池田清彦著『虫の目で人の世を見る』
池田清彦著『虫の目で人の世を見る 構造主義生物学外伝』
平凡社新書 022
ISBN4-582-85022-7
720円+税
1999年11月17日発行
262 pp.
目次
はじめに
1 ネキダリス狂時代
オオクワガタ今昔/ネキダリス狂時代/幼虫を飼う?/クックホンのフタオチョウ/ベトナム、ハゲ山紀行/珍蝶・クラシプス/ゴキブリ/はじめてのカラスアゲハ/高尾の虫たち/丹沢のギフチョウ/春の虫採り、冬の虫採り/蝶吹雪
2 滅びないホソオチョウ
里山の自然紀行−多摩丘陵に残る三十年前の風景/笛吹川−土手が見守る人と蝶/ベトナム・、虫紀行
3 ゾウとミズスマシ
生きている機械/カメキリ目への変身/オーストラリア・クワガタ余談/駄々こね/足立区梅島、一九五〇年代/虫の目 人の目(中身と型/大学改革と責任/クワガタの話/ゾウとミズスマシ/メジロ捕り/クローン人間/台湾とシイの花/パソコン通信と「世界3」/墓の意味/ハノイの子供たち/セミの声/ヨコヤマヒゲナガカミキリ/毎日酒を!/翅のない蛾/猫との交際/「クローン人間」ふたたび/オリンピックの効用/春蘭/「主婦の脳」/ギフチョウ/種ありバナナ/大学審議会VS珍品カミキリ/寿命と多様性/オカルトの時代)
4 サイボーグ・オリンピック
ぼくは猫と話ができる!/サイボーグ・オリンピック/クローン羊が開く<欲望>/ウィルスというメタファー/生命を流れる時間
5 カッパ「超」進化論
カッパ「超」進化論
あとがき
初出一覧
構造主義生物学者・池田清彦氏によるエッセイ集で、1994年から1999年に雑誌等に掲載されたものが再録されたものである。この本は三重県立図書館で借りてきたが、書庫にしまい込まれていたものである。
池田氏はあちこちで同じネタを使っているので、一見一度読んだことがあるような気がしたものもあったが、本書を読むのは初めてのように思われる。
副題として『構造主義生物学外伝』となっているが、構造主義生物学そのものについては語られておらず、ところどころに構造主義生物学的な主張が書かれているだけで、構造主義生物学そのものについては全く触れられていないと言っても良い。表題も『虫の目で人の世を見る』となっているが、『虫屋の目線で人の世を見る』の方が当たっていると思う。
虫採り紀行もあれば世相を見たものもあり、気楽に読める本であった。虫採りを扱った部分では、虫採りにおける虫屋の気持ちが非常によく表現されており、基本的に虫屋であるボクには感情移入できる。
多摩丘陵における町田市の小野路における昆虫採集について書かれている部分で、写真家の新開氏や出版社の亀澤氏など、ボクが直接面識がある人が実名で登場していて、親近感を感じた。この本が出版されたのは20年以上も前のことだから、その当時良い虫採り環境が残されていたとしても、さすがに今は環境が変わってしまっているだろうな、と想像する。
最終章の『カッパ「超」進化論』は国立河童研究所の特別研究員である井桁希世氏が書いたという形式がとられているが、もちろん「井桁」は「池田」を捩ったものであり、「希世」は「清彦」を捩ったものである。形式的には鈴木雄一郎氏が書いた論文を紹介する形式になっている清水義範氏の『蕎麦ときしめん』に似ている。また、架空の動物の進化を論じている点は、シュテンプケ氏の『鼻行類』に似ている。おそらくそれらを模したものであろうと想像される。
まあ、ともかく、気楽に読める本であるので、気分転換にはオススメである。
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