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2011年6月19日 (日)

クリス・ブライト著(福岡克也監訳)『生態系を破壊する小さなインベーダー』

クリス・ブライト著(福岡克也監訳)『生態系を破壊する小さなインベーダー』
LIFE OUT OF BOUNDS --- Bioinvasion in a Borderless World
by Chris Bright (1998)

家の光協会
ISBN4-259-54574-4
1,900円+税
1999年10月1日発行
226 pp.

日本語版に寄せて−−−レスター・ブラウン
謝辞−−−クリス・ブライト
第I部 国境なき生命体の侵入
 第一章 逆行する進化
第II部 生態的プロセスとしての侵入
 第二章 草原
 第三章 森林
 第四章 海洋と河川湖沼
 第五章 島
第III部 生命特許とグリーン・ニューディール政策
 第六章 植民地主義
 第七章 偶発的侵入
 第八章 経済システムが加速する侵入
第IV部 生物多様性を守る取り組み
 第九章 環境的センスのある社会をめざして
監訳者あとがき

 生物多様性に悪影響を与える外来生物に関する問題点を指摘した本である。1999年(原書は1998年)に出版されているので、もうかなり古い本である。
 外来生物に関する問題を解決するために必要なのは「長期的に見れば侵入に対する真の、唯一の希望は、生物は本来いるべき場所にいることが大切なのだと考える一般大衆なのである。」と、最後に書かれている文章のために、外来生物がもたらした様々な問題の事例を挙げて解説している。ようするに、本書は専門家のために書かれたものではなく、一般大衆を対象に書かれたものだと理解される。
 経済のグローバル化は人やモノやカネばかりではなく、予期せぬ生物のグローバルな動きを加速させた。外来生物は長期的に見れば様々な経済的な損失をもたらしているが、それがカネに換算しにくいことであるがため、あるいは目に見えにくいものであるがため、短期的な利益を追求する経済活動からは無視されてきた。このことは、興味を持って生物を見ている人でなければなかなか気づかないことだと思う。
 本書の著者はアメリカ人であり、書かれていることはアメリカのことが多いが、世界的なレベルで事例が紹介されている。しかしながら、外来生物が問題を起こしていることは確かなことはわかるのだが、だからと言って問題を起こしているのは外来生物ばかりではないので、そのことについて言及されていないのは、やはり片手落ちであるように思える。
 また、「生物は本来いるべき場所にいることが大切なのだ」とは言っても、自分が物心ついたときに既に定着してしまっていた外来生物を外来生物として実感することは極めて困難なことであるため、頭の中で「生物は本来いるべき場所にいることが大切なのだ」と漠然と考えることだけしかできないのではないかと思う。
 だが、なかなか良く調べて書かれている本であるとは思うので、外来生物の問題についてこれまで知識が無かった人が読めば、問題点は理解し易いのではないかと思う。
 問題点をどのように解決するかは、これからの問題である。と言うか、現時点で外来生物については、世界規模での経済活動は膨らむばかりであり、ますます悪い方向に社会が動いていると感じられる。「長期的に見れば侵入に対する真の、唯一の希望は、生物は本来いるべき場所にいることが大切なのだ」と考える一般大衆が未だに少数派であるということなのであろう。

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