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2011年11月10日 (木)

タヌキとの関係を振り返ってみた(2011年11月10日)

 昨日書いたタヌキの轢死体のエントリーを読んだ方から「東京の街中にもタヌキがいる」という情報をいただいた。県庁所在地である津市が都会であるかどうかを別にしても、タヌキが都市部に進出しているのは事実なのかも知れないので、自分のタヌキとの関係を振り返ってみることにする。
 ボクは1959年に濃尾平野のド真ん中にある愛知県一宮市で生まれ、学校に上がる前の2年間を除き、高校を卒業するまで一宮市の市街地で過ごした。それまで近所で野生のタヌキを見た事はなかった。
 高校を卒業して京都に移り、最初の半年ちょっとを洛北の山の麓の岩倉で過ごし、あとの6年ちょっとを北白川の街中で過ごした。やはりその頃も、街中でタヌキを見た記憶はない。しかしその当時、京都大学理学部の日高敏隆先生の研究室に山本伊津子さんという大学院生がいて、タヌキの「溜め糞」の研究をしていたので、具体的な場所はわからないが、手頃な場所にタヌキが多数棲息していたことは確かだと思う。
 その後、就職して半年間は広島県福山市の蔵王山の南の麓で暮らしたが、そこでもタヌキを見た記憶はない。
 そのあと岩手県盛岡市の郊外にある東北農業試験場(現在、東北農業研究センター)の敷地内で7年半暮らしたが、ここでは何度か野生のタヌキを見た。そのときは、「さすが自然が豊かな場所だけある」と思ったものだ。ここでは、カモシカ、タヌキ、アナグマ、キツネ、ノウサギ、リスなど、クマとシカ以外の大型ほ乳類をほとんど見ることができた。
 さらにその後、福岡県久留米市の野菜・茶業研究所久留米支場(現在、九州沖縄農業研究センター久留米研究拠点)の敷地内で4年暮らした。ここは耳納連山を後ろに控えた高良山の麓に近い場所である。ここでは、ある日の朝、まだ小さかった長男が家から外を見て「ワンワンがいる!」と言うので、外を見てみたら、それはタヌキだった。敷地内を探したら「溜め糞場」も見つかったので、それなりの個体数のタヌキが棲息していたと思われる。この場所は、久留米大学御井学舎と隣接しており、それなりの面積の森になっているが、緑豊かな高良山からは隔離されている。
 さらにその後の7年間は石垣島で暮らしたが、ここにはタヌキは分布していない。
 その次に、現在暮らしている三重県津市に移ったのが2004年4月のことである。最初に住んでいて去年の年末まで暮らしていた場所は、偕楽霊園という墓地のすぐ南側で、津駅の西にある偕楽公園から繋がる比較的緑豊かな場所であったが、その界隈でタヌキを見たことはなかった。現在住んでいる場所は近鉄名古屋線の江戸橋駅の近くで、緑に乏しい場所である。ここから昨日タヌキの轢死体を見た小丹神社(おにのじんじゃ)の近くまでは約700mの道のりである。小丹神社の周辺は照葉樹林となっていて、それなりに自然が残っている場所であるが、その西側を県道10号津関線が通っていて、その西側の丘とは分断されているので、ある程度自然が残っているとは言え、孤立した場所である。
 というように、以上に書いたことが、ボクと街中のタヌキとの関係である。
 このように思い返してみると、久留米市に住んでいたときが、ボクとタヌキの距離が一番近かったように思える。それを思うと、完全な街中でタヌキを見ることはないが、ちょっとした森があればタヌキが棲息していてもおかしくない、と言うことができると思う。しかし、そうであれば、津に引っ越してきて最初に住んでいた界隈でタヌキを見てもおかしくないようにも思える。まあ、タヌキは棲息していたのだけれど、たまたま見ることができなかっただけなのかも知れない。
 以上に書いたように、ボクはあちこち引っ越しているので、同じ場所での経時的な変化を実感することはできていないのだが、大雑把な傾向として「タヌキが都会に進出しつつある」ということを事実として受け止めても良いような気がする。
 それが事実だと仮定すると、タヌキが都会に進出できるようになった理由が何かあるはずである。そこで思いついたのが野良犬である。ボクが子どもだった頃、家の近所に野良犬は普通に見られた。ところが、津市に引っ越してきてからは野良犬を見た記憶がない。石垣島にはたくさんの野良犬がいたが、その前の久留米市でもあまり野良犬を見たような記憶がない。野良犬がいなくなったことは保健所の努力の賜物だと思うが、その結果として野良犬が占めていた生態的ニッチが空白になったということが考えられる。タヌキは雑食性であり、体の大きさも一般的なイヌに近いので、餌などをめぐってタヌキとイヌの間で競合するという可能性が十分に考えられるような気がする。近年の研究では、「餌などの生存に必要な資源だけが競合している場合には競争的な排除は起こりにくい」ということが理論的に説明されているが、でも可能性として全く無いかと言えば、そうとも言えないような気もする。だから、タヌキは空白になったニッチに進出しつつある、と。
 具体的なデータを欠いている「単なるお話」だが、街中に野良犬がいなくなったことと、タヌキが都会に進出していることは、互いに無関係だとは思えない。こんなことは、もう既に誰かが研究しているかも知れないけれど。

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コメント

>偕楽霊園という墓地のすぐ南側で、津駅の西にある偕楽公園から繋がる比較的緑豊かな場所であったが、その界隈でタヌキを見たことはなかった。

あのあたりはちゃんといるともいますよ.
野良犬との関係は,かなり大きいと思います.このことについては,どなたかがなにかに書いておられたのを読んだことがあります.

投稿: ぱきた | 2011年11月10日 (木) 22時16分

赴任先の豊川市八幡町にある寮の周辺ではタヌキは出ませんが、猿が出没します。山伝いにやってくるのでしょうね。それと標高が30mくらいにも拘わらず夏にヒグラシが鳴いています。ヒグラシは山の蝉とばかり思っておりました。ヒグラシ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシが同じ場所で鳴いているけったいなところです。タヌキから脱線してごめんなさい。でも甲虫はミカワオサ以外は基本暖帯の照葉樹林性の種が殆どです。

投稿: Harpalini | 2011年11月11日 (金) 20時16分

ぱきたさん、昨日はお忙しかったですか?
 あの界隈にタヌキが出ても全く不思議ではないと思いますけど、見た記憶がありませんね。
 野良犬との関係、やはり同じことを考える人がいるのですね。

Halpaliniさん、コメントありがとうございます。
 サルは何年か前に、以前住んでいた家の庭や裏の墓地の下の斜面にも現れました。
 現在の我が家も完全に平地で近くに林もありませんが、この夏の明け方にヒグラシの鳴き声を聞きました。
http://ohrwurm.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/201187-39de.html
この界隈では、平地でも暗い林があればヒグラシは棲息しているようです。
 ミンミンゼミとクマゼミが同じ場所にいるのは、ちょっと珍しいような気がします。

投稿: Ohrwurm | 2011年11月12日 (土) 20時40分

クマゼミとミンミンゼミの共存は自宅の能勢でもあります。というよりクマゼミが、昔は涼しかった能勢の山奥の気温が高くなったためにに進出してきてると言った方が正しいです。セミに限らず子供の頃の自然の常識が崩れつつあります。

投稿: Harpalini | 2011年11月13日 (日) 19時48分

皇居の周辺など都心の一等地にもタヌキがいるということは聞いていますが、昼行性の私はまだ見たことがありません。
野良犬の話はまさにそのとおりだと思いますが、飼い犬にも原因があるのではないでしょうか。
昭和の時代は放し飼いが普通だったのが、今では厳重に管理され、都心では見かけることはありません。屋内の飼い犬が増えたのかもしれませんね。
その点、放し飼いは減ったかもしれませんが、郊外では庭の犬に吠え立てられるので、タヌキとしても近寄れないのかもしれませんね。
イノシシが田舎よりもむしろ市街地に多いというのも、飼い犬の管理と関係が有ると聞いたことがあります。

投稿: sizenkansatu | 2011年11月14日 (月) 12時39分

確かに、拙宅の近所もそうですが田舎に行くと犬は庭に放し飼いですから、タヌキもキツネも逃げ出すでしょう。皇居はノコギリクワガタがいるくらいですから、脊椎動物も色々いるのでしょうか。それに東京は大都会にしては緑が豊かです。山手線で一周すると、少なくとも大阪の環状線よりははるかに緑が目につきます。因みに少し前に行われた数少ない大阪の緑の多い大阪城の調査ではまさかというゴミムシがいました。また大阪城公園の森には、だれが放したのかタイワンリスが沢山います。

投稿: Harpalini | 2011年11月14日 (月) 20時18分

sizenkansatuさん、Halpaliniさん、コメントありがとうございます。
 東京の皇居の周辺に限りませんが、東京の山の手の方は、意外に緑が豊かだなぁ、という印象を、今年の5月に東京に行ったときに持ちました。
 それはそれとして、タヌキの分布に関しては、緑の豊かさは、あまり関係が無いかも知れないような気がしてきました。野良犬にせよ、飼い犬にせよ、タヌキが避ける要因になりそうに思います。

投稿: Ohrwurm | 2011年11月14日 (月) 21時25分

わあ、タヌキだ、タヌキ。

面白い本があるので、ご紹介します。以下です。
http://ameblo.jp/konton57/entry-10796575608.html

あわせて、リンク先の私のサイトも続けて読んでいただければ幸いです。私が家の近くでタヌキを見たときのことを書いてあります(1つの記事は写真付き)。

その本によると、タヌキはネコを避けるようです。野良犬も当然そうでしょうね。

タヌキは昔から東京にいるそうで、都会に進出したというよりは土着のようです。むしろ、緑が分断され、それをつなぐのが鉄道の線路であるということです。


今年の夏には、ハクビシンも見ました。
http://konton57.blog8.fc2.com/blog-entry-1800.html

それから、これが謎なのですが、犯人が哺乳類であることは明らかです。なんの歯形なのかなあと。
http://www41.tok2.com/home/konton57/201110/2011_1018.html

投稿: 混沌 | 2011年12月 7日 (水) 06時23分

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