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2010年9月

2010年9月29日 (水)

別の場所でもマメハンミョウ

 先週の調査のとき、マメハンミョウの大発生に出くわしたことをこのブログに書いたら、M大学のSさんから「研究の材料として使いたいから送って欲しい」というメールが届いた。
 先週たくさん発生していたからと言って、今日もまだいるという保証はないと思ったのだが、一応マメハンミョウを採集するための準備をして調査に出かけた。案の定、目につくマメハンミョウの個体数は明らかに少なく、十分な個体数を確保できないと思われた。仕方がないので、Iさんと一緒に目についたものだけを採集した。20数個体程度か。先週だったら3桁は採集できたと思う。
 次の調査場所に行き、調査を終えて職場に戻ろうとしたところ、キャベツ畑のすぐ横の斜面に生える草にマメハンミョウがいるのが目についた。マメハンミョウは1頭だけでいることは滅多にないので、周りを探したところ、思った通り何頭ものマメハンミョウが見つかった。ここでも10頭以上採集することができた。
 リクエストの個体数には少し足りない感じだが、まあ仕方がない。
 しかし、全然別の場所でマメハンミョウが見つかったということは、探せばまだまだ見つかりそうな予感がある。問題は、その場所を探す時間が無いことだ。
 津市界隈でマメハンミョウを採りたい人は、その目で探せばきっと見つかるはず。自分でがんばってください。

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2010年9月27日 (月)

小長谷有紀・山極寿一編『日高敏隆の口説き文句』

小長谷有紀・山極寿一編『日高敏隆の口説き文句』

岩波書店
ISBN978-4-00-024504-3
2,000円+税
2010年7月28日発行
194 pp.

目次
まえがき対談 小長谷有紀×山極寿一
I
 フランスにおける日高行動学 岸田 秀
 マウンティング 内田春菊
 どうせ動物行動学で全部説明されている 山下洋輔
 氏の語学力はつとに有名である 羽田節子
 「拝啓リュリ様」 安野光雅
 日高敏隆の櫛と鏡 赤瀬川原平
II
 映画『もんしろちょう』の日高敏隆 羽田澄子
 師に学ぶ 保賀昭雄
 人間という生き物を知る 桃木暁子
 昆虫写真家の誕生 栗林 慧
 雑誌「アニマ」の時代 澤近十九一
 「未来可能性」という口説き 嘉田由紀子
III
 日高先生のお洒落 今江祥智
 「文化生命科学者」との出会いから 堀場雅夫
 チョウはどこまでカミか 中西 進
 きみは今,椿なの.僕は今,人間だよ. 梶田真章
 人類はどこへ行くのか 松井孝典
 「生のかたち」への視点 原 ひろ子
IV
 すがすがしい口説き方—『動物と人間の世界認識—イリュージョンなしに世界は見えない』読み直し 坂田 明
 動物行動学者の喜び—『チョウはなぜ飛ぶか』読み直し 今森光彦
 美しい批判—『エソロジーはどういう学問か』読み直し 亀崎直樹
 ネコの世界でももてたかな—『ネコたちをめぐる世界』読み直し 山岡亮平
 日高さんに学ぶ—『ぼくにとっての学校—教育という幻想』読み直し 尾池和夫
 感覚で学べ—『大学は何をするところか』読み直し 養老孟司
 地球環境学という口説き—『子どもたちに語るこれからの地球』読み直し 湯本貴和
 日高さんの自由さと人間論—『人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論』読み直し 黒田末寿
 日高先生のかたり—『プログラムとしての老い』読み直し 松林公蔵
あとがき対談 山極寿一×小長谷有紀

 去年の11月に亡くなった日高敏隆先生ご本人や日高敏隆先生の著書について、様々な人が語っている。
 ぼくは中学生だった頃、『昆虫という世界』(朝日新聞社)を読んで日高先生に魅せられたひとりだが、本書に文章を寄せている皆さんも、様々な形で日高先生に魅せられた人たちだと思う。ひとそれぞれに日高先生との接し方が違い、ぼくと同じように感じた人がいる一方で、ぼくとは全く違った繋がり方をしている人があったりと、ぼくの知らない日高先生を知ることができて面白い。
 ぼくが日高先生のお顔を初めて拝見したのは、確か学部の学生だった頃だったが、ちょうどその頃、日高先生が中心になって設立された日本動物行動学会の最初の大会が開催され、ぼく自身も大学院への進学が決まった頃で、その後学部は違ったものの、日高先生のお顔を拝見する機会が多くなった。日高先生はお洒落で格好良く、先生の回りには必ず何人かの女性がいたことは強く印象づけられた。この点については、本書でも複数の方から語られている。
 日高先生の学者としての顔ではなく、生い立ちについて知ったのは『ぼくにとっての学校—教育という幻想』を読んだときである。この本については、ぼくが学位を取って学位記を手渡していただいたときの京都大学総長の尾池和夫先生が語っている。尾池和夫先生が理学部の教授になられたときの学部長が日高先生であり、学部長として、またその後の滋賀県立大学学長、総合地球環境学研究所所長としても優秀な手腕を発揮されたことが語られている。
 ぼくが直接日高先生とじっくりお話することができたのは、ぼくが石垣島に住んでいたときのことで、ちょうどその頃に日高先生は『動物と人間の世界認識—イリュージョンなしに世界は見えない』を出版されており、「イリュージョン」をキーワードにいろいろお話をうかがうことができた。この本については坂田明さんが語っているのだが、生物学とはあまり縁がなさそうな坂田さんが一応生物学を学んだぼく以上に深く「イリュージョン」を理解されていると思われるのは、専門外の人を惹き付ける魅力のある日高先生の文章の力であるように思われる。
 それにしても本書を読むと、日高敏隆という人間が類い稀なる才能を持った人物であったことが理解される。これほど自由な発想ができる人間が、少なくとも今の日本にはいないように思われるし、今後もなかなか出てこないのではないかと思う。第二の日高敏隆が現れることを心から希望する。
 本書は日高ファンなら文句無しに読むべき本であると思うし(なんていう事を書かなくても、読んでいるだろうが)、そうでない人が読んでも面白いだろうと思う。

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2010年9月24日 (金)

200,000アクセスお礼

 今日ぐらいに越えるだろうと思っていたが、さきほど午後7時前ぐらいにアクセスカウンターが200,000を越えた。2006年7月2日に書き始めて4年3か月弱である。
 ときには物議を醸すようなことも書いたが、日々の何と言うことはない事を書き続けてきた。そんなブログにお付き合いいただいた読者の皆様には感謝したい。これからもご愛顧を。

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停電があったとは知らなかった

 今日は代休なので出勤しなくても良かったのだが、家に居ても仕方が無いので、いつもよりちょっと遅めに出勤した。普段使用している実験室に入ってすぐ、インキュベーターや恒温室の温度が異常であることに気づいた。
 昨日の朝、雷が鳴ってかなり強い雨が降ったのだが、どうやらその時に停電があったらしい。職場から9kmほど離れた我が家では全く停電しなかったので、全く予想外の事態だった。
 ぼくが使用しているインキュベーターや恒温室は、停電が復旧しても自動的には完全に復旧せず、照明や送風機の電源は入るのだが、冷凍機の電源が入らないのだ。だから、温度が徐々に上昇してしまうことになる。
 ということで、今日出勤したから気づいたのだが、今日出勤しなかったら月曜日まで(月曜日も代休なのだが)このような状態になっていたわけで、かなりまずいことになっていたと思う。
 冷凍機の電源が入らないのは、何らかの安全上の配慮なのだろうと想像するが、それだったらいっそのこと、全く電源が入らない方が、中に入れてある材料にとっては都合がいいことが多いのだが・・・

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2010年9月23日 (木)

福岡伸一対談集『エッジエフェクト』

福岡伸一対談集『エッジエフェクト 界面作用』

朝日新聞出版
ISBN978-4-02-250761-7
1,200円+税
2010年7月30日発行
210 pp.

目次
エッジエフェクト−新しい生命は、界面に立ち上がる−
桐野夏生 欠落したオスと、自己完結するメス
柄谷行人 科学の限界
森村泰昌 生命現象における「美」
小泉今日子 生命とは、流れているもの
鈴木光司 細胞の破壊と再構築
梅原猛 科学と哲学の融合
あとがき
著者、自著を語る。

 分子生物学者・福岡伸一氏の対談集である。学会に向かう列車の中で読んだ。比較的気楽に読めそうな本だったので、列車の中で読むにはちょうど良かった。
 ぼくが知っている対談者の名前は小泉今日子と梅原猛だけ。アイドルとしてしか知らなかった小泉今日子が福岡伸一氏と対談するのは、読むまではいかにも場違いな感じがしていたのだが、小泉今日子がいろいろな文章を書いているということを知り、それなりに納得した。
  桐野夏生氏は作家、柄谷行人氏は哲学者、森村泰昌氏は美術家、小泉今日子氏は歌手であり俳優、鈴木光司氏は作家、梅原猛氏は哲学者である。
 分子生物学者である福岡氏が、このように色々な分野の人と対談できるというのは、福岡氏の守備範囲の幅広さを反映しているものだと思う。対談の内容は、これまでの福岡氏の著書に書かれている主張に沿ったもので、とくに目新しい話があったわけではないが、異分野の人との対談から、福岡氏自身、また何か得たものがあったのではないだろうか。

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天候急変、一気に涼しくなる

 昨日の夜は蒸し暑くて寝苦しかった。昨日、「早く涼しくならないものか」と書いたばかりだが、今日は明け方から雨が降り、午前中に一旦雨が上がったあと、急に涼しくなった。
 昨日の日中の最高気温は35℃だったのに、今日の日中は22℃前後であった。さすがに10℃以上の気温の差は体に堪える。
 急に鍋料理が恋しくなった。

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2010年9月22日 (水)

マメハンミョウ大発生

20100922blog2 今日は恒例の野外調査の日だった。3番目の調査地に着いたとき、Iさんが「変な虫がいる」というので見てみたら、ダイズの葉にマメハンミョウが付いていた。ハンミョウという名前は付いていてもハンミョウの仲間ではなく、ツチハンミョウの仲間である。じっと見ていると、そこらじゅうにたくさんいた。大発生に近い状態である。有機栽培なので農薬を使うわけにはいかず、少々困った問題である。すぐ隣の田圃は、今年は休耕で雑草が生えていたが、そのせいでイナゴの卵が破壊されずに済み、その卵を幼虫が食べるマメハンミョウが増えたのであろうか?

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磁器婚式

 20年前の今日、岩手県盛岡市のカトリック志家教会で結婚式を挙げた。その日の盛岡は、朝には露が降りるほど気温が下がる季節になっていた。それから3人の息子に恵まれ、3回の転勤があったが、何とか健康で20年目を迎えることができた。結婚20年目は磁器婚式とか陶器婚式とか言うらしい。まあ、とにかくめでたい。
 今日は妻の手料理で家族5人揃って夕食をとることができた。ロボコンで忙しい長男は、たまたま試験期間中なので、最近は5人揃って夕食をとる機会があまり無かったのだが、こういう日にちょうど試験だというのは運が良い。普段は滅多にアルコールを飲まないので、去年我が家にホームステイしていたドイツ人留学生のアレクス君から贈られたドイツワインも、今日やっとのことで開けることができた(空けたわけではない)。
 今日の津市の最高気温は35℃で真夏日だった。早く涼しくなって欲しいものだ。
20100922blog1

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2010年9月21日 (火)

日本昆虫学会第70回大会・帰路(2010年9月21日)

 朝6時に起床して朝食。7時ぐらいにはチェックアウト。外は雨降り。だが、傘が無くてもすぐ近くの駅までは問題なし。しかし、睡眠不足で瞼が重い。
20100921blog1 駅に着くと、青森行きの寝台特急「あけぼの」が止まっていた。本来なら見られないはずの列車である。理由はわからないが、相当遅れているらしい。
 7:15発の酒田行きの普通列車で余目へ。ここからは陸羽西線。
20100921blog2 ローカル線の旅である。列車に乗り込んだら、「あけぼの」がやってきた。そのあと、定刻より10分ほど遅れて、鶴岡を7:38に出発する予定だった普通列車がやってきた。それを待ってから陸羽西線の新庄行きの列車は出発。陸羽西線は最上川に沿って通っているので「最上川ライン」とも呼ばれている。
20100921blog3 ワンマン列車の運賃表を見たら、酒田から新庄を通り越して陸羽東線の小牛田までの駅名が記されている。と思ったら、新庄に到着する直前のこと、「この列車は折り返し小牛田行きになります」とのアナウンス。
20100921blog4 新庄からは山形新幹線。新型の車輌である。新庄は始発なので、自由席でも余裕で着席。途中、米沢を出てから、車内販売で「峠の力餅」をゲット。
20100921blog5_2 ここまでの間に、本を読もうかと思っていたのだが、瞼が重く、数ページ読んだのみ。このあとは、ただひたすらうたた寝をする。
 上野駅で降りて、駅の構内でちょっと遅めの昼食。腹は満ちたがやはり疲れている。新庄までは涼しかったが、東京は蒸し暑い。東海道新幹線の中でも、快速みえの中でもうたた寝状態。津で降りたら、さらに蒸し暑い。疲れた。

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2010年9月20日 (月)

日本昆虫学会第70回大会・第3日目(2010年9月20日)

 日本昆虫学会第70回大会も最終日である。今日も午前中は一般講演であるが、午後からは小集会のみである。
 聴く講演はあらかじめ予定していたが、休憩室でお茶を飲んでいたときに、K大学のN先生から「この研究は手間がかかってるええ研究やで」という話を聞いたので、一部予定変更。
 税所康正「セミの交尾生態に関する数理的考察」。この研究については既に税所さんから論文をいただいていたが、数式がたくさん出ており、十分に理解していたとは言えなかった。しかし、今日の講演では、細かい数式は省略され、結論だけがわかりやすく説明されたので、内容がよく理解できたと思った。
 一部予定を変更した講演は、櫻井麗賀「3種のガ成虫にみるスズメによる捕食率の雌雄差」。何かを目的にデータを取るとき、フィールドでの直接の観察をすると面倒な場合は、何らかの操作実験となることが多い。しかし、この研究は、早朝の野外観察をほとんど唯一の手段としてデータが取られていた。実に根気と手間の必要な研究である。3種のガが、どのようにスズメによって捕食され、雌雄でどのような違いが見られたか、ということが野外観察のデータで得られていた。ぼくは頭の中で考えただけの研究より、実際にデータを取ることができるなら、このような直接的なデータの取り方をする方が優れた研究だと思う。
 その次の講演、厚地賢人・中夷勇輝・白拍子亜門・小溝克己・金井賢一「皆既日食でセミ類は鳴きやむか?」は高校生2名による発表であった。喋り方にたどたどしさはあったが、しっかりデータが取られており、立派な内容だった。
 午前中の講演は正午までだと思っていたら、今日は11:15で終了だった。が終わったときには、もう正午だと思っており、空腹感を感じていた。学生ホールで弁当を買い、税所さんと一緒に雑談しながらの食事。
 午後の最初は「熱帯昆虫多様性小集会」に出た。5名の演者から話題提供され、熱帯の面白い昆虫の姿を見ることができたが、討論では、海外での調査の許可に関する手続きが複雑化しており、徐々に調査が難しくなってきているという話がでてきて、なるほど、と思わされた。
 午後の後半は「日本半翅類学会」の小集会に出た。一人一話形式で進められたが、その前に、科博の友国さんから、中国で開催された国際カメムシ学会について紹介された。また、8月20日に宮本正一先生が97歳で亡くなられたことが紹介され、全員で黙祷した。
 夕方からは「日本半翅類学会」の小集会の流れの懇親会。駅の近くの居酒屋へ。キジラミの専門家の宮武先生の乾杯の声で開始。S大学のH先生を中心に大いに盛り上がった。10時半ぐらいにはお開きになったが、一部のメンバーは二次会へ突入する勢いだった。ぼくは明日が早いので、二次会は失礼してホテルに戻った。半翅類学会の懇親会が楽しかったので、疲れも吹っ飛んだような気がするが、実は疲れているんだろうなぁ・・・

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2010年9月19日 (日)

日本昆虫学会第70回大会・第2日目(2010年9月19日)

 今日は自分の発表があるので、多少緊張していた。実際の予行演習はしておらず、イメージトレーニングだけで、12分で話を収められるだろうと、だいたいの見当はついていたのだが。
 自分の発表の前は、それなりに面白そうな発表の会場をまわったが、特に心を撃たれるような発表はなかった。自分の発表は、だいたいの想定通り。やや終盤で時間が足りなくなりそうになったが、まあ何とか喋りたいことは喋ることができたように思える。その後は自分の発表会場の講演を聴いていたが、最後は久保田耕平さんらのタカネルリクワガタの講演を聴くために会場を移った。タカネルリクワガタは最近話題の種である。狭い範囲に分布している種だが、山のピークごとに遺伝的な変異がみられるとのことで興味深かった。
 午後からは会場を「東京第一ホテル」に会場を変えた公開シンポジウム「昆虫から眺めた温暖化と生物多様性」。最近のキーワードである、「温暖化」と「生物多様性」の両方が入っている欲張りなテーマである。講演は以下の5題。
・桐谷圭治「外来種の北進が在来種を絶滅に追いやる:ミナミアオカメムシとアオクサカメムシ」
・湯川淳一「昆虫の出現期と植物の開葉期のずれが生物多様性に及ぼす影響」
・石井実「温暖化と南方系チョウ類の分布拡大」
・沼田英治・森山実「都会のセミの多様性が失われた理由」
・藤崎憲治「温暖化のカスケード効果:シカの増加が昆虫の多様性に及ぼす影響」
 いずれも興味深いテーマである。どの話も、いつかどこかで聴いたことのある話であったが、最後のシカの影響については詳しくは知らなかった。シカは積雪に弱いので温暖化により積雪地帯が縮小し、それによってシカの分布が広がり、その地域の樹林帯の下層植生に影響を与え、それに依存する昆虫が絶滅の危機に瀕している、というストーリーである。
 5題のいずれも、気候変動が生物相に直接的・間接的に様々な影響を与えているという話で、何とかする必要があると思われるのだが、だからどうしたら良いのだ、というところにまでは話が及んでおらず、もう少し踏み込んでも良いのではないかと思った。とは言え、現状をあらためて認識するという点では有意義なシンポジウムではなかったかと思う。
20100919blog1
 シンポジウムのあとは、再び山形大学農学部に会場を移しての小集会。「季節適応談話会」に出席した。ここでは3題の講演。
・遠藤千尋「ケラの翅型二型の地理的変異」
・中尾史郎「温度反応と光周反応からみた植食性アザミウマの越冬と翅型」
・後藤三千代「庄内地方における昆虫の休眠と耐寒性」
 どの演者も話し方にメリハリがなく、どこがポイントなのかわかりづらいのは残念だった。だが、ケラの話は面白いと感じられた。翅型の違いと越冬態が関連しており、2つの異なる生活環をもつ生活史型が存在するのではないか、というような内容だったが、よくよく考えてみると、いまぼくが興味を持っているオオハサミムシの生活史との共通性が見えてきた。生活史のパターンと翅型の問題の両方が同じようにケラの生活史に似ている。オオハサミムシの生活史を解明するにあたり、参考になりそうだと思ったので、演者である遠藤さんには論文の別刷を送ってもらえるようにお願いした。
 小集会のあとは、小集会のメンバーでの二次会が企画されていたが、それには参加せず、同僚らと一緒に別の店に入ったら、大学の先輩のTさんが既にその店におり、一緒に食事をした(飲む人は飲んだ)。その場で、今日のぼくの講演についてコメントをいただいた。自分では大した内容ではないと思っていたが、他の人が無視してしまうようなことをやったのだからオリジナリティはあるんじゃないの、ということで、ちょっとホッとした。ここでは軽く無理無く食事をしてホテルに戻った。

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2010年9月18日 (土)

日本昆虫学会第70回大会・第1日目(2010年9月18日)

20100918blog1 朝起きてホテルの窓から駅の方を見たが、やはり寂しかった。鶴岡市の人口は13万人ほどあるようであるが、面積も広いので、人口密度は低いのかも知れない。
 朝食を摂りに食堂へ行くとぼくの学位論文の主査をしていただいたF先生に出会った。ここには書けない話を色々うかがう。大学の研究室もなかなか難しい局面にあるようである。食事を終え、F先生と一緒に会場の山形大学農学部へ。
20100918blog2 山形大学の鶴岡キャンパスは農学部だけなのでこじんまりとしている。建物は耐震補強工事が終わっているせいか、古さはあまり感じない。かと言って新しいというほどでもないが。
 午前中は一般講演。ハサミムシをやっていることになっている関係上、朝一番の清水将太さんのハサミムシの講演を聴く。卵の構造の話は普段縁がないので、いまひとつポイントがわからない。その次の講演は奥野絵美さんの中世の遺跡から発掘される昆虫の話。11月に開催される昆虫学会東海支部会でこの講演と関連した話題提供がある予定で、そのコメンテーターを依頼されているので、これまで全く縁のない話だったが、予習のために聴く。そのあと、あちこちの講演会場を渡り歩きながら昼までサボらずに講演を聴いたが、大きく心に響くような講演はなかった。村山茂樹さんのベニボタルの飼育の話は面白そうだったが、話の時間配分に問題があり、面白いだろうと思われたところが十分に伝わらなかったように思えた。
 昼食は学生食堂で醤油ラーメン。280円也。夏に岩手大学の学生食堂で食べた220円の醤油ラーメンの方がずっと美味しかった。
 午後は2つあった公開シンポジウムのうち「必要な人に届けたい昆虫の多様性情報」に出た。五箇公一さんの話は機関銃のような喋りで内容も濃かったが、それだけに話題が広く、本当に重要なポイントがいまひとつわからなかった。三浦一芸さんの話は「分子を利用すれば害虫と天敵の同定は簡単」という演題だったが、ご本人が話されたとおり、「簡単ではない」ということを再確認させられたような気がする。そのあとの戸田正憲さんの話と神保宇嗣さんの話を聴いても、分類・同定ができる人材が圧倒的に不足していることが実感されるだけであった。「生物多様性」の重要性が叫ばれながら、その基礎を支える部分に陽が当たらない(予算が回されない=人が育たない)のは今の日本ではどうしようもないことであろうか?
 シンポジウムのあとは学会賞の授与および授賞講演。今年の学会賞は2人とも若い人だった。森山実さんはセミの話。高須賀圭三さんはクモの寄生蜂の話。どちらもしっかりした内容である。昆虫学会の学会賞は論文賞なので、良い論文を書けば誰にでもチャンスはある。ぼくも頑張りたいが、なかなか落ち着いて論文を書く余裕がない。困ったことである。今年の学会賞の2人には、良い就職が巡ってきることを祈りたいと思う。
 その後は総会。滞り無く、予定通りに議事が終了。いざ、懇親会へ。
 懇親会の会場は泊まっているホテルの別フロア。まずは部屋に荷物を置いて会場へいく。会場に入ると既に大会会長の挨拶が始まっていた。なかなかの熱弁である。
20100918blog3 料理も必要にして十分な量。質もまずまず。スイーツもあり、文句はなし。
20100918blog4 昆虫学会初参加のZikadeさんともツーショット。ご本人の了解を得たので、ここに掲載する。
20100918blog5 懇親会では、話をしたい人とはだいたい話ができたよう思う。会場は参加人数相応の広さで狭さを感じる事もなく、まあまあの会場だったと思う。庄内の地酒がたくさん用意されていたが、下戸のぼくにはあまり関係無いことだった。でも、左利きの人には満足できたのではないかと思う。
 懇親会の席では、このブログの読者からいろいろ声をかけていただいた。学会発表のことを取り上げてくれて嬉しかったという、ぼくにとっても嬉しい声もあったが、エイプリルフールの冗談では、「あれはタチが悪かった」というお叱りの言葉もいただいた。でも、面白いネタがあれば、エイプリルフールには、また何か書いてみたい、などというぼくは、やはりタチが悪いのかも。

 懇親会が終わって、そのまま自室へ。明日は自分の発表がある。ちょっとしたミスがあり、初っ端に講演要旨を訂正をしなければいけない。格好悪いなぁ。明日の天気は悪そうである。気温が上がらない可能性もあるので、上着を持参してきて良かったと思う。

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2010年9月17日 (金)

日本昆虫学会第70回大会・前日(2010年9月17日)

 山形大学農学部で開催される「日本昆虫学会第70回大会」に参加するために鶴岡に来た。今朝8:23分津駅発の「快速みえ2号」に乗り、最後は「いなほ9号」に乗って19:24に鶴岡駅に着いた。約11時間の旅である。「快速みえ」は満席で座れなかったのが、ちと辛かった。ちなみに、今回はこんな切符を使ってみた。テツ分が滲みだしている。分類すれば「乗りテツ」かな?
20100917blog1 名古屋からの「しなの7号」は、始発からなので楽勝で着席。車窓からの景色も楽しい。松本を過ぎたあたりの梓川(?)の河川敷は外来種のニセアカシアが繁茂していたが、ぼくにとってはあまり違和感はなかった。聖高原あたりでは、稲刈りが済んだ田圃の隣にソバの花が咲いていたり。姨捨駅付近からの善光寺平の景色も素晴らしい。昼食は途中の長野駅で立ち食いの蕎麦。一旦改札を出たところにある店に入った。長野から直江津までの普通列車も空いていた。車輌も古く、ローカル線の気分が満喫できた。途中、黒姫駅を過ぎたあたりから雨になった。このあたりの川の河川敷にもニセアカシアが目立つ。途中の二本木駅のスイッチバックも味がある。直江津に着く前に雨も上がった。直江津からの「北越5号」の車輌はけっこう古かったが、座席はぼくの体にフィットしていて快適だった。「北越5号」の自由席の乗車率は50%強といったところ。途中でかなり強い雨が降ったが、新潟に着いたときには、やはり止んでいた。新潟では7分の乗り継ぎで「いなほ9号」。もう発車間際だったので、自由席は半分以上埋まっていた。が、楽勝で着席。「北越5号」と「いなほ9号」は同じ形式の車輌だと思うのだが、「北越5号」の方が快適だったように思えたのは気のせいか?それなりに混雑していた「いなほ9号」だったが、村上駅でドッと客が降りたので、一気に空いてしまった。それからは、まさに絵に描いたようなローカル線の特急列車の様相。村上駅を過ぎたら、直流から交流に変わるデッドセクションがあり、20秒ぐらいだったろうか、車輌の照明が消えた。すると外の夜景がよく見えて、なかなか味があった。
 鶴岡駅で「いなほ9号」を下りる前に隣の車輌のお手洗いに行こうとしたら、某ツクバの研究所のM氏とバッタリ会った。氏は指定席車輌に乗っていたらしい。鶴岡駅で降りたら、顔を見たことがあるような人がいっぱい。それぞれ、宿に向かったようだ。それにしても、鶴岡の駅は寂しい。事前に入手した情報に偽りはなかった。
20100917blog2 駅の構内にコンビニエンスストアが1軒あったが、20:15までの営業とのこと。あまりコンビニエントではない。回りを見渡しても、飲食店らしきものがほとんど見つからないので(ミスタードーナツは見えた)、どうなることかと思ったが、駅の建物の中に「日本海庄や」(基本的には酒を飲むような店である)があったので、(下戸ではあるが)仕方がないので入った。でも、海鮮丼はそれなりに美味しかった。1,050円也。
20100917blog3 食事を終えて、無事にホテルにチェックイン。
 今日はたくさん電車に乗ったので、たくさん本を読めた。1冊とちょっとである。その読後感は、日をあらためて書こうと思う。

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2010年9月13日 (月)

まだニイニイゼミが鳴いていた(2010年9月13日)

 今日の午後、所用で郵便局に行こうと思ってバイクを走らせていたら、思いがけなくニイニイゼミの鳴き声を聞いた。場所は地名で言えば、津市安濃町粟加(おうか)。
 もうクマゼミやアブラゼミの鳴き声もほとんど聞こえなくなり、ツクツクボウシの鳴き声が何とか聞ける程度になっていたので、ニイニイゼミの鳴き声が聞こえてきたのには本当に驚いた。

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2010年9月12日 (日)

全日本大判写真連盟第14回写真展@三重県立美術館

 妻に誘われて三重県立美術館の県民ギャラリーで開催されている「全日本大判写真連盟第14回写真展」に出かけた。すべて大判カメラで撮影されたものばかりである。ほとんどが風景写真であったが、大きく引き伸ばされた写真には立体感や臨場感が感じられた。
 大判写真はカメラは大きなフィルムを使うカメラであるから、カメラ自体も大きくなり、手軽に撮影できるようなものではない。それに、フィルム自体も大きいので、フィルムにもカネがかかる。だから、撮影も慎重になるし、それだけ時間がかかることになる。だから、贅沢な趣味だと思う。
 大判フィルムは、4×5インチの小さいものから、5×7インチ、8×10インチ、さらには11×14インチという大きなものもある。印画紙に焼き付けられた写真だけでなく、フィルムの実物も置かれていたが、11×14インチのフィルムはとてつもなく大きく、こんなフィルムを使うカメラはどんな大きさなのか、想像もつかない。会場には実物の大判カメラも置かれていたが、それは4×5インチのものだった。この一番小さなサイズのカメラでも、我が家には置き場所に困るほどだ。

 会場からの帰り道、とある公園を通ったら、葉の色が抜けたプラタナスを見つけた。葉を裏返したら、予想通りグンバイムシが群がっていた。プラタナスグンバイである。侵入昆虫としてよく知られているが、実際に目にしたのは今日が初めてである。
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2010年9月11日 (土)

「コレ、みたことある?」カメムシの口

 「月刊かがくのとも」2010年10月号とともに折り込みふろくが届いた。
 この折り込みふろくの4〜5ページにぼくが書いた科学エッセイ『「コレ、みたことある?」カメムシの口』が掲載されているのだ。イラストを描いていただいたのは石森愛彦さん。いつか機会がないものかと思っていた石森愛彦さんとのコラボレーションがここで実現したわけである。
 この機会をつくっていただいた、福音館書店の編集者のKさんに感謝!

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桐谷圭治著『「ただの虫」を無視しない農業』

桐谷圭治著『「ただの虫」を無視しない農業 生物多様性管理』

築地書館
ISBN4-8067-1283-3
2,400円+税
2004年3月31日発行
192 pp.

目次
第I章 農業の将来
世界の人口、農業、環境/アジアの農業環境と稲作/アジアにおける稲の病害虫防除/アジアにおける農薬汚染/一石三鳥の要防除密度/緑の革命−稲の新品種/総合的有害生物管理(Integrated Pest Management: IPM)/日本農業への期待−水田の多面的機能/総合的生物多様性管理(Integrated Biodiversity Management: IBM)
第II章 化学的防除の功罪
化学農薬依存への反省/BHCの環境汚染/BHCの使用禁止−IPMへの第一歩/農薬の負の遺産(1)/農薬の負の遺産(2)/農薬の選択的毒性/もし農薬がなかったら/減農薬の試み/減農薬の理論/減農薬の実践/ニカメイガの減少−無意識のIPM
第III章 有機農業の明暗
自然の加害者から保全者へ/有機農業とは/有機農業への期待−日本/有機農業の隘路/有機農業の未来
第IV章 施設栽培の生態学
農業生態系と害虫相/世界3位の施設園芸国/施設の害虫相/生物的防除を基幹にしたIPMへの移行/IPMの決算/地球温暖化を先取りする施設栽培
第V章 総合的生物多様性管理(IBM)
生き物を育てる機能/IBMの理論/水田のIBM/IBMを実行するための基本的考え
あとがき
参考文献
害虫防除の年譜
節足動物、センチュウの和名と学名の一覧
索引

 ちょうどぼくが石垣島から現任地へ異動してドタバタしていた頃に発行された本ということもあり、これまで読む機会を逸していた。この本は読んでいなくても、学会やシンポジウムや研究会などの機会に、著者である桐谷さん(桐谷さんは日本を代表する農業昆虫学者で、偉大なる大先輩でもあるわけだが、若手に対しても対等の関係で接していただける方なので、ここでは「桐谷さん」という呼称を使いたい)の発言は多く耳にしていたので、この本を読まなくても、大体の内容は想像できると思っていた。が、それはかなり間違っていたことがわかった。
 桐谷さんはIBM(コンピュータ会社の名前ではなく、Integrated Biodiversity Managementの略である)という概念の提唱者である。これまでのIPM(総合的有害生物管理: Integrated Pest Management)からさらに範囲を広げて、これからの時代は、農作物の病害虫に直接関係のない生物も含めて、なるべく環境に負荷をかけないで農業を行えるようにしよう、という考えである。おそらく、多くの研究者はこのような考えに至ったことと思うが、それを新しい概念として提唱したところが一流の研究者である桐谷さんが凡人ではないところだと思う。
 この本から、害虫が概念として登場して以来の害虫防除についての歴史も知ることができる。桐谷さんは、BHCの使用禁止に至る時期から現場で仕事をしていただけに、この本に書かれていることは説得力がある。大学や国の農業試験場などで仕事をしていた人には書けなかったであろうことがたくさん書かれている。ぼくがこの道に入った1980年代後半は、皆殺し的な殺虫剤に対する批判が既に高まっており、BT剤やIGR剤などのような選択的毒性をもつ殺虫剤が増えてきた時代だった。それからさらに「生物多様性」という概念が登場し、農業生産現場においても無視すべきことではないと捉えられるようになってきた。
 いま、ぼくが仕事として行っている研究は、農業生産現場における生物多様性に関わるものである。この仕事に関わるようになって以来、それまで農業とは自然を破壊した上で成り立っているものであると考えていたため、「農業」と「生物多様性」の関係について、いまひとつしっくりこないものがあったが、この本を読んで概要はそれなりに理解できたような気がする。もっと早く読んでおくべき本であったと思う。
 この本の引用文献のリストに、ぼくが書いた論文が1つあった。ヒメハナカメムシの休眠に関するものである。あの頃はいろいろと苦しい思いをしながら仕事をしていた、ということが思い出されるが、このような本に引用されると、やはり嬉しい。

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田川研著『蝶も蛾もうつくしい』

田川研著『蝶も蛾もうつくしい 虫屋なる日々』

青土社
ISBN978-4-7917-6558-4
1,900円+税
2010年8月15日発行
230 pp.

もくじ
あらずもがなの序章
1  つまぐろひょうもん
2  普通種と珍種
3  カトカラと梅干し
4  つまきちょう
5  オオシモフリスズメは日本一
6  榎の蝶二種 ひおどし蝶、てんぐ蝶
7  普通に書いたらどうだ?
8  専門用語
9  虫屋百態(その1)
よろこびを小出しにする虫屋/一方、よろこびをバクハツさせる虫屋もいて/人間性の不気味な虫屋
10 トモエ蛾とホソオビアシブトクチバ
11 あけびこのは、ひめあけびこのは
12 スーパーマーケットの春
13 講演会
14 かすかな音が・・・・・・
15 これが偶然の一致であるはずがない
16 雨
17 虫屋百態(その2)
泣き上戸の虫屋/うぬが言ったことを片端から忘れる虫屋/はげしく後悔する虫屋/無口な虫屋は相手をするのもたいへんで・・・・・・
18 うすばしろちょう
19 いなかったところに、いるようになった
20 本のなかの虫
21 昆虫科
22 虫屋百態(その3)
広大無辺の知識を所有する虫屋/何をいっているのかわからない虫屋/闘う虫屋/ひがみの激しい虫屋
23 エミール・ガレ
24 なまえ
25 春の雨とマイ・フェア・レディーとエゾヨツメ
26 マーボー豆腐症候群
27 Bridge Over Troubled Water
あとがき—With A Little Help From My Friends

 ケンさんの『虫屋の虫めがね』『虫屋のみる夢』に続く3冊目のエッセイ集である。『虫屋の虫めがね』の感想を書いた時、北杜夫の『どくとるマンボウ昆虫記』以来の面白さだ、と書いたが、この本の帯には奥本大三郎さんによって「田川研さんのユーモアは、『どくとるマンボウ昆虫記』の、北杜夫さんの後を継ぐもの、と言ってもいいだろう」と書かれている。どくとるマンボウの文体がそうであるように、ケンさん独特のユーモアに溢れた文体(いわゆる「田川節」とでも言うか「ケンさん節」とでも言うか)は読者であるぼくを惹き付ける。
 この本(前の2冊を含め)を読むと、ケンさんが本当に虫や自然が好きなのだなぁ、ということがわかる。ぼくが虫や自然が好きなのは同じだが、専門の道に入ってしまったため、虫や自然を客観的なものとして捉えようとするようになってしまい、そのことによって本当の虫や自然の楽しさを遠ざけてしまっているのではないか、とケンさんの本を読むと実感される。虫を飼育することにしてもそうである。中学生や高校生だった頃、この本の中でケンさんが楽しんでいるように、蝶の幼虫を飼育することは楽しいことだった。今は、仕事で虫を飼育「しなければならない」という状況になっていることが多く、家に帰ってから飼育している虫の世話をしようなどとは思わなくなってしまった。よくない事である。
 副表題となっている『虫屋なる日々』は、この本の内容をよく表している。どっぷりと虫屋の世界に浸っていると、ケンさんがこの本に書いたことと似たようなことを考えることが多い。ほかの「虫屋」との交流も楽しそうである。「虫屋百態」で描かれている虫屋が具体的に誰なのかはよくわからないが、そのような虫屋は確かにいそうだ、と思わされる。ぼくはケンさんとの面識はないが、ケンさんがぼくのことを知っていたら、題材にされてしまいそうに思える。ケンさんは虫を楽しんでいるだけでなく、虫屋との交流も思いっきり楽しんでいるのだなぁ、と実感される。
 虫に縁の無い一般の人がこの本を読んだらどのような感想を持つか想像がつかないが、現役の虫屋であったり、過去に虫屋であった人がこの本を読めば、間違いなく面白いと思えるはずである。

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2010年9月 4日 (土)

第33回農業環境シンポジウム「農業からみた生物多様性、生物多様性からみた農業」

 昨日に引き続き、農耕地生態系における生物多様性に関係したシンポジウムである。主催者は農業環境技術研究所。「生物多様性」という名前が冠されたプロジェクトに関わり始めてから2年を過ぎたが、未だに「生物多様性」という言葉の意味を掴みかねている。ということで、せっかく東京まで出ることになったので、このシンポジウムにも参加することにした。
 シンポジウムが午後からなので、午前中は時間が空いている。せっかくなので、上野の科博にでも行こうかと思っていた。朝食をさっと済ませて8時にはチェックアウトしようかと思ったのだが、食堂に行ったら昨日のシンポジウムに参加されていたK谷さんに声をかけられた。K谷さんのような偉い研究者とサシでお話をできる機会もそれほど多くないので、じっくりお話をさせていただくことになった。話し込んでいると、「9時になりましたので閉めさせていただきます」との食堂の人の声。結局チェックアウトしたのは10時前ぐらい。科博に行くには時間が短すぎるし、かと言って何をして良いのかもわからない。何ということもなく、明治神宮まで行ってみることにした。
 途中、わずかながらミンミンゼミの鳴き声が聞こえた。明治神宮に行ったのは、初めての可能性が高い。学校に上がる前の2年ばかりを東京で過ごしたことがあるので、その頃に行った可能性はあるのだが、少なくとも記憶には残っていない。
 明治神宮の中は何となく埃っぽい。このところ暑い日が続いて雨が降っていないせいもあると思う。木々の葉に土埃がついているのだ。明治神宮の森ではアブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシが鳴いていた。蝶ではアオスジアゲハ、クロアゲハ、ナガサキアゲハが目についた。ナガサキアゲハが分布を拡げているのは知っているとは言っても、実際に東京で目にすると複雑なものを感じる。
20100904blog1 明治神宮の森を北に抜けるとまもなく代々木駅だが、まだ時間に余裕がありすぎるので、方向を東に変えて千駄ヶ谷まで歩いた。もっと歩いても時間には余裕があったのだが、疲れたので電車に乗ることにした。千駄ヶ谷から飯田橋まで150円。時間に余裕がありすぎるので、反対方向の電車に乗った。乗車のルールに違反しない遠回りである。次の代々木に着いたら目の前に品川方面に行く山手線が来ていたので、それに乗る。ぐるっと大回りして東京駅で山手線を降り、構内で土産を調達する。これでやっと12時ぐらいになった。今度は京浜東北線で秋葉原に向かい、構内のラーメン屋で昼食。ゆっくり総武線のホームに向かい、来た電車に乗って飯田橋へ。会場のベルサール飯田橋はベルサール飯田橋ファーストより飯田橋駅に近かった。

第33回農業環境シンポジウム「農業からみた生物多様性、生物多様性からみた農業」
基調講演『田園有情』(あん・まくどなるど)
講演 農業活動による生態系とランドスケープの管理(山本勝利)
講演 農業における生物多様性の機能の活用(田中幸一)
講演 農業における新たな生物資源の利用とリスク管理(藤井義晴)
講演 生物多様性保全をより重視した農林水産施策の推進(木内岳志)
講演 農業における生物多様性の利用と保全の調和に向けた提言(西尾健)
総合討論

 基調講演をしたあん・まくどなるど氏はカナダ人である。宮城県松山町(現大崎市)に住み込んで、田圃つくりから酒づくりまでに関わったことが紹介されたが、全体的には何を言いたいのかよくわからない講演だった。おそらく日本にずっと暮らしている日本人が気が付かないようなことに色々と気が付いて、それを紹介したかったのだろうと解釈したいと思う。『田園有情』という表題は、同じ表題の本を出版しているので、それをそのまま使ったとのこと。この講演では何を言いたいのかよく分からなかったので、その本を読んでみないといけないかも知れない。
 最初の3題の講演は研究者による研究の紹介である。木内氏は行政の取り組みの紹介。西尾氏は将来に向けての提言。
 このシンポジウムを聴いていると、農業において生物多様性に配慮することは非常に重要なことだと理解できると思うが、それが行政に反映されるかどうかを考えると極めて障害が大きいようにも思える。ヨーロッパでは農耕地における生物多様性を保全するシステムが既にいろいろ存在しているが、行政施策として実行されるためには、政治家の理解があったはずである。木内氏の講演を聴いたかぎり、農業における生物多様性に関して、農水省の役人のレベルではそれなりに理解が得られていると思ったのだが、「政治主導」が叫ばれている昨今において、役人がいくら真面目に頑張っていても、政治家に理解されなければいつまで経っても制度はできないだろうと思う。日本の政治家を見ていても、農業に関してここまで考えていると思われる人は見つけるのが難しい。理解してもらえそうな政治家は、文部大臣在任中に全国植樹祭において「雑木林を伐採して植樹を行うのはおかしい」と発言した鳩山邦夫氏ぐらいではないかと思う。ヨーロッパでこのような施策が実施できるのは、文化の違いなのであろうか。
 時間が押し気味であったが、ほぼ予定通りの時刻に終了。疲れが溜まって早く帰りたかったので、サッと駅に向かい、東京駅18:00発の新大阪行きののぞみに乗った。名古屋で下車し、太閤通北口に近い「みかど」で味噌カツを食べた。この前食べたエスカの「双葉」より安かったが、味は「双葉」の方が良いと思った。20:30発の快速みえは4両編成で、余裕で着席できた。
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2010年9月 3日 (金)

シンポジウム「環境保全型農業の取り組みの効果を計る」

 来月名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されることもあり、「生物多様性」という名前が冠されたシンポジウムがあちこちで開催されている。そんなこともあり、仕事で関わっている農水省から委託されているプロジェクト(農業に有用な生物多様性の指標及び評価手法の開発)でもシンポジウムが開催されている。プロジェクトが始まってから3年目であり、シンポジウムも3回目である。成果もある程度上がってきたところである。ぼくも「IPMなど環境保全型農業の取り組み効果を指標生物で確認する〜キャベツほ場での主要な指標候補種とその利用法の展望〜」という演題でポスターで発表することになっていたのだ。しかし、この暑い中、東京まで出かけなければいけなかったというのは、正直言ってしんどい。会場は飯田橋駅近くのベルサール飯田橋ファースト。明日も別の農耕地の生物多様性に関係したシンポジウムが開催されるので、それにも参加する。これの会場はベルサール飯田橋。名前は似ていて最寄り駅は飯田橋で同じだが、違う場所なのでややこしい。シンポジウムのハシゴである。

シンポジウム「環境保全型農業の取り組みの効果を計る」
第1部 講演の部
指標生物種で環境保全型農業等の取組の効果を計るメリット(上野高敏)
期待される具体的な研究成果の活用事例
・環境保全型農業の取組の効果を指標生物で確認する(田中幸一)
・IPMなど環境保全型農業の取り組み効果を指標生物で確認する−より効果的な病害虫防除を行うために−(井原史雄)
・指標生物種を保全・活用した、より効果的な環境保全型農業の実施(金子修治)
・農業に有用な生物を活用した新たな農業への期待(大野和朗)
第2部 ポスター発表の部

20100903blog1【ポスターの前のぼく。手前のゴミムシの標本は、岩手県農業研究センターの羽田さんによるもの】

 このプロジェクトで行われているような研究はヨーロッパで進んでおり、その取り組みを日本の農業で適用できるようにしようというのが主眼となっている。このような研究はこれまで日本では行われていなかったので、そういう意味では先進的な研究である。ヨーロッパと日本では、農業の形態も異なり、個々の農耕地の面積も大きく異なるので、日本でデータを取る意味は大きい。
 目指すところはヨーロッパも日本も、元来環境に対して負荷を与えている農業という営為において、環境への負荷を減らそうということである。その取り組みを、農耕地に棲息する生物種を見ることによって効果を判断しようというのは合理的のように思えるが、現実にはなかなか難しい部分が多いというのが実感である。
 このプロジェクトでの調査は大変手間のかかるものだが、来年度の予算は要求段階で四分の一近くに減らされるということらしい。士気の低下は避けられないように思える。

 シンポジウムが終わったあと、ぼくが上京するのに合わせて、大学時代の合唱団の東京近郊在住のメンバーが集まって飲むことになっていた。時間に余裕があったので、まずは表参道駅に近い共済の宿にチェックイン。東京の地下鉄はややこしい。シンポジウムの会場から表参道駅にはいろいろなルートがあるようだが、どれが便利なのかわからない。とりあえず、南北線に乗って永田町で半蔵門線に乗り換えたが、永田町ではけっこう歩かされた。飲む場所は神田駅から歩いて6〜7分のところ。表参道から神田までは銀座線で一本である。集まったのは、ぼくのほか、同学年3名、1年先輩が2名の計6名だった。とくに、先輩2名に会うのは本当に久しぶりだったので、思い出話は尽きなかった。こういう機会も、たまには良いものである。神田へ向かう途中、三越前駅に半蔵門線が通っていることがわかったので、帰りはそれに乗ってみようと思った。が、これは賢い選択ではなかった。三越前駅では、一旦改札を出て、400mぐらい歩かなければいけなかった。

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2010年9月 1日 (水)

今日から9月・体調もほぼ回復・クツワムシの鳴き声を聞く

 今日から9月である。しばらく体調が悪く、仕事もはかどらない日が続いていたが、医者に出してもらった夏バテに効くという「補中益気湯」が効いてきたのか、今日の午後ぐらいからほぼ体調が回復したと実感できるようになった。
 今日の午前中は恒例の野外調査。まともな雨が降っておらず、連日の猛暑のため、先週植えられたキャベツの苗が、干涸びそうになっていた。午後にも、新しい調査地に出かけ、苗が植えられたばかりのキャベツ畑にピットフォールトラップを仕掛けてきた。このように、ほどほどに体を動かして汗をかいたのが、体調の回復に功を奏したのかも知れない。
 ということで、その後も職場で雑事をこなしていたら、気づいたら午後7時近くになっていた。外を見ると、もう暗くなっている。知らないうちに、日暮れもだいぶ早くなったものである。
 帰ろうと自転車置場に向かおうとしたら、植え込みでクツワムシが鳴いているのが聞こえた。遠くの方からもクツワムシの鳴き声が聞こえてくる。このところずっと毎日早く帰宅していたので、クツワムシの鳴く時刻まで職場にいなかった。だから、今年クツワムシの鳴き声を聞いたのは、今日が初めてである。帰る途中の安濃川の河原にもクツワムシが多いのだが、いつも引っかかることが多い安濃川の橋の信号で引っかからなかったので、確認するのを忘れてしまった。この場所は、時刻が合えばヒゲコガネも見られる場所である。今年はまだヒゲコガネを見ていない。

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