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2010年7月 3日 (土)

松永和紀著『メディア・バイアス』

松永和紀(まつなが・わき)著『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』

光文社新書
ISBN 978-4-334-03398-9
740円+税
2007年4月20日発行
259 pp.

目次
はじめに
第1章 健康情報番組のウソ
第2章 黒か白かは単純すぎる
第3章 フードファデイズムの世界へようこそ
第4章 警鐘報道をしたがる人びと
第5章 添加物バッシングの罪
第6章 自然志向の罠
第7章 「昔はよかった」の過ち
第8章 ニセ科学に騙されるな
第9章 ウソつき科学者を見破れ
第10章 政治経済に翻弄される科学
第11章 科学報道を見破る十カ条
おわりに

 過日、本書の本書の著者、松永和紀氏の前著である『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』を読んだので、その次の著書である本書を読んだ。松永氏は本書で日本科学技術ジャーナリスト賞2008を受賞している。
 前著は農薬に関する問題に焦点を絞ったものだったが、本書はテレビ、新聞、週刊誌等のメディアが、科学的に明らかにされた事実を如何に歪めて報道しているか、を問題にしたものである。松永氏には、ぼくの職場で『問題の多い食・農業報道に研究者はどう打ち勝つか?』という演題で講演していただいたことがあるが、本書はほぼその内容と重なっている。
 食や健康に関しては多くの人が興味を持っているが、科学に明らかにされたその根拠となる事実は、大抵の場合は一般の人が容易に理解することが困難なものである。それをテレビ、新聞、週刊誌等のメディアは、自分たちにとって都合の良い部分だけを抜き出して、自分たちの頭の中に描いたストーリーに沿った番組や記事に仕立て上げる。さらには、「専門家」とされる科学者の中にも、自分を有名人に仕立て上げるために、メディアに乗ってトンデモ説を喧伝するものまで現れる(ぼくから見れば「ニセ科学者」だ)。
 専門知識の乏しい一般の人は、大手のメディアが報道しており、「科学者(=ニセ科学者)」がそれを「保証」していれば、それが都合の良い部分だけを取り出して捏造されたものだとしても、そのウソを信じてしまう、ということになってしまう。
 メディアが「売れる」番組なり記事なりを発信するという傾向があるのは自然のなりゆきであるが、それを「仕方がない」として放置することは、メディアがメディアとしての本来の義務を放棄していることになる。
 さいごに、著者が提唱する科学報道を見破る十カ条が書かれている。
1. 懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する
2. 「○○を食べれば……」というような単純な情報は排除する
3. 「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する
4. その情報をだれが利するか、を考える
5. 体験談、感情的な訴えには冷静に対処する
6. 発表された「場」に注目する。学術論文ならば、信頼性は比較的高い
7. 問題にされている「量」に注目する
8. 問題にされている事象が発生する条件、とくに人に当てはまるのかを考える
9. 他のものと比較する目を持つ
10. 新しい情報に応じて柔軟に考えを変えていく
 ここに書かれている十カ条は、たしかにそのとおりだと思うが、このように何事についても懐疑的にならなければいけないような社会は健全ではないと思う。メディアに職を置いている人の中には、マトモな人もいないわけではないと思うが、多くのメディア人には反省をしてもらいたいと思う。
 メディアが報道することを簡単に信じてしまう人は本書を読むべし。

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