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2011年12月 4日 (日)

「第21回天敵利用研究会 奈良大会」印象記(2011年12月1日〜2日)

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 2011年12月1日〜2日に奈良市の奈良ロイヤルホテルで開催された『第21回天敵利用研究会 奈良大会』に参加した。1日目は5題の一般講演のあと「花き園芸における天敵利用の現状と展望」というシンポジウムの発表が4題、2日目は一般講演が11題あった。
 一般講演の初っ端は九州大学の上野高敏氏による「天敵を利用した農法と生物多様性の同時評価」という講演。ボクが参画しているのと同じプロジェクトでの成果の紹介である。いつもながら、上野氏のプレゼンテーションの巧さ、とくに話し振りには参考にさせられるものがある。いくら内容が興味深いものであっても、説明の仕方や話し方が悪くては、聴衆には伝わらないものである。
 シンポジウムは、これまであまり対象にされていなかった、と言うか、敢えて避けられてきたように思われる花き園芸における天敵利用に関する話題提供である。

S1 天敵は花産業に何をもたらすか 宇田明(宇田花づくり研究所)
S2 花卉類栽培における天敵を利用したIPM技術 山中聡(アリスタライフサイエンス)
S3 静岡県のガーベラ栽培におけるカブリダニ製剤を活用したIPMの現地実証 片山晴喜・土井誠(静岡県病害虫防除所・静岡県農林技術研究所)
S4 奈良県での土着天敵を活用したキクのハダニ類防除 国本佳範・小山裕三・印田清秀・矢野栄二(奈良県農業総合センター・奈良県北部農林振興事務所・近畿大学農学部)

 最初の宇田氏の講演は栽培者の立場からの話で、花きの場合は果樹や野菜よりも生産物の品質が極めて重要であり、それを決めるのは生産者ではなく消費者(=流通業者)である、という指摘があった。これがまさに花き園芸での天敵利用が敬遠されていた、というか、半ば諦められていた理由である。しかし、今回の大会でのシンポジウムで「花き園芸における天敵の利用」というテーマが取り上げられたことは極めて意義深いことである。
 この「天敵利用研究会」という集まりは、基本的に「天敵利用の推進」という立場であるので、「花き園芸においても天敵利用を推進しよう」という考え方が基礎にある。
 農業生産における「天敵利用」は究極的な目的ではなく、IPM(Integrated Pest Management; 総合的害虫管理=様々な害虫管理手法を合理的に組み合わせて害虫密度を許容発生密度以下に抑えるという考え方)を構成する一つの「手段」に過ぎないわけであるから、結論として「天敵利用」を推進することが結論とならない場合がある。生産者としては、天敵を利用することで生産コストが下げられるならば「天敵利用」が一つの手段たりえようが、そうでなければ化学農薬が中心の防除中心にならざるをえない場合もあろうかと思う。
 花き園芸の場合は、ほとんどが施設栽培であり、害虫も天敵もその初期密度は0であるという前提になる。したがって、「天敵利用」と言えば、自然発生する天敵を利用するのではなく、基本的には「天敵農薬」として販売されている天敵を利用することになる。現状では、「天敵農薬」は化学農薬と比べるとコストと使い勝手の面(害虫密度が検出も困難な非常に低い段階で使い始めなければいけないとか、まだ「芸術的感覚」が必要とされる場合が多いように思われるとか)で見劣りする。もちろん、化学農薬の場合は害虫における抵抗性の発達の問題を無視するわけにはいかないので、化学農薬が万能であるというわけでもない。
 他の参加者がどう感じたかわからないが、まだ「天敵のコストが高い」という現状では、花き園芸において天敵の利用を中心とした害虫管理が広がる状況には、まだなっていないように感じられた。今回のシンポジウムで「花き園芸における天敵利用」というテーマが取り上げられたことは意義あることだとは思うが、「実用化」を念頭に置いた場合、やはりかなりハードルが高いように感じられた。

 その他の一般講演では様々な天敵の利活用に関する取り組みや問題点に関する紹介があり、現状の把握という点では有意義であった。しかし、話し方にメリハリがなく、ポイントがわかりにくい講演もなかったわけではないので、それは残念であった。せっかく発表するのだから、話し方も考えていただいて、伝えたいことがしっかり伝わるようにしていただきたいものだと思う。これには、自分が発表するときの自戒の念もある。

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コメント

いつもまじめに研究に取り組んでおられてありがたいと思います。私は3、4日と稲武の道の駅で獣害対策により捕獲された猪、鹿肉を資源として利用する取り組みの一環として行われたグルメイベントに参加していました。このような解決の難しい問題は多々ありますが、まずはそういった課題があり、農業生産者が苦しんでいる実態を知ってもらうということが先決ではないかと思っています。
河野君の科学者としての考え方、表現を今後も参考にさせていただきます。

投稿: 川西智子 | 2011年12月 5日 (月) 15時11分

川西さん、こんにちは。
 真面目に研究に取り組んでいるかどうかはわかりませんけど、まあ頭の中で常に色々考えているのも確かですから、そう言っていただけると嬉しいやら恥ずかしいやらです。
 ボクのように行政対応の要請がある研究機関では、純粋に「科学的」に考えてばかりもいられず、ある程度は「政治的」にならざるを得ない場合もありますが、なるべく科学者としての良心だけは失わないように気をつけたいと思います。

投稿: Ohrwurm | 2011年12月 5日 (月) 22時39分

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