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2011年10月17日 (月)

個体群生態学会第27回大会@岡山大学・印象記(2011年10月14日〜16日)

 個体群生態学会の大会というかシンポジウムに参加するのは、1997年10月に沖縄県知念村(当時)のホテルサンライズ知念で開催されたシンポジウム以来だから14年ぶりである。こちらにその時の写真が掲載されているが、みんな若いので時が経ったことを嫌でも感じさせられる。どうでも良い話であるが、その年はボクが石垣島に赴任した年で、まだ出張慣れしておらず、飛行機に乗ったあとでパンツを持ってくるのを忘れたのに気付き、那覇に着いてから牧志の商店街に行ってトランクスを2枚買ってから開南のバス停から38番の東陽バスに乗ったことが思い出される。その14年前のトランクスは去年ぐらいまで長期にわたって使っていたが、そんなに長く使っていられた理由は、普段はトランクスを履かずブリーフを履いていたからである。
 個体群生態学会は、もともとは害虫の防除や水産資源の管理などの応用分野に大きく関係する個体群動態や分布様式の解析などがテーマの中心だったが、社会生物学とか進化生態学と呼ばれる分野が日本に押し寄せてきた1970年代の終わり頃から、それらの新しい分野の研究が中心的になってきた。そのため、応用分野に身を置くボクとしては、個体群生態学会の大会あるいはシンポジウムに出席しようという動機が薄くなっていた。ところが今回の大会は、応用分野のシンポジウムがいくつも組まれていたので、久しぶりに出席してみようという気になった。
 1日目と3日目は2〜3つのシンポジウムが同時並行して開催されていたので、どちらに出ようか迷うものもあった。2日目は本大会のメインのシンポジウムであり、参加者は半ば強制的に出席させられた。シンポジウムの他には、自由応募によるポスター発表が2日目と3日目に開催されていた。
 1日目のシンポジウムは大学の授業が終わってからの18:00からの開始であった。ボクは「ここまでわかった昆虫の長距離移動」のシンポジウムに出た。4名からそれぞれ、イネウンカ類、ハスモンヨトウ、ナモグリバエ、コガタアカイエカの長距離移動についての話題提供があった。イネウンカ類については、かなり良い精度で海外からの長距離移動の予測が可能になっている。ハスモンヨトウについても、かなり海外から来ていることは間違いないし、コガタアカイエカについても、遺伝子型をみる限り海外からたびたび飛来があることは確かだと思える。よくわからないのがナモグリバエである。ここ三重県辺りでは冬場しか見られないが、北海道では越冬できずに夏場に見られる。どのように移動しているのか、まだはっきり言えない状態である。
 2日目は朝から夕方まで、2人の日本人に加え、外国人の演者4名を招いて社会性の進化に関する最近の研究の紹介であった。これは、通訳無しの英語で行われた上に、普段馴染みの無い社会性に関する話題が中心だったので、テクニカルタームがわからず、何が語られているのかさっぱりわからない、非常に情けない状態だった。日本語で話されていてもわからなかった可能性もある。
 そのあとは総会と奨励賞の受賞記念講演が行われた。受賞記念講演は内海俊介氏による「時々刻々と変化する植物から昆虫の多様性に迫る」という演題で、ヤナギをモデルにしてそこに棲息する昆虫の多様性の違いが紹介された。あたりまえと言えばあたりまえのような話ではあったが、自然生態系の中で起こっていることを体系立てて説明することはやっかいなことなので、奨励賞に値する良い研究内容だったと思う。
 このあと懇親会があったが、既に書いたように、出席しなかった。
 最終日3日目は午前中に1コマ、午後に2コマのシンポジウムが組まれていた。
 午前中は「外来生物の侵入と拡大−植物保護の最前線−」に出た。外来生物はしばしば多量に繁殖して問題を起こすことがあるが、そのようなことに関わる話題として、輸入検疫からみて警戒すべき害虫、チャトゲコナジラミ、既存の天敵が効かないミツユビナミハダニ、外来雑草、計4題が紹介された。雑草の話を聞く機会は少なかったが、植物検疫という関門がある病害虫と違い、検疫フリーで入ってきてしまう雑草の問題は厄介な問題だと思った。
 午後の1コマ目は「寄生生物の進化と多様性〜楽しい強制から怖い感染症まで〜」に出た。テレビなどでも引っ張りだこの五箇公一氏がオーガナイザーである。五箇氏が趣旨説明をしたわけだが、氏の話し振りは人を惹き付けるものがあり面白い。そのあと5題の話題提供。寄生−被寄生の関係を持たない生物はほとんどないと思われるが、様々な寄生あるいは共生関係が紹介され、寄生−被寄生関係の面白さがあらためて感じさせられた。
 最後の午後の2コマ目は「農業生態系における個体群生態学」に出た。奥圭子氏の趣旨説明のあと、4題の話題提供があった。金子修治氏のカンキツ園におけるニホンアブラバチの個体群に関する話は、様々な生態的な関係のしっかりしたデータが取られており、充実した内容だと思った。上野高敏氏は現在ボクも関わっている農耕地の生態系の生物多様性の指標から農法を評価しようというプロジェクトの紹介のような話であったが、話のまとめかたや話し振りが非常にうまく、あらためて自分が何をやってるのかを再確認させられるような思いであった。最後に中筋房夫先生のコメントがあったが、このエントリーの最初の方に書いた、個体群生態学会の歴史について触れられ、今でも個体群生態学は農業害虫研究にとって重要である、と締めくくられた。
 時間が前後するが、ポスター発表について。ボクは石垣島に住んでいたときのホシカメムシの研究以来、配偶干渉について興味をもっていたが、そのときいろいろと教えていただいた西田隆義氏がご自身や学生さんとの共同研究のポスターを発表されており、在来タンポポと外来タンポポの分布が配偶干渉で説明できるということで、大変面白いと感じた。最優秀ポスター賞を獲得したのも配偶干渉に関したもので、京極大助氏と西田隆義氏の共同研究の「マメゾウムシにおいて種間交尾がアリー効果を引き起こす」であった。
 今回の大会は200名弱の参加者だったと思うが、規模が大きすぎず小さすぎずというところで、なかなか良かったと思うし、内容的にもボクには有意義なものだったと感じられた。しかし、来年も参加するかどうかは、開催されるシンポジウムの内容次第ということになると思う。

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コメント

>来年も参加するかどうかは、開催されるシンポジウムの
>内容次第ということになると思う。

開催場所は?沖繩なら行くでしょう?w

投稿: Zikade | 2011年10月18日 (火) 13時59分

Zikadeさん、どうもです。
沖縄なら・・・・・行きたい!

投稿: Ohrwurm | 2011年10月18日 (火) 19時14分

数年前に神戸大の先生よりゴミムシの多様性に関する研究をするので、同定お願いできませんかという依頼を受けました。神戸市内に散在するドメイン状の森のオサムシ科の虫の多様性を調べて、六甲山からの距離、面積、ドメイン間の距離・・などの影響を調べるもので、都市計画への情報になるものです。生態は初めてでしたが、分類を手掛け長年採集し続けた副産物として得た各種の棲息環境とか季節とかの情報が非常に役立ちました。この森にはこのような種が多いので、落葉が多い比較的湿度の高い環境であろうとか。ともすれば分類屋はないがしろにされがちですが、生態屋さんはぜひとも彼らが持っている表に出にくい情報を利用していただきたいものです。分類屋は記載論文を書いているだけではありません。因みに小生は本業では、化学や物理の数式を使って現象の解析やモデル化をしていますので、生物分野でも数式を使った定量的な研究にも興味があり、この共同研究は面白かったです。一緒に研究した学生さんは、この論文をもとに修士論文を提出され無事卒業されましたし、もう一人の学生さんは学位論文の一部にされました。近年で自他ともにとても有益な活動でした。分野ごとに閉じこもるのではなく融合してゆきたいものです。そういう意味では、書かれている学会にも入って色々お話を伺いたいのですが、もう学会貧乏でちょっと難しいかなぁ。

投稿: Harpalini | 2011年10月19日 (水) 06時40分

Harpaliniさん、コメントありがとうございます。
 神戸大学の学生さんとの共同研究の論文ではHarpaliniさんのお名前を拝見したような記憶があります。
 分類学は大切ですけれど、なかなか研究職のポストがないので(要するに、社会からは重要だとは見なされていないということでしょうけど)、せっかく育った分類学者が埋もれてしまうということは、本当に残念なことだと思っています。
 学会員にならなくても、最近の学会では公開のシンポジウムなどもしばしば開催されていますので、時間が許せば出かけられたら良いと思います。

投稿: Ohrwurm | 2011年10月19日 (水) 20時18分

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