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2010年11月 7日 (日)

加藤真著『日本の渚』

加藤真著『日本の渚−失われゆく海辺の自然−』

岩波新書 赤版613
ISBN4-00-430613-2
740円+税
1999年4月20日発行
220 pp.

目次
序 海やまのあいだ
1 河口−川と海が出会う場所
2 干潟−満ち引きする大地
3 藻場−海の中の草原
4 砂浜−波が寄せる岸辺
5 サンゴ礁−光合成共生の海
6 ヒルギ林−海に浮かぶ森
7 渚の保護のために
主要参考文献
あとがき

 著者の加藤真氏は、ぼくの大学院時代の同じ研究室の2年先輩だが、ぼくが就職してから25年ほどは全くお会いすることがなく、今年の3月に「しぜん文化祭inみえ」での講演をされたときに、本当に久しぶりにお会いした。実を言えば、この本を出版されていることも知らなかった。最近になって加藤氏は「生命は細部に宿りたまう」(岩波書店)という本を上梓されたのを知り、それを図書館にリクエストしたついでに図書館で蔵書を検索してやっと発見したという次第である。開架には置かれていなくて、書庫にしまい込まれていたので目につかなかった可能性が高い。それを書庫から出してきてもらって読んだ。
 渚は海と陸の境界であり、この世界には広い海と広い陸があることから想像するほどには、かなり限られた場所にしか存在していない。しかも、日本では手が入れられそうな場所にはほとんど手が入っていて、人が容易に近づける天然の渚は、ごくわずかしか残されていないという実態にある、というのがまず驚かされた点である。
 渚に棲む生物は、環境浄化など、さまざまな機能をもっているが、環境が改変された影響で、自然浄化機能が瀕死の状態にあるという実態が、万葉集などの古典も引用しながら、格調高く美しい文章で綴られている。
 本書を読めば、渚の生物のはたらきを容易に理解することができ、自然は見事に造られていると感心せざるをえないが、各章の最後には「このような環境はほとんど残されていない」というような文章で締めくくられていて、心が痛む。
 サンゴ礁とヒルギ林は、石垣島に住んでいたときには、比較的身近な存在であったが、その機能を十分に理解しないままに見ていた。本書が出版されたのは1999年であり、ぼくが石垣島に住み始めて2年と少し経った頃のことである。本書の出版を知っていれば、石垣島に住んでいたときに、サンゴ礁とヒルギ林をもっと違った視点で見ることができたと思うと、本書を読むのが遅すぎたことが本当に悔やまれてならない。
 生物多様性の保全に関しても、押し付けがましくなく、格調高く美しい文章で綴られていて、素直に読むことができる。もう出版されて10年以上経っているが、生物多様性の保全の意味を理解するために、本書は非常に有効である、というどころか、変な教科書的な本よりもずっと良書だと思われる。生物多様性保全の活動家の方、特に「○○の保全」などという看板を掲げて原理主義的な考え方に基づいて活動されている方にも、素直な気持ちで読んでいただき、生物多様性を保全するとはどういうことか、という本当の意味を理解していただきたい本であると思う。

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