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2010年5月 4日 (火)

アラン・バーディック著『翳りゆく楽園 外来種vs.在来種の攻防をたどる』

アラン・バーディック著(伊藤和子訳、養老孟司解説)『翳りゆく楽園 外来種vs.在来種の攻防をたどる』
"Out of Eden: An Odyssey of Ecological Invasion" by Alan Burdick (2005)
ランダムハウス講談社
ISBN978-4-270-00532-3
2,400円+税
2009年9月24日発行
446 pp.

目次
プロローグ−フライト 009
第I部 陸
 第1章 ヘビの棲む島 027
 第2章 糸をたぐる 043
 第3章 ヘビ調査 057
 第4章 知恵比べ 073
 第5章 壮大な実験 091
 第6章 交易の始まり、自然の終わり 101
 第7章 鳥マラリア 118
 第8章 生態学者が挑む挑戦 132
 第9章 境界 148
 第10章 ハワイの昆虫たち 164
 第11章 生態系への侵略 184
 第12章 ルールを変える者 198
 第13章 侵入種 212
 第14章 風に漂う 238
第II部 海
 第15章 海の密航者たち 248
 第16章 海洋生物学者の研究室 274
 第17章 手つかずの自然はどこに 293
 第18章 旅をするフジツボ 325
 第19章 海についた指紋をたどる 333
 第20章 洋上のフィールドワーク 351
 第21章 侵入種学の確立をめざして 361
 第22章 エデンの園へ386
 第23章 タスマニアの変わりゆく生態 392
 第24章 「手つかずの自然」という幻 410
エピローグ−新世界 427
解説(養老孟司) 441

 著者のアラン・バーディックは科学エッセイストである。著者が侵入種の移動ルートを跡づけてみようと出かけた旅で出会った科学者をはじめとする様々な人との出会いを通して、著者の目でみた外来種と在来種との間の関係、さらには人間との関係が、ドキュメンタリー・タッチで語られている。
 第I部では、ミナミオオガシラヘビというオーストラリア原産のヘビを中心に話が展開されている。ミナミオオガシラヘビはマリアナ諸島のグァム島に侵入して定着し、大繁殖して島の生態系を変えてしまった。それがさらにハワイ諸島に侵入しようとしている。ハワイは海洋島であり、そこでは独自の生物が進化した。しかし人類の侵入後、ハワイ諸島には人類の移動に伴って意識的あるいは無意識的に様々な侵入生物がもたらされ、ハワイ本来の生物は限られた場所でしか見られなくなっている。ハワイでは野生のブタをめぐっても、ハワイの原住民と生態系を守ろうとする他所者である科学者との間で議論が戦わされている。
 第II部では、船のバラスト水による生物の移動を中心に話が進められている。人間の経済活動の増加に伴って物流が増え、物資を運ぶ船のパラスト水に混入した生物があちこちに広がり、新天地に定着した生物が大発生を起こして様々な問題を引き起こしたり、またそれぞれの地域の水域の生態系は地域の特徴を失い、画一化されてきたりしている。
 本書では、外来種とは何か、在来種とは何か、本来の自然とは何か、自然保護とは何か、自然をどうすべきか、ということについて問いかけられている。しかし、第24章『「手つかずの自然」という幻』では、結局は人間が介在した時点で「手つかずの自然」というものは消滅して、人間が探し求めてきた「手つかずの自然」とは幻想に過ぎず、我々が帰ろうとしている「自然」とは、我々が子供の頃にみた環境であり、人間の心に潜む郷愁に過ぎないと結ばれている。これは高橋敬一著『「自然との共生」というウソ』で語られていることと同じである。還るべき自然とは何かを知ることが不可能である状況で、自然保護運動がどちらを向いて行動すべきかは恣意的にならざるをえず、結局は現状をなるべく維持するということにならざるをえないのではないかと思う。侵入してしまった侵入種に対しても根絶を目的とするのではなく、それ以上に広がるのを避けることに力を注ぐ(カネを使う)ことが妥当な選択肢ではないかと、本書を読んであらためて感じされられた。
 外来種の根絶活動を実践している人にも是非読んでもらいたい本である。

 本筋とは関係ないが、誤訳と思われる箇所に気付いたので、指摘しておきたい。第10章で「外来のショウジョウバエによる農作物被害を防ぐカリフォルニア州のプロジェクトの・・・」(p. 170)とあるが、これはショウジョウバエ科のハエではなくミバエ科のハエのことではないかと思う。ショウジョウバエ科のハエもミバエ科のハエも、英語では"fruitfly"と呼ばれている。害虫として世界的に問題になっている"fruitlfy"はミバエ科のハエである。だから、「外来のミバエによる農作物被害を防ぐカリフォルニア州のプロジェクトの・・・」というが正しい訳だと思う。そのすぐあとにハワイのショウジョウバエのことが書かれているが(p. 174〜)、これはショウジョウバエ科のハエで間違いないと思う。ハワイでショウジョウバエが爆発的に種分化していることはよく知られている。

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