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2012年6月13日 (水)

池田清彦・養老孟司著『ほんとうの復興』

池田清彦・養老孟司著『ほんとうの復興』

新潮社
ISBN978-4-810-423108-9
1,000円+税
2011年6月25日発行
170 pp.

目次
I 自然とわれわれ(養老孟司)
 自然の大災害にしばしば出会う分か/目の前にあるのは「解答」である/根本はエネルギー依存/問題の「政治化」が安全性への軽視を生む/戦後日本の自然破壊の総決算
II 大地震・大津波・原発事故から見えたこと(池田清彦×養老孟司)
一 天災と日本人
 震災をきっかけに生き方を考える/「津波てんでんこ」の言い伝え/生き残りの心理/「一律」の陥穽/効率の良さとセキュリティ/首都東京が震災に見舞われたら/疎開先をもつ/都会と田舎/日本の再構築/自然に組み込まれている「攪乱」/ローカリティとグローバリゼーション/関東大震災と軍国主義化
二 原発事故という人災を引き起こしたもの
 発電所に電気が通らない皮肉/なぜ無責任な体制になるのか/安全対策を阻害したもの/現場と司令側の乖離/本気の度合い/高レベル放射性廃棄物の規制期間は百万年!?/原発事故の歴史と、“事故隠し”の歴史/福島第一原発周辺の土地は今後どうなるのか
三 大震災後の世界
 原発の効率/原発問題と大学入試/エネルギーと現代社会/新エネルギーの可能性と考え方/電力供給を分散型に/エネルギー依存の構造はどこまで変わるか/事故の検証はどうなるか/「居心地」の再発見/将来を考える仕組み
III エネルギーが将来を決める(池田清彦)
 「原発は最も安全」という主張/原発停止に向かう合理的な選択/原発による利益と損失/ネルギー利用の短期・中期・長期的な戦略を/風力発電は日本には向かない/補助金なしでは成り立たないのが現状の太陽光発電/日本の自然条件にフィットしているのは地熱発電だが……/小水力発電のメリットとデメリット/日本で唯一有力なバイオエネルギーは藻類/海洋発電の可能性と、それら自然エネルギーの限界性/石炭は自前のエネルギー源となるか/日本近海は世界有数のメタンハイドレート埋蔵域/未来は新エネルギー開発がどうなるかにかかっている

 『ほんとうの環境問題』(2008)『正義で地球は救えない』(2008)に続く池田清彦氏と養老孟司氏の対談本である。東日本大震災が起こって急遽企画されたのではないかと推察される。出版後すぐに読もうと思っていたが、津市津図書館にリクエストをするのを忘れていて、最近たまたま三重県立図書館で発見したので借りてきた。
 大震災が起こったあとでも、池田氏も養老氏も、人間の身の丈に合った暮らしぶりをするのが望ましいという考え方であると思われ、震災以前の著書で語られてたのとは基本的なスタンスはほとんど変わっていないように思われた。
 池田氏は脱原発が望ましいが脱原発原理主義は望ましくないと考えており、「III エネルギーが将来を決める」では原子力や石油以外のエネルギーについて考察している。ここに書かれていることはどこかで読んだことがあるので、『正義で地球は救えない』あたりに書かれていたのかも知れない。そうだとすれば、震災以前に様々なエネルギーについて考察していたということで先見性があると思う。
 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の問題は、まだまだ片付きそうにない問題であるが、本書には、復興に際して何をしたらいいのかが自然を自然として捉えて様々な考え方が書かれており、役に立ちそうなことも多く書かれているので一読の価値はあると思う。

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