« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

2010年11月

2010年11月28日 (日)

三重昆虫談話会2010年度例会

 三重昆虫談話会2010年度例会に出席するため、四日市の郊外にある三重県環境学習情報センターに出かけた。去年も書いたことだが、毎度のことながら、車で行かなければいけない不便な場所だと思う。希望としては、公共交通機関を使って行ける場所で開催して欲しい。ぼくは車を運転するのが好きではないのだ。
 会長が欠席のため、恒例の会長の挨拶は無かったが、会務報告などのあと、以下の2題の講演があった。
1) オオキベリアオゴミムシの生活史について(河野勝行)
2) 伊豆大島の直翅目(河北均)
 最初の講演は自分の講演である。9月の末頃、事務局のNさんから「何か講演して欲しい」と依頼されたのだが、ぼくは三重県ではほとんど昆虫採集らしい昆虫採集をしていないので、三重県の昆虫に関するネタもなく、何を話したらいいのか困ってしまったので、ぼくがこれまでに学会などで講演したリストを示して、結局この話題にした。今年の2月に三重大学で開催された昆虫学会の支部会での講演と同じ内容である。もっとも、支部会の講演では持ち時間が15分か20分しかなかったので、講演スライドには写真をたくさん付け加え、長い時間しゃべることができるようにした。
 オオキベリアオゴミムシの幼虫がカエルに食いついて、カエルを食べることはよく知られていることだと思うが、実際に幼虫を飼育したことがある人は少ないと思うので、それなりにオリジナリティがある話をすることができたのではないかと思っている。しかし、断片的な観察と、簡単な飼育実験しかしていないので、オオキベリアオゴミムシの生活史のほんの一面を垣間みたにすぎず、まだわかっていないことはいくらでもある。講演のあと質疑応答があり、冬の「オサ掘り」でもよく採れる、という話を聞く事ができたが、それから想像すると、ぼくが観察場所に使っていた職場の庭は、夏の間だけ、繁殖するために一時的に利用されている場所に過ぎないのではないかと思えた。一年中職場の庭で暮らしているならば、もっと春早くから観察されるようになっても良いはずだが、6月も半ば近くならなければ見られるようにならないのは、やはりどこか他所からやってきていると考える方が妥当性がある。やはり、他の人から意見を聞けることは良いことだと思う。講演を依頼されたときにはあまり気が進まなかったのだが、話をした意義はあったと思う。
 次の講演は伊豆半島の直翅目に関するもので、2年間に3回ほど伊豆大島に渡って採集した記録のまとめである。河北さんの話によれば、河北さんの調査によって、伊豆大島でこれまで記録がなかった種が非常にたくさん採集されたので、これまでいかに伊豆大島で昆虫相の調査が行われていなかったかを示す結果となっているということである。パワーポイントの調子がおかしく、写真が見られなかったのが残念であった。
 講演は4時前には終わってしまったが、5時まで会場が借りてあるということなので、主にドクトルふんふんさん(もちろんハンドル)と虫談義をした。毎月のサロンでは会えない方なので、いろいろと話ができて有意義だった。
 会がお開きになったあとだが、相変わらず体調がイマイチだったので、早く帰った方が良いと思って、懇親会は失礼してしまった。

| | コメント (10) | トラックバック (0)

2010年11月27日 (土)

第14回『田舎の落語会』@ハートフルみくも

 体調がイマイチ良くなかったので、行こうかどうか迷っていたが、気分転換になるのではないかと思って、松阪市(旧三雲町)の「ハートフルみくも」まで30分ほど車を運転して出かけた。

第14回 田舎の落語会
桂 二乗 「阿弥陀池」
桂 団朝 「秘伝書」
桂 米二 「まめだ」
仲入
桂 米二 「口入屋」

 米二さんをナマで見るのは今回で今年3回目。何となく縁がある感じ。二乗さんは久しぶりだが、毎年行われているこの会でこれまで2回見ているので3回目。久しぶりに聴くせいか、二乗さんの成長がわかる。団朝さんは初めてだが、元気がいい。
 「阿弥陀池」は何年か前のこの会で米二さんが演じたし、米二さんの「口入屋」も何年か前のこの会で聴いた。米二さんのネタ帳には書かれているはずだから、別のネタをやって欲しかったな、というのがホンネ。
 会場は広かったが、ほぼ満席。ほとんどがご老人であった。総勢200名ほど入っていたであろうか。当日券でも1000円で聴けるこの落語会は、まだまだ続けて欲しい。

 良い気分転換にはなったが、やはりちょっと疲れた。帰りは道が混雑していて40分ほどかかった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月26日 (金)

石森愛彦の本の仕事展

 石森愛彦さんから展覧会の案内をいただいた。あいにく場所が東京なので、ついでになるような出張もなく、自分では行けそうにないので、このブログで宣伝しておきたい。

Ishimori_y_001
 「近年の出版物のイラストレーション原画を多数展示いたします。」とのことですので、ここに出ているほかにも、おそらく「素数ゼミの謎」、「多賀城 焼けた瓦の謎」などの原画も展示されるものと想像しています。石森さんご本人はあまりお気に入りではないようなので、福岡伸一著『ルリボシカミキリの青』のカバーのルリボシカミキリの原画は無いかも知れません。

石森愛彦の本の仕事展

2010年12月4日(土)〜12月17日(金)
12:00〜19:00(但し月曜日は休廊)
GALLERY POWER SPACE 人形町
〒103-0012
東京都中央区日本橋人形町2-14-2 ビビアン人形町1F
電話 03-3665-2925 http://www.pcs.co.jp/space/index.htm
(株)パワープランナー ギャラリー事務局
Ishimori_y_002

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2010年11月20日 (土)

五箇公一著『クワガタムシが語る生物多様性』

五箇公一著『クワガタムシが語る生物多様性』

創美社/集英社
ISBN978-4-420-31045-1
1,300円(税別)
2010年9月29日発行
205 pp.

目次
プロローグ
第1章 「生物多様性」とは何か
第2章 生物多様性が危ない
第3章 クワガタムシが語る生物多様性
第4章 マルハナバチが語る生物多様性
第5章 ミジンコが語る生物多様性
第6章 ダニが語る生物多様性
第7章 カエルが語る生物多様性
エピローグ

 本書は、表題の「クワガタムシが語る生物多様性」から想像される内容から、良い意味で裏切られた。クワガタムシについて書かれているのは確かだが、書かれている内容はクワガタムシに限らず、幅広く生物多様性全般についてのものであるからだ。「生物多様性」という言葉を前面に出しても、昨今は「生物多様性」という言葉を冠した書物がたくさん出版されているので、おそらく売れる本にはならなかったように思える。本書の中でも触れられていたが、何故か日本人(の男)はクワガタムシが好きである。その「クワガタムシ」を前面に出すことで、おそらく本書は他の「生物多様性」を冠した本よりも一般の人向きには売れる本になっているのではないかと想像する。マルハナバチやミジンコやダニやカエルでは一般の人向きには売れないであろう。
 このブログで何度も書いているが、「生物多様性」とはなかなか難しい概念であると思う。一般的に生物多様性とは、「遺伝子の多様性」、「種の多様性」、「生態系の多様性」の三つで説明されることが多い。本書ではさらに、「景観の多様性」を生物多様性に付け加えている。
 本書では他の点でも、良い方に裏切られたと感じられた部分がある。著者の五箇さんは今や売れっ子で、テレビなどにもときどき登場している。五箇さんは、ぼくの大学の出身研究室の後輩であるが、同時に研究室に在籍していた時期は全くないので、五箇さんのことをよく知らず、学会で姿を見て講演などを聴いて、五箇さんのことをいろいろ感じているだけである。それから想像される五箇さんは、黒色を基調とした独特の攻撃的なコスチュームで、やや早口の流れるような話し振りで、ややテンションが高い、というものであったが、本書はそれからは想像しづらいような、落ち着いた書きぶりだと感じられた。
 もう一つ感心というか安心させられたのは、生物多様性の研究者として第一線で活躍しているにもかかわらず、「生物多様性を守るということはどういうことなのか」ということに、常に疑問を持ちながら仕事をしているということが感じられたことである。本書からは、五箇さんが生物多様性保護原理主義者ではないことが伺われる。
 本書は、「生物多様性とは何であるか」、「生物多様性を守るといはどういうことか」、「生物多様性を守るには何が必要か」を一般の人が知ることができるように(とは言っても、「生物多様性」を簡単に理解できるものではないと思うが)、これまでに五箇さんが研究対象としてきたクワガタムシ、マルハナバチ、ミジンコ、ダニ、カエルを題材として噛み砕いた書き方がなされており、「生物多様性」の一般向きの入門書としてお勧めできるのではないかと思う。「生物多様性って何?」と感じておられる方にはぜひお勧めしたい本である。仕事で多少ともなり「生物多様性」と関わっているぼくにとっても、いろいろと勉強になるところが多かった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

池田清彦著『オスは生きているムダなのか』

池田清彦著『オスは生きているムダなのか』

角川選書 469
ISBN978-4-04-703469-3
1,400円(税別)
2010年9月25日発行
193 pp.

目次
第一章 なぜオスとメスがあるのか
第二章 性の起源と死の起源
第三章 性の進化
第四章 人間の性決定と性にまるわる話
あとがき

 表題だけ見ると福岡伸一著『できそこないの男たち』(2008年10月、光文社新書371)の二番煎じであるかのように思われた。この福岡氏の著書を読んだときには、性の基本はメスであり、SRY遺伝子が働くかどうかでオスになるかどうかが決まる、というように一般的な解釈をしていたが、本書を読めば、それは生物に一般的に共通する性質ではなく、人間の場合だけであることが理解された。福岡氏の著書を読んだときには、半倍数性生物ではSRY遺伝子がないのに半数体はオスになり、倍数体はメスになるのはどういうわけか、と疑問を持ったわけだが(ぼくが読み違いをしていた可能性が高いが)、その疑問は本書を読んで氷解した。
 本書の著者である池田氏は実験生物学者ではないので、本書に書かれていることは基本的には池田氏が他の研究者が書いた論文や著書を読んで勉強したことをまとめたものに過ぎないはずであるが、一般の人が読にやすいようにうまく整理されまとめられていると思う。一流の学者なら(池田氏が一流であるか、ということに対して批判する人も多いと思うが)、さすがに色々と勉強しているものであると感じさせられる。
 池田氏は構造主義生物学を掲げているが、本書を読む限り、池田氏がいつも批判しているネオダーウィニズムを完全に否定しているわけではなさそうに思われた。
 第四章に書かれている人間の性決定に関する話は単純ではなく、いろいろな例外もあり、なかなか難しい話であることがわかった。性同一性障害という現象が存在することが話題になったのは比較的近年のことであると思うが、胎児期において形態的な性が決定する時期と脳の性が決定するする時期が異なり(後者の方が遅い)、そのため、その間で遺伝子の発現に異常があると性同一性障害という現象が現れると解釈できるというのには、なるほど、と思わされた。ぼく自身も、おそらく正常なY染色体とX染色体をもち、正常にSRY遺伝子が発現して、正常に育ってきたと思われるので、幸運だったと思わされる。今の高校の生物の教科書は見たことがないが、さすがにここまで細かく人間の性の決定について書かれているわけではないと思う。
 池田氏は専門外の著書も多く、そのためにいいかげんなことを書いている、としばしば批判されるが、生物とはどのようなものであるかを一般の人(ぼくのような生態学が専門の生物学徒を含め)に対して上手に説明しており、福岡伸一氏と同じように、最先端の生物学のインタープリターとして貴重な人だと思われる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月13日 (土)

加藤真著『生命は細部に宿りたまう』

加藤真著『生命は細部に宿りたまう ミクロハビタットの小宇宙』

岩波書店
ISBN978-4-00-006276
1800円+税
2010年10月7日発行
132 pp.

目次
はじめに
1 入り江の波打ち際 オオカミガイ、ドロアワモチ、ウミアメンボ
2 波くだける礫浜 アオガイ、クロヅケガイ、ミミズハゼ
3 潮流がつくる砂堆 イカナゴ、ナメクジウオ、アサヒガニ
4 原野の自然と風光 ヒゴタイ、ササナバ、オキナグサ
5 平野の氾濫源 フジバカマ、カワネジガイ、カタヤマガイ
6 水田の生態系 デンジソウ、ミズアオイ、メダカ
7 森の聖域 ヒナノシャクジョウ、タヌキノショクダイ、オニノヤガラ
8 岩清水が伝う湿崖 ジョウロウホトトギス、シブキツボ、ツブミズムシ
9 せせらぎの国 アユ、ニンギョウトビケラ、カワラバッタ
おわりに
主要参考文献

 先に読んだ加藤真氏の「日本の渚」と同様に、格調高い美しいことばで自然の姿について語られている。
 「日本の渚」では、海岸線に限られて語られていたが、本書では、日本の生態系の様々なミクロハビタットに棲む生物について語られている。それにしても、加藤真氏は博識である。しかも、その博識さを押し付けがましくなく、控えめに、しかし力強い言葉をもって自然について語っている。
 日本の自然は急速な勢いで失われつつあるのは、加藤真氏が語るまでもなくぼく自身が感じているが、加藤真氏の文章によって、いまある自然を壊すこと無く残して行こうという気持ちに素直になることができるし、我々がどうすべきかをじっくり考える機会を与えてくれるような気がする。
 前書「日本の渚」と同様に、原理主義的な自然保護主義者にも読んでもらいたい本である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月12日 (金)

第20回天敵利用研究会@熊谷市文化センター

 昨日の午後から今日の昼過ぎまで熊谷市文化センターで開催された第20回天敵利用研究会に参加した。4題のテーマ講演と23題の一般講演があった。
 テーマ講演第一部は「カブリダニの利用:その現状と将来性」、第二部は「植生を活用した害虫管理」。ぼく自身は施設野菜関係の仕事をしていないので、カブリダニには縁が無く、いまひとつピンとこない。それに対して、生物多様性関連の仕事をしているので、植生管理は興味あるところである。生物多様性を高めることが農業生産にとって良いことなのかそうではないのか、未だによくわからないが、だからこそ研究に値することなのだろうと思う。
 一般講演は施設栽培での天敵利用に関連した事例報告のようなものが多かったが、やはりぼくにとっては実体験が無いだけに、ピンとこないものが多かった。
 一番「もっともだ」とうなずきながら話を聞くことができたのは、広瀬義躬先生の「わが国における害虫の天敵としての寄生蜂の同定体制−現状と問題点」。就職の難しさもあり、分類学を志す学生が少なく、分類学者の再生産が行われていない現状は危機的であると思える。天敵を利用しようと思っても、その天敵が何者であるかがわからないのでは話にならない。
 天敵利用研究会の参加者は150名ほどで、決して多いわけではない。しかし、会場は一か所のみである。例えば、日本応用動物昆虫学会や日本昆虫学会の大会の参加者は遥かに多いわけだが、たくさんの会場に分かれているので、講演をしても聴いてもらえるのは多くてもせいぜい100名程度である。だから、自分の話をたくさんの人に聴いてもらおうと思った場合、この天敵利用研究会という場は悪い場ではないように思えてきた。もっとも、天敵に関係のある話でなければいけないわけだが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 8日 (月)

トラップに落ち込んだアカハライモリ

20101108blog1 職場の庭のピットフォールトラップを見回っていたら、3個目のトラップを見たときに驚いた。何とアカハライモリが入っていたのだ。
 アカハライモリは基本的には水中で生活しているはずなので、まさかこんなトラップに入るとは思わなかった。このトラップから20mぐらい離れたところには刈り取りが終わった水田があるが、今は既に水はない。その先、100m以上離れたところには水路があるので、そこには水があるかも知れない。
 それはともかく、こんなところまでアカハライモリが歩いて来るとは全くの想定外だったが、ひょっとしたら冬眠の場所を求めて陸地を彷徨っていたのかも知れない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 7日 (日)

鳥居さんと一緒にキノコ観察

 前から約束していたとおり、鳥居さんと一緒にキノコ観察に出かけた。三男坊も一緒である。目指した場所は旧津市と旧久居市の境界付近にある、ぼくにとっての馴染みのフィールド。雲が多く、撮影するにはイマイチの天気だったが、風もなく気持ちはよかった。
 ぼくは場所の案内役で、鳥居さんがぼくにとってのキノコの先生である。自分独りで(あるいは家族と一緒に)歩いていても、キノコの名前がほとんどわからないので、見過ごしてしまうキノコも多いのだが、さすがにキノコに慣れている人と一緒に歩くと、ぼくが気付かないキノコも見つけていただける。この前の下見とほとんど同じコースを歩いたが、この前の3倍ぐらいの時間がかかった。やはりこれぐらいの時間をかけないといけないようだ。
 以下に掲げた写真は今日見たものの一部。スッポンタケも1本だけだったが子実体が伸びているのを見つけた。
 さいごになったが、いろいろ教えていただいた鳥居さんに感謝申し上げたい。
20101107blog1
20101107blog2
20101107blog3
20101107blog4
20101107blog5
20101107blog6
20101107blog7
20101107blog8
20101107blog9
20101107blog10
20101107blog11

| | コメント (4) | トラックバック (0)

加藤真著『日本の渚』

加藤真著『日本の渚−失われゆく海辺の自然−』

岩波新書 赤版613
ISBN4-00-430613-2
740円+税
1999年4月20日発行
220 pp.

目次
序 海やまのあいだ
1 河口−川と海が出会う場所
2 干潟−満ち引きする大地
3 藻場−海の中の草原
4 砂浜−波が寄せる岸辺
5 サンゴ礁−光合成共生の海
6 ヒルギ林−海に浮かぶ森
7 渚の保護のために
主要参考文献
あとがき

 著者の加藤真氏は、ぼくの大学院時代の同じ研究室の2年先輩だが、ぼくが就職してから25年ほどは全くお会いすることがなく、今年の3月に「しぜん文化祭inみえ」での講演をされたときに、本当に久しぶりにお会いした。実を言えば、この本を出版されていることも知らなかった。最近になって加藤氏は「生命は細部に宿りたまう」(岩波書店)という本を上梓されたのを知り、それを図書館にリクエストしたついでに図書館で蔵書を検索してやっと発見したという次第である。開架には置かれていなくて、書庫にしまい込まれていたので目につかなかった可能性が高い。それを書庫から出してきてもらって読んだ。
 渚は海と陸の境界であり、この世界には広い海と広い陸があることから想像するほどには、かなり限られた場所にしか存在していない。しかも、日本では手が入れられそうな場所にはほとんど手が入っていて、人が容易に近づける天然の渚は、ごくわずかしか残されていないという実態にある、というのがまず驚かされた点である。
 渚に棲む生物は、環境浄化など、さまざまな機能をもっているが、環境が改変された影響で、自然浄化機能が瀕死の状態にあるという実態が、万葉集などの古典も引用しながら、格調高く美しい文章で綴られている。
 本書を読めば、渚の生物のはたらきを容易に理解することができ、自然は見事に造られていると感心せざるをえないが、各章の最後には「このような環境はほとんど残されていない」というような文章で締めくくられていて、心が痛む。
 サンゴ礁とヒルギ林は、石垣島に住んでいたときには、比較的身近な存在であったが、その機能を十分に理解しないままに見ていた。本書が出版されたのは1999年であり、ぼくが石垣島に住み始めて2年と少し経った頃のことである。本書の出版を知っていれば、石垣島に住んでいたときに、サンゴ礁とヒルギ林をもっと違った視点で見ることができたと思うと、本書を読むのが遅すぎたことが本当に悔やまれてならない。
 生物多様性の保全に関しても、押し付けがましくなく、格調高く美しい文章で綴られていて、素直に読むことができる。もう出版されて10年以上経っているが、生物多様性の保全の意味を理解するために、本書は非常に有効である、というどころか、変な教科書的な本よりもずっと良書だと思われる。生物多様性保全の活動家の方、特に「○○の保全」などという看板を掲げて原理主義的な考え方に基づいて活動されている方にも、素直な気持ちで読んでいただき、生物多様性を保全するとはどういうことか、という本当の意味を理解していただきたい本であると思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 6日 (土)

第154回日本昆虫学会・第91回日本応用動物昆虫学会東海支部合同講演会

第154回日本昆虫学会・第91回日本応用動物昆虫学会東海支部合同講演会が名古屋の金城学院大学で開催された。
20101106blog001
20101106blog002
講演:森勇一氏
演題:先史〜歴史時代の昆虫化石から探る人々の暮らし
コメンテーター:河野勝行氏、山岸健三氏、桐谷圭治氏
20101106blog003
20101106blog004
 昆虫学会と応動昆の東海支部会の講演会としては異色の人選である。これまでは、生きた昆虫を相手にしている研究者による講演ばかりであったが、今回は遺跡から発掘された昆虫を研究されている森勇一氏が講演者である。
 様々な時代の遺跡からは様々な昆虫化石が見つかっている。そこで発見された昆虫から、当時の人々の生活がうかがわれるという話であった。人間の糞尿の処理に関しても、昆虫が何らかの役割を果たしていたはずで、それが昆虫化石にも反映されている、ということである。
 ぼくは全くの専門外ではあったがコメンテーターを依頼されており、事前に森氏の論文をあらかじめ送っておいていただいたのであるが、やはり直前までどのようなコメントをしたら良いのかわからなかった。ちょっと気になっていたのは、中世(鎌倉時代あたり)の遺跡からヒメコガネの化石が多数発見され、異様な塊として発掘されることがあるという話だったので、それはひょっとしたら当時の人間がヒメコガネを食べて、食べられない部分をまとめて捨てたのではないかということを思いついたので、そのようなコメントをした。もちろん、自信があっての話ではないが、昆虫食の文化が当時あった可能性は否定できないと思っている。
 次に、今では北海道には分布していないアカスジキンカメムシの化石が北海道でも発見されるのに、オオキンカメムシの化石は発見されないのが不思議である、という話があったが、これについては、オオキンカメムシが日本在来ではないアブラギリを寄主植物としており、アブラギリの栽培され始めた時代が新しいので古い時代の古墳からは発見されないのではないか、とコメントした。
 山岸氏からは、地質学についても深く突っ込んだコメントがされたが(ぼくは十分に理解できなかった)、あとからうかがったら、中学生時代には地学部に入っていて、化石を掘っていた経験があるとのことであった。
 桐谷氏からは、深い昆虫学の経験と知識をもとづいて、森氏の研究について(あらかじめ送られていた論文を読んだ上で)幅広いコメントをいただいた。
 講演会のあとは懇親会。人数が少なかったので、懇親会でも濃い議論ができたように思う。今回の講演とは全く関係無いが、最近、保湿性に着目されて(冬に乾燥しても土が風に吹き飛ばされないなど)学校の校庭に蛇紋岩を砕いたものが撒かれているそうであるが、蛇紋岩は超塩基性で毒性もあるため、特殊な植物(例えばツゲ)しか生育できず、木々が枯れている事例が多発しているそうである。地質に詳しい人からは、普段は聞けないような話が聞けて面白いと思った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

八重山手帳の調達@名古屋

 COP10に際して名古屋に出かけた先月16日に入手できなかった「八重山手帳」は11月1日に発売されているはずなので、学会の支部会の講演会がある今日、再び調達しようと大須の「沖縄宝島にらい」に乗り込んだ。ここに行くために、朝はちょっと早目に出かけ、交通費を少し浮かすために、近鉄の急行に乗り、近鉄蟹江で普通に乗り換えて近鉄八田で降りて、そこから「ドニチエコきっぷ」を使って地下鉄に乗り込んだ。
20101106blog1 ところが、「にらい」には「八重山手帳」は見つからなかった。仕方がないので、A&Wのルートビアと「ちょっちゅね」を調達。
20101106blog2
20101106blog3 そこでふと思いついたのは、栄の中日ビルの地下にある「わしたショップ」。「ドニチエコきっぷ」の強みで、地下鉄で余計な出費をせずに栄まで移動できる。
20101106blog4 ここで探したらすぐに見つかった「八重山手帳」。小さい方の「アンガマ版」を購入。999円なり。
20101106blog5 沖縄の雰囲気に触れてしまったので、昼食はやはり沖縄のものが食べたくなった。ここでまた地下鉄で上前津まで引き返し、ふたたび「沖縄宝島にらい」へ戻り、「ソーキそば」を注文。待っている間に渡された番号札がこれ。かわいいシーサーである。なかなか気が利いている。
20101106blog6 出てきた「ソーキそば」はこれ。ちょっとソーキが小さいと思った。
20101106blog7 しかし、麺もスープも満足できるものだった。スープまで完食。
20101106blog8
 沖縄の空気に満足して「沖縄宝島にらい」を後にし、上前津から大曽根まで地下鉄に乗り、さらに1時間に1本しかない市バスで講演会の会場の金城学院大学のある大森へ。10分ほど遅れて到着したため、会場には講演開始ギリギリの時間になってしまった。
 講演会のことは別の記事として書くことにして、講演会のあとのこと。帰りはバスの時間が合わなかったので、名鉄瀬戸線の大森・金城学院前駅から大曽根まで名鉄に乗り、そこで大曽根から地下鉄で、朝地下鉄に乗った八田まで向かった。八田で近鉄に乗り換えたが、電車がちょうどホームに入っていてラッキーと思ったのもの束の間、出発を待っている間に3本の列車に抜かれ、さらに急行に乗り換えた近鉄蟹江でも待ち時間がたくさんあり、自宅に帰り着いたのは午後9時頃になってしまった。素直に名古屋から近鉄に乗っていれば、20分早く帰り着いていたはず。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 4日 (木)

ゴミグモがたくさん

 本来ならば水曜日が調査の日なのだが、昨日は休日だったので、恒例の調査は今日の木曜日になった。
 朝は気温が下がったが、晴れて風も弱く、昼間は暖かさを感じるほどになった。
 3か所目の調査場所で調査を終えて小用を足していたところ、目の前のイヌツゲの生垣にゴミグモの巣がたくさんあるのに気付いた。ゴミグモは巣網に付いたゴミにうまく隠蔽擬態していて、目を凝らしても見つけるのは意外に難しかった。眼鏡の度が合っていないせいもあるかも知れない。
 ゴミグモは普通種だとは思うのだが、今日はつい気になってしまった。
20101104blog1

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 3日 (水)

キノコ観察の下見

 今度の日曜日、このブログの読者の鳥居さんをスッポンタケの発生地にご案内することになっているので、今日は午後から下見に出かけた。
 例年だったら、そろそろスッポンタケが出てくる季節なのだが、毎年発生しているポイントには全く発生が見られなかった。せっかく出かけてきたので、色々探してみた。
 昆虫で良くみられたのはクロコノマチョウ。こちらが歩いていくと、道端から飛び出してくる。こちらが気付く前に飛び出すので、撮影は難しかった。
20101103blog1
 たまたま見つけたセンチコガネ。見つけようと思っても、トラップを使わなければなかなか見つからないので、見つけたのはラッキー。
20101103blog2
 いつもとは違う竹林の中で見つけたスッポンタケの可能性がある幼菌。竹林と言えばキヌガサタケなので、季節外れのキヌガサタケの可能性がなきしにもあらず。
20101103blog3
 クヌギやコナラ(写真はクヌギ)の根元に生えていた巨大なキノコ。もう腐りかけていて、本来の形はわからない。一週間早く来ていれば、きれいなのが見られたかも。
20101103blog4
 その他にも色々キノコを見たが、名前はわからない。

スマートなキノコ(テングタケの仲間か?)
20101103blog5
ずんぐりした黄色っぽいキノコ
20101103blog6
緑色のキノコ
20101103blog7
小さな赤いキノコ
20101103blog8

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2010年10月の石垣島の大雨の被害

 奄美大島の記録的な大雨は大々的に報道されていたが、石垣島でも大雨が降っており、人的な被害は出ていないものの、相当な規模で山が崩れているらしい。これは、こちらではほとんど報道されていなかった。
 八重山毎日新聞の報道はこちら
 石垣島地方気象台の2010年10月の観測データはこちら10月1か月の間で933.5mmの降水量というのも相当なものである。
 その影響で、於茂登岳山頂近くにある石垣島気象レーダーは、かなり長期間にわたって観測できない状態になっていたが、現在は復帰したようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 2日 (火)

久しぶりの論文の査読・・・今度の査読は楽だった

 今日は代休だったが、こなさなければいけない仕事があったので出勤した。と同時に、昨日打診されていた査読論文が届いたので、それも片付けることにした。今朝出勤するときには、やらなければいけないことだけを片付けて、お昼ご飯を食べたら帰ろうかと思っていたのだが、結局午後からは査読の作業をすることになった。
 学会誌の論文の査読は面倒だと思うことも多いが、自分が投稿したときにも査読を受けるわけだから、何か特別な理由が無ければ断ることはいけないことだと思うし、査読することによって自分自身の勉強になることも多いと思う。
 あまり詳しく書いてしまうと、誰の論文かわかってしまうかも知れないので、詳しくは書かないが、完成度が高く、査読する方にとっても勉強になったし、作業そのものも楽だった。このような論文の査読なら、よほど忙しくなければ何度やっても良いと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 1日 (月)

2010年も今日から11月・・・山茶花も花盛り

20101101blog1 2010年も今日から11月になった。明け方まで雨が降っていたらしいが、起きた時には雨は上がっており、陽が射していた。しかし、西寄りの風がやや強く、寒く感じられる。
 個体によってばらつきはあるのだが、もうかなり前から職場の庭のサザンカが咲き始めていた。もうだいたい咲きそろい、個体によっては落花も始まっている。
 冬が近づきつつある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »