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2011年12月12日 (月)

第156回日本昆虫学会・第93回日本応用動物昆虫学会合同東海支部会@豊橋市自然史博物館・印象記(2011年12月11日)

 日本昆虫学会と日本応用動物昆虫学会の合同東海支部会は、毎年11〜12月にシンポジウムまたは招待講演者による講演、年度末に公募による一般講演の講演会が開催されている。開催場所は、愛知・岐阜・三重・静岡の県内で、それぞれが名古屋とそれ以外の場所で交互に開催されている。去年の11月には名古屋の金城学院大学で開催されたので、今回は名古屋以外の場所での開催ということになる。
 今回は「昆虫と理科教育」というテーマのシンポジウムで、この会としては初めて豊橋市自然史博物館で開催された。

プログラム
支部長挨拶 山田佳廣(三重大学)
事務局連絡
・自然保護委員会報告 山岸健三(名城大学)
シンポジウム趣旨説明 長谷川道明(豊橋市自然史博物館)
基調講演
「生物多様性と理科教育」芹沢俊介(愛知教育大学)
事例講演
「高校の部活動における理科教育の実践」船越進太郎(岐阜県立本巣松陽高等学校)
「豊橋市自然史博物館の取り組み」長谷川道明(豊橋市自然史博物館)

 基調講演の芹沢先生は昆虫ではなく植物分類学がご専門である。芹沢先生のお話の中では、理科教育、とくに初等教育、中等教育における目的や、それに向かってどのように実践するかが解説され、昆虫が生物教材として優れた性質を持っていることが示された。生物教育の目的とは、人類が蓄積してきた自然科学の知識体系を伝承するとともに、それを活用し、さらには発展させる人材を育成することであるということだ。しかし、これはなかなか難しいことである。生物は非常に多様であるため、観察力が必要となる。さらには、計画性、情報収集力、アイデア力、根気、独創性なども必要となる。そういう話を聞くと、非常にハードルが高いように思えてくる。昆虫は種類数が多く、大きさが手頃で観察し易く、外骨格がしっかりしていて取り扱い易いという利点を持つが、標本収集や標本作製が自己目的化しやすいという問題点も孕んでいる。しかし、生物多様性を理解するための材料として、昆虫は優れた材料だと言えるということになる。昆虫学に関わっている我々としては、それをいかにうまく使いこなすかが重要な課題となろう。
 船越先生の講演は、ご自身が高校教員として高校の部活動として転勤した先々で生物部を活性化されたという実例の紹介であった。高校の部活動が活性化するかどうかは顧問の教師の力量に依存する部分が多いと思う。それにしても、船越先生は生物部活性化のカリスマ教師だと思わされた。ひとえに人柄がなせる業であろうと思う。
 長谷川さんの講演は、博物館の利用が低年齢化(幼稚園児から小学校低学年が中心になっている)しているという「問題」が紹介され、そのような状況の中でも、地元の高校の生物部とタッグを組んで地元の生物の分布や生態を明らかにして、さらには論文にまで仕上げよう、という話であった。豊橋市自然史博物館は豊橋市の組織ということで、豊橋市立の小中学校に対してはサービスしやすいが、高校とかかわることはいろいろと障害がある中で色々苦労されているようであった。

 以上がシンポジウムの概略であるが、以下はボクが個人的に感じたことである。
 ぼくは、農業関係の試験研究機関に席を置いているので、生物学を基礎にして仕事をしているが、生物学の教育に関しては完全に「業務外」である。しかし仕事で昆虫を扱っている傍ら、趣味としても昆虫を扱っているので、それを何らかの形で社会に還元したいと考えているのも事実である。しかし、ボク自身が有名人ではないし、転勤族の悲しさで、なかなか「その土地の地元の人」と繋がりを作ることが困難で、その機会を見いだすことができない状態である。自分で何かを主催して行事を行うのはほとんど不可能だと思うが、声がかかれば、講演もできると思うし、観察会での講師もできると思う。しかし職場との関係が障害になる可能性がないとは言えないようにも思う。でも、なんらかの形で、とくに小中学生に対して、昆虫を通して生物学の面白さを伝えたいものである、とあらためて感じさせられた。

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コメント

大阪の自然史博物館の状況は少し違っていて、オジサン・オバサン虫屋が増加中で、子供はどうもいろいろほかに面白いことがあって年々少なくなっています。人工的なゲームが溢れてしまった功罪です。と言うことはこれで儲けようとしている大人の責任でもあります。それと以前は高校の生物クラブが同定会の常連でしたが、全くなくなってしまいました。でも科学への興味は決してなくなっていなくて、先日高校の化学部女子達が、Belousov-Zhabotinsky Reaction(所謂振動反応のひとつ、反応が一方向ではなく戻る方向の反応と交互に繰り返す特異な反応、酵素反応でよく見られますが、無機物の反応でも少ないながらあります)について論文を書いて、アメリカの学会にアクセプトされました。親は小さいころから、子供をゲームでほったらかしにせず自然に触れさせる努力が必要です。虫屋の親はやっているとは思いますが、一般の親御さん方への啓蒙が必要だと思います。

投稿: Harpalini | 2011年12月13日 (火) 18時14分

Harpaliniさん、コメントありがとうございます。
 大阪自然史博の場合は「友の会」の存在が大きいように思えます。でも、「友の会」のようなものを維持できる博物館は、それなりの人数の学芸員を擁している博物館でないと難しいように思えます。

投稿: Ohrwurm | 2011年12月14日 (水) 21時09分

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