内田麻理香著『科学との正しい付き合い方』
内田麻理香著『科学との正しい付き合い方 疑うことからはじめよう』
2010年4月15日発行
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN978-4-88759-793-8
1,200円+税
286 pp.
目次
はじめにー科学の物語性
科学が私を助けてくれた/科学は私たちに、新しい視点をくれるもの
初級編 科学によくある3つの「誤解」
誤解1:「『科学離れ』が進んでいる」ってホント?
誤解2:もともと『科学アレルギー』の人は多いってホント?
科学好きな人は、いつからそうなった?/科学ギライにさせるブレーキペダルがある?/人は生まれながらにして科学好き?/大人になっても科学好きな人は「マニア」/もう1つのブレーキペダル−科学に対するがっかり感
誤解3:「科学技術は、身近ではない」ってホント?
電線の存在に気づいていますか?/科学が見えなくなっている/シンプルライフへのあこがれ?
☆コラム☆あなたの回りにある科学
・ カソウケン「家庭科学総合研究所」という架空の研究所
・ 美容と科学
中級編 科学リテラシーは「疑う心」から
科学リテラシーとは?
そもそも、リテラシーってなに?/では、科学リテラシーとは?/科学リテラシーをめぐるさまざまな定義
知識よりも、思考が重要
疑う心は科学の大前提/なぜ、「疑う」ことが必要なの?/「なるほど」ち「なぜ」のあいだに−「?」の前には「!」が必須
科学的なものの考え方とは?
1 答えが出ないことはペンディングする
2 「わからない」と潔く認める
3 人に聞くのを恥ずかしいと思わない
4 失敗から学ぶ
疑う心を阻害するもの
「科学教」を狂信する?/悩ましい疑似科学/科学は「役に立つ」もの?
☆コラム☆愛と恋と科学と
・ チョコレートと恋を科学してみると
・ どうぶつたちの婚姻の科学
上級編 科学と付き合うための3つの視点
視点1 社会の中に科学技術を見る
なぜこれまでのサイエンスコミュニケーションは失敗したのか/科学は、社会から切り離されている?/視点を変えれば、違うものに見えてくる
視点2 見えない科学技術に目を向ける—「見える」科学技術と「見えない」科学技術
ギリシャ神話から科学技術を読む?/科学技術は、そのままでもおいしい素材?/再考!科学リテラシーが必要な理由/見えないものが見えるようになる
視点3 理系だけにまかせない
白黒つけられない問題にであったら、どうする?/人は、「おまかせ型」をとりやすい/専門家、マニア、そして普通の人/理系だけにまかせられない3つの理由
☆ コラム☆私に影響を与えた科学者たち
・ ファインマン
・ 寺田寅彦
あとがきーー科学技術の監視団に
図書館で書棚を見ていてたまたま見つけた。ぼく自身、自然科学をベースに仕事をしているので『科学との正しい付き合い方』という表題が気になったのだ。
著者は家庭科学総合研究所というインターネットのサイトを主催しているサイエンスコミュニケーターの内田麻理香氏である。
著者は科学技術とそれ以外の社会の間に対立があると捉えており、その隙間を少しでも埋めようと考えていることはわかったが、本書を通して読んでみると、読者をどんな層の人を想定しているのかが曖昧で、中途半端な内容だと感じられた。また、科学の捉え方が表面的であるように感じられた。ぼく自身が科学の世界に身を置いているので、そのように感じられたのかも知れない。おそらく、著者自身の書きたいことはたくさんあるのだろうと想像されるのだが、何となく意気込みだけが空回りしている感じがした。
副表題として「疑うことからはじめよう」というのがあるが、この姿勢には同意できる。
内容としては同意できる部分が多いが、ひとつ異論を唱えたい部分がある。事業仕分けで蓮舫議員が「なぜスーパーコンピュータが世界で一番でなければいけないのか?」と質問したことに対して、著者はそれが一般の人が持つ感覚ではないだろうか、と言っている。しかし、これを「日本の経済はなぜ世界のトップ水準でなければいけないのか?」という質問に変えてみたらどうだろう。そうすれば多くの経済人が反論するだろう。だから蓮舫議員の質問に対してに多くの科学者が反論したのは当然だと思う。
著者の紹介を読めば、1974年生まれとある。ということは、まだ36歳ぐらいである。今後を期待したいと思う。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント