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2012年1月 8日 (日)

斎藤美奈子著『文章読本さん江』

斎藤美奈子著『文章読本さん江』

筑摩書房
ISBN4-480-81437-X
1700円+税
2002年2月5日発行
262 pp.

目次
はじめに
I サムライの帝国
書く人の論理−文章読本というジャンル
静かな抗争−定番の文章読本を読む
II 文章作法の陰謀
正論の迷宮−文章読本の内容
階層を生む装置−文章読本の形式
修行の現場−文章読本の読者
III 作文教育の暴走
形式主義の時代−明治の作文教育
個性化への道−戦前の綴り方教育
豊かさの中で−戦後の作文教育
IV 下々の逆襲
スタイルの変容−文章読本の沿革
様々なる衣装−文章読本の行方
あとがき
引用文献/参考文献

 清水義範著『はじめてわかる国語』で紹介されていたので、図書館から借りてきて読んだ。
 文章読本とは何か?それは文章を書く上での作法などが書かれている書物である。ぼくは「文章読本」と名がつく本は読んだことがないのでよく知らなかったが、谷崎潤一郎のものがその元祖であるとのことである。その後、三島由紀夫や丸谷才一や井上ひさしなども書いている。
 清水義範氏が『はじめてわかる国語』の中で本書について、「この本を読んだ後ではいかなる文章読本に類する本は書けなくなる」というような趣旨のこと書いているように、この本は「文章読本」のおかしなところが、ぶった切りにされているところが痛快に感じられる。裏表紙に「斬捨御免あそはせ!文章読本さん江」と書かれているが、まさにこの本の内容を一言で言い表している。
 恥ずかしながらボクも昆虫同好会の連絡誌に「報文を書くためのコツ」なる表題の、まさにこの文章読本に分類されるような雑文を書いたことがあるが、そのときは「記録を持っているのに報文を書いたことがない人がたくさん存在していること」をもったいないことだと思って、その助けになれば良いかと思って書いたのだが、本書を読むと、その行為が恥ずかしいことのように思えてくる。
 本書には、実にたくさんの文献が引用されており、巻末に引用文献のリストも付けられている。一般向けの書物であるはずの本書ではあるが、本書のような口語調の「語り口」を文語調に変えれば十分に学術文献としても通用しそうな感じでもある。たいへん読み易いし、「文章の書き方」そのものに興味がある人には、ぜひともお勧めの書である。(もう10年近く前の出版なので、興味がある人は大抵は既読だろうけれど。)

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