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2011年3月21日 (月)

横山和成著『食は国家なり!』

横山和成著『食は国家なり!日本の農業を強くする5つのシナリオ』

アスキー新書 151
ISBN978-4-04-868613-6
743円(税別)
2010年5月10日発行
191 pp.

目次
まえがき
第1章 日本の食の現実
 一 “失われた10年”、そして終わりの始まり
 二 安全と安心、そして最後の10年
 三 質から量へ
 四 2025年の「食」に向けて
第2章 シナリオA: 保護主義
 一 未来予測(1)日本は保護主義を選択する
 二 “農業保護”主義の源流
 三 “絶滅”後の日本農業、その未来
第3章 シナリオB: 完全自由化&国際化
 一 未来予測(2)日本は食料生産を完全自由化する
 二 大都市と地方−農業の自由化は双方を荒廃させる
 三 農業の完全自由化、その未来
第4章 シナリオC: 主権化及び多様化
 一 未来予測(3)食料・農業に関する認識の改革
 二 独自の道を歩む農家たち、そしてその既存農業形態との摩擦
 三 「農」と「食」に対する意識転換
 四 Made By Japan (MBJ)
 五 主体化と多様化による農業の一般化、その未来
第5章 シナリオD「無策」ではなく「不策」
 一 未来予測(4) 「不策」
コラム:土壌微生物評価の取組について
あとがき

 先月、土壌微生物の多様性に関する話を聞いた横山和成氏の著書である。氏の土壌微生物の多様性についての見方には目から鱗が落ちるような思いがしたので、氏の著書を読んでみることにした。氏の土壌微生物の多様性についての考え方は、本書のコラムに簡単にまとめられている。
 まず感じさせられたのは、氏が土壌微生物学者であるにもかかわらず、書かれている内容は、あたかも農業経済学者が書いたかのような内容であったことである。本書の著者が土壌微生物学者であることを感じさせるのは、巻末のコラムのみと言っても良い。
 本書を読めば、日本の農業あるいは食糧事情が既に取り返しのつかない所まで来てしまっていることが容易に想像できる。最後の「不策」は論外であろうが、いまは「保護主義」と「完全自由化&国際化」の選択を迫られてると言えよう。いま政権をとっている民主党は、農家の所得一律保証を掲げており、保護主義的である。本書では、「保護主義」をとった場合、「完全自由化&国際化」をとった場合それぞれに、今後どんな状況が待ち受けているかの想像が書かれているが、どちらも日本の農業と食糧にとどまらず、社会全体に望ましくない結果が予測されている。
 そこでもう一つ想定されているシナリオが「主権化及び多様化」である。日本が生き延びるための道はこれしか残されていない、とも言えるように書かれている。一般にはそうとは看做されていない場合が多いように思えるが、農業は深い経験に基づき、高度な知識を必要とする、技術を基盤とした産業である。都市住民がその点が理解していない点は問題であり、多少なりとも都市住民が農業を理解するために、ベランダ農業をやってみることを本書は提案している。また、農家に対しては、農家が生産者であるというだけでなく、経営者であるという意識を持つべきだと主張している。都市住民が農業を理解した上で、また農家自身が経営者であるという意識を持つことにより、相互が理解し合い、お互いに顔が見える関係を作ることにより、良い方向に持って行ける可能性があるとしている。すでに日本の農家はすでに高齢化してしまっている。経験や知識や技術を早く若い世代に引き継がなければ、日本の農業そのものが絶滅してしまう。だから、早い対策が必要である。
 以上のように、本書を読めば、危機感を感じないわけにはいかない。今は震災で大変なことになっているし、エネルギー事情も逼迫してくることは目に見えている。農業に限らず、近い将来、ライフスタイルの転換を迫られることは必至であろう。目先のことにとらわれて、些細なことで揚げ足を取り合っているような政治家はもはや必要はなく、将来の展望を描ける政治家の出現を期待したいものである。
 そのような中、農業害虫を対象に研究しているぼくも、何をすべきか考え直さなければいけないと思う。

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受信: 2011年3月29日 (火) 14時55分

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