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2011年7月 9日 (土)

長谷川英祐著『働かないアリに意義がある』

長谷川英祐著『働かないアリに意義がある』

メディアファクトリー新書015
ISBN978-4-8401-3661-7
740円+税
2010年12月31日発行
189 pp.

目次
序章 ヒトの社会、ムシの社会
 「とかくこの世は住みにくい」/個体は社会から逃げられない/厄介者扱いされるオス/齟齬が生みだすユニークさ/ムシの社会を覗いてみれば
第1章 7割のアリは休んでいる
 アリは本当に働き者なのか/ハチの8の字ダンス/働かないことの意味/なぜ上司がいなくてもうまく回るのか/小さな脳でなぜうまくいうのか/若けりゃ子育て。年をとったら外へ行け!/アリに「職人」はいない/お馬鹿さんがいたほうが成功する/兵隊アリは戦わない/●1章のポイント
第2章 働かないアリはなぜ存在するのか?
 「上司」はいないアリやハチの社会/よく働くアリ、働かないアリ/怠け者は仕事の量で変身する/「2:8の法則」は本当か/遺伝で決まる腰の軽さ/「やるやらない」はどう決まる/経験や大きさで仕事は決まる/ハチやアリにも過労死が/みんなが疲れると社会は続かない/規格品ばかりの組織はダメ/●2章のポイント
第3章 なんで他人のために働くの?
 子を生まない働きアリの謎/血縁選択説の登場/わが子より妹がかわいくなる4分の3仮説/実証不能のジレンマ/美しすぎる理論のワナ/弟はいらない/群選択説も登場/ヒトの滅私奉公/生き残るのは群か?血縁か?/向き合わない両者/●3章のポイント
第4章 自分がよければ
 社会が回ると裏切り者が出る/本当に働かない裏切りアリ/なぜ裏切り者がはびこらないこか/他人の力を利用しろ/究極の利他主義、クローン生殖/最初にやった仕事が好き/それでもやっぱりパートナーがいないと/●4章のポイント
第5章 「群れ」か「個」か、それが問題だ
 庭のネコの生物学的見分け方/なぜ群れるのか/なぜ群れないのか/完全な個体/不完全な群体/不完全な群体を超えて/●5章のポイント
終章 その進化はなんのため?
 食べ始めたとき、進化した/自然選択説の限界/神への長い道/説明できないという誠実さ/いつも永遠の夏じゃなく/終章のポイント
おわりに 変わる世界、変わらない世界

 よく売れている本らしい。図書館で借りてきたが、借りてきた本は2011年4月23日発行の第5刷である。表題はなかなか印象的であり、一般人受けすると思われる。
 著者はアリを中心とした社会性昆虫の研究者であり、本書はアリなどの社会性昆虫の生態を一般の人向けに易しく解説したものである。社会性昆虫の生態や進化について、これまでの知見が紹介されており、どんな説があり、どこまで解っていて、何がまだ解っていないのか、などが解説されており、社会性昆虫の入門書としては手頃であろうと思われた。
 遺伝的に均一な集団が必ずしも適応的ではない、というところなどは社会性昆虫についての知識が古いぼくにとっては新しい知識であり、いろいろ勉強になることが多かったのは事実である。粘菌が社会性生物だ、ということが書かれており、それはぼくにとっては初めて聞いたことであったが、考えてみれば確かにそうであり、なるほどと思った。
 著者の考え方はネオダーウィニズムに基づいたものであり、社会性昆虫の社会進化についてはうまく説明されていると思うのだが、生物全体をみた場合、やはり自然選択と遺伝的浮動だけでは進化を説明できない部分もある(例えば、「原核生物からどのように真核生物が進化したか」などということは、自然選択と遺伝的浮動だけでは説明が困難だと思われる)ので、終章に「地球の歴史上、生命はたった1回しか現れなかった」と書かれているにもかかわらず、その後の生命の多様化に関する説明が不十分とだと思われた。やはり、自然選択と遺伝的浮動だけでは進化を説明できない部分もある、とはっきり書いておくのが誠実ではないかと思った。
 書かれている主張は吉村仁著『強いものは生き残れない』と共通するような部分もあるので、そちらも併せて読んでみるのも良いかも知れない。

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コメント

遅ればせながら、こちらで紹介されていた『働かないアリに意義がある』を読んでみました。Ohrwurmさんの評をみていなかったらスルーしていたに違いありません。
ということで僕も感想をブログに書いてみました。
・ムダの意義を再発見!?『働かないアリに意義がある』
http://blogs.yahoo.co.jp/ho4ta214/26967808.html

投稿: 星谷 仁 | 2011年8月20日 (土) 13時15分

星谷さん、コメントありがとうございました。
 ボクは図書館で借りてきて読んだだけのに、ちゃんと自分で購入されたとは、ボクの責任重大でしたね。好意的な感想を持たれたようで、ボクもホッとしました。

投稿: Ohrwurm | 2011年8月20日 (土) 15時58分

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