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2010年7月 5日 (月)

毎日新聞科学環境部著『「理系」という生き方』

毎日新聞科学環境部著『「理系」という生き方−理系白書2』

2007年12月14日発行
講談社文庫
ISBN978-4-06-275926-7
533円+税

243 pp.

目次
まえがき
第一章 文理分け教育
第二章 破れ、専門の壁
第三章 文系社会で生きる
第四章 博士という「壁」
第五章 よみがえれ科学技術教育
あとがき

 著者は「毎日新聞科学環境部」となっている。「毎日新聞科学環境部」は従来の「科学部」を1996年4月に改称したもので、日本のマスコミでは「環境」の名を冠した唯一の部である、と解説されている。
 本書は「理系白書2」となっているように、2003年6月20日に発行された『理系白書−この国を静かに支える人たち−』(これは発行してそれほど時間が経過していなかった頃に読んだ。講談社,ISBN4-06-211711-8)の続編のようなものである。本書は文庫本であるが、オリジナルである。
 それなりに真面目に取材をしていると感じられ、説得力は感じられる。
 各章についての感想を書いておこうと思う。
 第一章:ぼくが高校生だったとき、理科は1年で生物Iと地学I、2年で物理Iと化学I、三年は理系クラスで物理IIと化学IIを履修した。3年では物理IIのかわりに生物IIも選択可能だったが、大学では生物学を学ぼうと思っていたにも関わらず、生物よりも物理の方が点数がとり易いと思って物理を選んだ。社会は、1年で地理B、2年で世界史と倫理社会、3年で日本史と政治経済を履修したが、歴史科目ではどうしても点数が稼げなかったので、自分で勉強して地理Bで受験した。ということで、理科と社会に関しては、まあひととおりざっと勉強したと思う。いまの高校生はそうではないらしい。物理を全く学んだことのない文系の人があったり、生物を学んだことのない人が医学部に進むこともあるという。受験の効率を考えれば、受験科目だけ勉強すれば良いかも知れないが、その先のことを考えれば問題点が大きいような気がする。高校では幅広く勉強すべきだと思うが、それができていない現状は問題である。解決する方法は、すべての受験生に全ての科目の試験を課するしかないと思う。センター試験を大学受験資格試験に変えて、理科4科目、社会5科目を必須としたら良いのではないかと思う。
 第二章:最近の世の中は複雑であるから、一つの専門の殻に閉じこもるのは良くないのはよく理解できる。やはりπ型の専門性をもった人間が必要とされるのだと思う。自分がどうかと言われれば、I型ではなく、T型ぐらいにはなっていると思う。
 第三章:文系社会で生きる理系出身の人間を個人的に知っているが、うまくやっているようである。うまくやっていけるかどうか、それは個人個人で違うと思うが。
 第四章:大学院重点化が進んでから博士が量産されたが、量産された博士が社会の中でうまく活用されているとは言えないことはよくわかる。博士が期限無しの職に就くのは、極端に言えば博打に近いものがあるように思える。このような状況では、優秀な人材が博士課程に進まず、結果的には日本の科学技術のレベルを下げることになり、日本の国力の低下を招くことになると思う。ぼく自身は、自分の能力を見極めてドロップアウトして公務員試験を受験し、博士課程を中退して農林水産省の研究職に就いたが、今考えてみれば、マトモに就職できたので悪い選択ではなかったと思う(就職したときは、大学から見放されたと感じていたが)。遅まきながら論文博士を取ることもできたし。とにかく、優秀な人材が安心して博士課程に進学できるような状況をつくる必要があると思う。
 第五章:やはり小学生、中学生の頃に、理科の楽しみに触れることができるかどうかが、その先を左右することになると思う。机の上の勉強だけではだめで、実験をしたり、観察をしたり、ということを小学校や中学校でもしっかりやるべきだと思う。今の学校の先生は異様に忙しそうだから、何らかの対策は必要だと思う。
 いずれにせよ、社会において給与面における理系の評価は低すぎると思う。日本の基盤を支えているのは主に理系人間なのだから。

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コメント

しかしながら。。。。文系は今や、就職ありませんてば(><)

投稿: ぺこん | 2010年7月 6日 (火) 07時32分

ぺこんさん、おはようございます。
 就職が厳しいのは、どちらも同じような気がします。
 やはり、多くの金融機関や一部のメーカーのトップが文系でしかも多額の報酬を得ているのは、庶民感覚的には納得できないです。

投稿: Ohrwurm | 2010年7月 6日 (火) 07時36分

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