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2012年6月22日 (金)

永井 愛著『ら抜きの殺意』

永井 愛著『ら抜きの殺意』

而立書房
ISBN4-88059-249-8
1,500円+税
1998年2月25日発行
150 pp.

登場人物
 海老名俊彦/伴 篤男/遠部その子/宇藤樹里/雨宮直人/日下 勉/殿村金弥/堀田八重子/堀田与平

上演記録
 テアトル・エコー第105回公演
 1997年12月5日(金)〜11日(木)
 紀伊國屋アザンシアター
スタッフ
 作・演出 永井 愛/美術 島 次郎/照明 中川隆一/衣裳 竹原典子/音響 深川定次/演出助手 保科耕一/舞台監督 小山博道/舞台監督助手 金子武男 加藤美江/方言指導 萩生田千津子/製作 明石 誠 テアトル・エコー
キャスト
 海老名俊彦 安原義人/伴 篤男 落合弘治/遠部その子 雨蘭咲木子/宇藤樹里 吉川亜紀子/雨宮直人 藤原堅一/日下 勉 後藤 敦/殿村金弥 梶 哲也/堀田八重子 牧野和子/堀田与平 熊倉一雄

 本書は戯曲である。普段は文学作品など滅多に読まないので、何でこんなものを読んだかと言えば、ボクが「ら抜き言葉」に興味があるからにほかならない。しかし、なぜこんな作品の存在を知り得たかと言えば、なぜか生物学の本(柴谷篤弘著『構造主義生物学』)に参考文献としてリストに上がっていたからである。三重県立図書館の蔵書検索をしたら、書庫に所蔵されていることがわかったので、さっそく書庫から出してもらって借りてきて読んだ。
 この戯曲の中では、ら抜き言葉に我慢できないアルバイト社員の海老名俊彦と、ら抜き言葉を使う正社員の伴 篤男の間の対立が描かれている。それぞれの弱みを相手に知られてしまい、海老名俊彦がら抜き言葉を使わざるをえなくなり、伴 篤男がら抜き言葉の使用を禁止されるという状況になり、お互いに険悪な関係になる。
 別の場所では女らしい言葉にまつわるやりとりや、田舎の方言をめぐるやりとりもあり、日本語表現の豊かさを考えさせられる作品になっている。
 作者はら抜き言葉に我慢ができないタイプの人間とのことであるが、最後は方言もおおらかに認めましょう、というような締めくくりになっており、好感が持てる作品であると感じた。
 途中で思わず吹き出してしまうことが何度もあり、娯楽作品としてももちろん楽しめる。オススメ。

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コメント

社内でも、社外の人も参加する大勢の会議資料をら抜きで書く若い人が増えました。オヤジとしては気になるのですが、議論の本筋と違うところでクレームをつけるのも憚られるのでほったらかしにしています。┐(´д`)┌ヤレヤレ

投稿: Harpalini | 2012年6月24日 (日) 06時07分

Halpaliniさん、こんにちは。
 「ら抜き言葉」は生態学的にみた場合に有利な形質をたくさん持っていますので、これからも集団の中で広がることは疑いないと思います。「ら抜き言葉」が嫌いな人も諦めざるをえないのではないかと思います。
 それよりボクが気になるのは、飲食店などで食べ物が出されたときに「こちら○○になります」と言われることがそうです。「既に○○になっているではないですか!」と突っ込みを入れたくなります。また、買い物してお金を出したときに「○○円からお預かりします」と言われると、その「から」も気になります。
 twitterではちょっと前に書いたのですが、先日子供と一緒に某飲食店に行った時に、先に店に入っていった中学生の息子に向かって店員が「おタバコはお吸いになりますか?」と言っていたので、思わずボクは「子供に向かってタバコを吸うか?はないでしょ!(内心、無礼ではないか!と思って)」と反射的に言ってしまいました。これは言葉の問題ではありませんが、マニュアルどおりにしか動けない店員も情けないものだと思った次第です。

投稿: Ohrwurm | 2012年6月24日 (日) 17時10分

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