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2010年6月28日 (月)

柏久(かしわ・ひさし)著『環境形成と農業』

柏久(かしわ・ひさし)著『環境形成と農業−新しい農業政策の理念を求めて』

昭和堂
ISBN 4-8122-0534-4
2,000円+税
2005年11月25日発行
202 pp.

目次
序章
第1部:食料と環境
 第1章 食料自給率とは何か?─背景にある政治的意図と構造
 第2章 食料をめぐる貿易政策─何のための自由化阻止か?
 第3章 食生活の変化と農業政策─洋風化はいかにして?
 第4章 大豆・小麦の自給率低下をめぐって─PL480と農林族の出現
 第5章 畜産物消費の増大と食料自給率の低下─飼料政策の不思議
 第6章 食料問題が引き起こす環境悪化─加工型畜産の帰結
特別寄稿:イギリスにおける食料と環境(並松信久)
第2部:食料生産の国内基盤
 第7章 食料生産基盤としての農家と農村─「むら」を構成する農家
 第8章 「むら」社会のエートス─官僚主導型農業構造の基盤
第3部:官僚主導型農業構造
 第9章 農業協同組合は何のために?─官僚主導型農業構造の一翼
 第10章 農業構造の骨格としての食糧管理法─なぜ53年もつづいたのか?
 第11章 コメの自由化と農業構造の揺らぎ─関税率490%の怪?
 第12章 日本農業を衰退させた官僚主導型構造─日本社会のフラクタル
 終章 よりよい環境形成のための農業はどうあるべきか?

 以前読んだ神門善久著『日本の食と農 危機の本質』の半年ぐらい前に出版された本であるが、本書第3部は神門氏の著書が扱っていることと重なっており、主張も共通する部分が多い。神門氏の著書はそれ一冊で本書の第3部で扱っていることを議論しているので、その点に関しては神門氏の著書の方が突っ込み方が深い。もっとも、本書は教科書としても利用されることを考慮して書かれているので、日本の農業における問題点をおおまかに理解しようという目的のためには本書の方が優れているように思われた。本書には「エネルギー」という視点も考慮されているので、その点でも優れているように思われる。
 神門氏の著書は影になっている部分をえぐり出すような書き方がされているが、本書はそれに比べれば書き方は穏やかである。日本の農業の問題はどんなところから始まっており、今どんな問題があるのかを、データを示しながら説明されている。
 本書を読むと、日本の農業がコメに大きく依存しており、それが水利権と深く絡んでおり、それがゆえにヨーロッパのように農地の解放が現実的には進んでおらず、コメが過剰になりつつある時代になっても、政界=農林族議員、官界=農林水産省、業界=農協の三者が一体化しており、学界もその構造を容認しているという構造があるために、その構造がいつまで経ってもかわらないということがよく理解できる。本書の著者は、この三者が一体化している構造こそが問題であるという立場である。
 本書の著者である柏久氏は、本書の書きぶりから察する限り、学界の中では異端の考え方を持っておられる方だと判断される。学界の主流の考え方では日本農業の問題点を解決する方向に持っていけていないという現実を目にすれば、この異端派であろう柏久氏の考え方は注目に値するものかも知れない。
 本書には特別寄稿として並松信久氏による「イギリスにおける食料と環境」という部分があり、その中でイギリスにおける農家の所得補償としての直接支払いについても解説されており、非常に参考になった。日本でも農家に対する直接支払いの制度を作ろうという動きがあるが、農業の形態が大きく異なるイギリス(畑作と畜産が中心)と日本(水田におけるコメが中心で、水利権が大きな問題となる)では、イギリスにおける環境保全に対する直接支払い制度をそのまま日本に適用するのは難しそうな気がするが、いかなものだろうか?

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