か、どちらが本源か
第8章−「構造」とそれによる拘束の起源
 「構造」の恣意性とその拘束/遺伝暗号系での「内部選抜」による拘束/言語と自然(生物)における恣意性−逆還元主義/発生的拘束/「共時性」の起源−「構造」は一世代以内につくられる/新しい「構造」の成立/構造創発の遺伝的契機
終章−生物学「主流」の外の諸活動
 英米流「構造主義生物学」/分子記号論、主体性と内部観測そのほか
あとがき
引用文献
索引

 昔(1990年前後)、「構造主義生物学」という考え方があるのを知り、「構造主義生物学」という文字が表題についている本を何冊か読もうとしたが、ほとんど理解不能であった。その当時ボクは、勢力を拡げつつあったネオダーウィニズムの波の中にあり、ネオダーウィニズムこそが生物進化を説明する最高のものだと思わされており、それに異を唱える考え方を理解できなかったからであると思うし、そもそも「構造主義生物学」について書かれている本に出てくる言葉が難解であった。ボクは自分が買った本をあまり処分していないのだが、池田清彦氏の『構造主義生物学とは何か』(1988)と『構造主義と進化論』(1989)の2冊については、「もう読むことはなかろう」と思って、石垣島からこちらに引っ越してくる前に、石垣市立図書館に寄贈してきてしまった。今となっては書庫にしまい込まれているか、あるいは除籍されてしまっているかも知れない。
 時を経て、生物進化に関する本をいろいろ読んでみると、ネオダーウィニズムだけでは説明できないことがたくさんあることがわかり(種レベル以下の進化についてはネオダーウィニズムで進化を理解することが可能であるが、高次分類群の進化に関してはほとんど説明できないし、そもそも原核生物から真核生物の進化、単細胞生物から多細胞生物の進化を説明できない)、構造主義生物学について、再び理解しようと努力するようになった。
 日本における構造主義生物学の先駆者は本書の著書である柴谷篤弘氏であり、池田清彦氏はその同士である。たまたま三重県立図書館に本書が所蔵されていることがわかったので、借りてきて読んだ。
 先に書いた池田清彦氏の2冊の著書は難解であったが、わざと分かり難く書いてあったか、それとも当時の池田氏が実は構造主義生物学を十分に説明する能力を持っていなかったのか、いずれかであったのかも知れない。少なくとも、第三者に理解し易く説明しようという意思がなかったことは確かだと思う。その後、池田清彦著『構造主義進化論入門』(2011)を読んで、やっと朧げながらも構造主義生物学を理解できるようになって、生物進化についてネオダーウィニズムでは説明しきれない部分を構造主義生物学的な考え方が補うことができるのではないかと思えるようになった。
 本書は池田氏の最初の2冊の本が出版された時期と『構造主義進化論入門』が出版された時期のちょうど中間時点ぐらで書かれた本である。最初からこの本を読んでいたら構造主義生物学を理解できたかどうかわからないが、構造主義生物学の考え方が丁寧に説明されており、池田氏の最初の2冊の本のようにわざと難解な言葉や言い回しが使われているわけでものないので、構造主義生物学を理解するためには適切な本になっていると思う。かなりオススメな本である。ただし、本書を読む前に池田清彦著『構造主義進化論入門』(2011)を読んでおいた方が理解が容易かも知れない。
 本書には引用文献がたくさん挙げてあり、それらも構造主義生物学を理解するために役立つのではないかと思う。

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コメント

この本は、知ってはいましたが、なんとなく難しいのではないかと思って、敬遠していました。

ちなみに、『構造主義進化論入門』(2011)の前身の『さよならダーウィニズム−構造主義進化論講義』は、図書館で何度か借りて読んでいます。池田清彦氏を知ったのもこの本でした。

とりあえず、図書館に予約を入れました。図書館に行く暇が金曜まで取れませんが。

投稿: 混沌 | 2012年6月25日 (月) 00時00分

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