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2011年6月 9日 (木)

淺井康宏著『緑の侵入者たち』

淺井康宏著『緑の侵入者たち 帰化植物のはなし』

朝日選書474
ISBN4-02-256634-5
1,300円
1993年5月25日発行
294 pp.

目次
はじめに
I 日本への侵入者たち
 八百種の侵入者たち/帰化植物の区分/帰化植物の侵入状態/帰化植物という言葉/侵入経路/逸出帰化/仮生帰化と予備帰化/史前帰化/原産地/名前/悪者たち/花材として
II 日本からの進出者たち
 密出国者たち/イタドリとオオイタドリ/アマリカで猛威のクズ/世界各地を侵略したスイカズラ/ノイバラとテリハノイバラ/オカトラノオ/牧草からの逸出者/海を渡ったマメ科植物/アメリカ大陸のススキたち/砂丘の覇者コウボウムギ/イボタノキとネズミモチ/ナンテンとグミの仲間/花園から逃げた野草たち/華麗な東亜からの使者キリ/野草の王者タケニグサとフキ/東亜からの進出者アキノエノコログサ/イネ科の仲間たち/欧米へ渡った低木たち/アケビとムベ/つる植物たちの活躍/バラ科の低木たち/密出国者たちの素顔
III 帰化植物あれこれ
<侵入者たちの素顔>
セイヨウタンポポ/ハルジョオン/ブタナ/ヒメオドリコソウ/シロツメクサ/キキョウソウ/オランダミミナグサ/オニノゲシ/ムギクサ/コバンソウ/ハキダメギク/セイヨウヒルガオ/ドクニンジン/セイヨウオニアザミ/ムラサキカタバミ/アメリカネナシカズラ/ヒメジョオン/キバナノレンリソウ/ヒメムカシヨモギ/ヨウシュチョウセンアサガオ/アレチウリ/アオゲイトウ/オナモミ
<話題のエイリアン>
マツヨイグサ/ブタクサ/セイタカアワダチソウ/ワルナスビ/オオイヌノフグリ/オニハマダイコン
IV 帰化植物ノート
 日本でふえている水生の帰化植物
 外来植物の同定、発表へのコメント
 久内先生と帰化植物
あとがき

 副題のとおり、帰化植物の話である。1993年発行と、いささか古くなってしまっている感はあるが、帰化植物についての歴史や考え方については、現在でも大きく変わっていないのではないかと思う。もっとも今では、新顔の帰化植物が幅を利かせているものもあるかも知れないが。
 著者の淺井康宏氏の本業は臨床歯科医であってプロの雑草学者ではなく、アマチュアの研究者である。しかし、昆虫の場合と同じで、アマチュアだからと言って、プロより劣っているということは全くなく、むしろアマチュアだからこそ、幅広く自由に外来植物について研究されていたようにも思える。
 本書を読めば、ぼくが子供の頃から慣れ親しんできた植物の多くが日本在来ではなく、外来種が帰化したものであることを知ることができる。子供の頃、街中に住んでいたぼくは、在来植物よりむしろ帰化植物により親しんでいたとも言えるほどである。ぼくが子供の頃から馴染んでいた帰化植物としてヨウシュヤマゴボウがあるが、何故か本書ではヨウシュヤマゴボウについての記述は無かった。意識的に外されたのか、それとも見落とされたのか、その理由を知りたい。
 昨今の外来種排除の風潮は、原理主義的な感じを受けることが多いが、著者の淺井氏が帰化植物を見る目は冷静で落ち着いていると感じられる。もちろん、ある植物に対しては「問題だ」とコメントしているものもあるが、中には「もっと有効に利用されても良い」などとコメントされているものもある。植物を見る目は自然な視線であり、淺井氏が真のナチュラリストであることを感じさせられる。
 「帰化」の定義についても、様々な段階に分けて考えられており、昆虫のことを考える上でも、参考にしたら良いのではないかと思った。例えば、蝶の場合でも、毎年様々な種が海外から飛来したものが採集されており、それらの一部は日本国内で繁殖することもある。これらは「迷蝶」、「迷蝶の一時的発生」、「土着」の3段階程度にしか区分されていないが、これはおそらく便宜的なものであり、もう少し細かく客観的に区分しても良いのではないかと思う。もっとも、蝶の場合、蝶自身の移動能力が大きいので、区分を細分化しても、それをどこに位置づけるかを判断するのは難しいかも知れない。
 学術的な論文の発表に関して、淺井氏は常に慎重であるべきとの態度であり、支持されるべきものだと思う。プロの場合、しばしば論文の数で業績を評価されることが多いので、不完全なものでも論文にしてしまうことが無いわけでは無いと思うが、これも淺井氏がアマチュアであるからこそ、このような主張ができるのではないかと思う。
 全編を通して落ち着いた書き方であり、読み易く、お勧めできる良書だと思う。特に、原理主義的外来種排除主義者には読んでいただきたいと思う。

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