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2010年11月20日 (土)

五箇公一著『クワガタムシが語る生物多様性』

五箇公一著『クワガタムシが語る生物多様性』

創美社/集英社
ISBN978-4-420-31045-1
1,300円(税別)
2010年9月29日発行
205 pp.

目次
プロローグ
第1章 「生物多様性」とは何か
第2章 生物多様性が危ない
第3章 クワガタムシが語る生物多様性
第4章 マルハナバチが語る生物多様性
第5章 ミジンコが語る生物多様性
第6章 ダニが語る生物多様性
第7章 カエルが語る生物多様性
エピローグ

 本書は、表題の「クワガタムシが語る生物多様性」から想像される内容から、良い意味で裏切られた。クワガタムシについて書かれているのは確かだが、書かれている内容はクワガタムシに限らず、幅広く生物多様性全般についてのものであるからだ。「生物多様性」という言葉を前面に出しても、昨今は「生物多様性」という言葉を冠した書物がたくさん出版されているので、おそらく売れる本にはならなかったように思える。本書の中でも触れられていたが、何故か日本人(の男)はクワガタムシが好きである。その「クワガタムシ」を前面に出すことで、おそらく本書は他の「生物多様性」を冠した本よりも一般の人向きには売れる本になっているのではないかと想像する。マルハナバチやミジンコやダニやカエルでは一般の人向きには売れないであろう。
 このブログで何度も書いているが、「生物多様性」とはなかなか難しい概念であると思う。一般的に生物多様性とは、「遺伝子の多様性」、「種の多様性」、「生態系の多様性」の三つで説明されることが多い。本書ではさらに、「景観の多様性」を生物多様性に付け加えている。
 本書では他の点でも、良い方に裏切られたと感じられた部分がある。著者の五箇さんは今や売れっ子で、テレビなどにもときどき登場している。五箇さんは、ぼくの大学の出身研究室の後輩であるが、同時に研究室に在籍していた時期は全くないので、五箇さんのことをよく知らず、学会で姿を見て講演などを聴いて、五箇さんのことをいろいろ感じているだけである。それから想像される五箇さんは、黒色を基調とした独特の攻撃的なコスチュームで、やや早口の流れるような話し振りで、ややテンションが高い、というものであったが、本書はそれからは想像しづらいような、落ち着いた書きぶりだと感じられた。
 もう一つ感心というか安心させられたのは、生物多様性の研究者として第一線で活躍しているにもかかわらず、「生物多様性を守るということはどういうことなのか」ということに、常に疑問を持ちながら仕事をしているということが感じられたことである。本書からは、五箇さんが生物多様性保護原理主義者ではないことが伺われる。
 本書は、「生物多様性とは何であるか」、「生物多様性を守るといはどういうことか」、「生物多様性を守るには何が必要か」を一般の人が知ることができるように(とは言っても、「生物多様性」を簡単に理解できるものではないと思うが)、これまでに五箇さんが研究対象としてきたクワガタムシ、マルハナバチ、ミジンコ、ダニ、カエルを題材として噛み砕いた書き方がなされており、「生物多様性」の一般向きの入門書としてお勧めできるのではないかと思う。「生物多様性って何?」と感じておられる方にはぜひお勧めしたい本である。仕事で多少ともなり「生物多様性」と関わっているぼくにとっても、いろいろと勉強になるところが多かった。

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