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2010年8月 7日 (土)

毎日新聞科学環境部著『迫るアジア どうする日本の研究者』

毎日新聞科学環境部著『迫るアジア どうする日本の研究者−理系白書3』

2009年1月15日発行
講談社文庫
ISBN978-4-06-276257-1
581円+税

309 pp.

もくじ
まえがき
第1章 日本発「夢の新万能細胞」のこれから
第2章 日本を猛追するアジア
第3章 人材を生かさない日本
第4章 進む道を見失った日本の戦略
第5章 日本は反撃できるのか
第6章 これからの日本のものづくり
あとがき

 著者は「毎日新聞科学環境部」となっている。「毎日新聞科学環境部」は従来の「科学部」を1996年4月に改称したもので、日本のマスコミでは「環境」の名を冠した唯一の部である、と解説されている。
 本書は「理系白書3」となっているように、2003年6月20日に発行された『理系白書−この国を静かに支える人たち−』(講談社,ISBN4-06-211711-8)、2007年12月14日に発行された『「理系」という生き方−理系白書2』(講談社文庫,ISBN978-4-06-275926-7)の続編のようなものである。本書は文庫本であるが、オリジナルである。
 『「理系」という生き方−理系白書2』を読んでからあまり日が経っていないのでまだ印象が残っている。『「理系」という生き方−理系白書2』では、文系・理系という分類を大きく取り上げていたが、本書では文系との比較という側面はほとんど扱われておらず、現在の日本の科学技術の現況を明らかにすることにほとんどの紙面がつかわれている。いま「科学技術」と書いたが、「科学」という面はそれほど扱われておらず、「技術」に焦点が当てられていると言っても良いようにも思われる。
 日本がiPS細胞の研究でリードしている点は自信を持っても良いところであろうが、技術開発に戦略がなかったりするのは問題であろうし、「ものづくり」という点ではかげりが見え始め、新興国の追い上げに対していかに立ち向かうか、というところも課題であるというところなのであろう。
 しかし、世の中がこれだけ便利になってしまうと、現状に満足する人も多いだろうし、また生まれたときから便利な世の中で過ごしている若い人にとっては、現状が当たり前であり、ブラックボックス化した機械の中身などを知ろうという気が起こらなくなることもあるだろうと思う。ぼくが子どもだった頃には時計やラジオを分解して仕組みを見ようなどと考えて実際に行動する子どもが少なからずいたが、今はほとんどいないのではないだろうか?こういうところで、日本の技術レベルを維持するのは、やはり大変なような気がする。
 全体を通して読んだ印象としては、科学技術は革新あるのみ、というスタンスで書かれており、エネルギーが無尽蔵にあるのが前提のように思われた。ぼくの個人的な考えでは、これからの課題は、やはりエネルギーや環境に関する問題であろうかと思う。これらはもちろん理系の課題であるはずであり、これからの理系がどのようにふるまうかという点で無視できない問題であると思う。技術革新はもちろん必要であろうが、エネルギー問題や環境問題を無視した技術革新はあり得ないと思う。また、iPS細胞の技術を高めることのように、本書は長生きするか絶対善であるかのような立場で書かれているが、みんなが長生きしたらどのようになるのかということには想像が及んでいないようにも思われた。というより、人が長生きしすぎることで様々な問題が起きているのに、さらに長生きするための技術は善であるのかどうかもわからないと思う。新しい技術を開発することは人間の本能だと思うので仕方がないことだとは思うが、その技術によってあたらに発生する新しい問題についても考えた方が良いのではないかと思う。それと同時に、個々の人間がどのように人生を全うするかという点についても、もっと考える必要があるのではないかと思う。
 途中からは本書の感想ではなくなってしまったが、理系白書4が出るとすれば、技術革新と人生のあるべき姿との関連についても言及して欲しい。しかし、こういうことを考えるようになった自分は、やはり歳なのかも知れない。

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コメント

同署は読んでいませんが、推察するに、
論をたてるとどうしても、ある部分についての考察が鋭くなって、それ以外が置いておかれ、人間・社会といった全体のバランスが失っしますね。
戦略については、難しいなと思います。こちらもどうしても枠の中にとどまると思う。
きっと、ふわっとした議論がもっと必要なんでしょう。

投稿: kamoto | 2010年8月 8日 (日) 08時16分

kamotoさん、こんにちは。
この「理系白書3」では、「理系」だけ、特に「技術」にスポットが当てられていますが、ぼくにはどうも目先のことにとらわれているように思えました。技術戦略についても、もっと議論が必要でしょうし、もっと長期的な「人類の幸せ」についても議論が必要だと思います。もっとも、新聞記者がどこまで突っ込んでモノを書くことができるかとなると、疑問だとは思います。

投稿: Ohrwurm | 2010年8月 8日 (日) 08時49分

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