サルカケミカンのキジラミ
石垣島で仕事をしていたときのことである。柑橘類の重要な病害であるカンキツグリーニング病を媒介する昆虫であるミカンキジラミを調べていたとき、ミカンキジラミの好む寄主植物であるゲッキツや柑橘類だけでなく、いろいろなミカン科の植物にもミカンキジラミがいるかどうかを調べた。その過程で、野生のミカン科の植物であるサルカケミカンToddalia asiatica (L.) Lam.から、未知のキジラミの一種を発見した。2001年2月13日のことである。キジラミの分類の専門家である井上広光博士に同定を依頼していたのだが、この前の学会で井上さんにお会いしたとき、このキジラミが日本初記録で台湾から記載されたCacopsylla toddaliae (Yang, 1984)である、という報告をした論文の別刷をいただいた。
この論文によれば、井上さんは、ぼくが提供した以外の標本をお持ちでないようで、まだあまり採集されていないことが窺われた。
サルカケミカンは雑草のように生えている灌木で、ちょっとした荒れ地にはよく見つかった。とくに石灰岩質の土地に多いように思われた。そして、このキジラミもあちこちのサルカケミカンから見つかった。
ぼく以前にも、ぼく以降にも採集記録がないということは、ようするにサルカケミカンにはあまり目が向けられていないということなのではないかと思う。もっとも、奇麗な虫でも、大きな虫でもないので、無視されているだけなのかも知れないが。
このような目で見れば、南西諸島では、日本から未知の昆虫を見つけることは、かなり容易なのではないかと思われる。しかし、ミカンキジラミの仕事に関わっていなければ、ぼくがこのキジラミを発見したとは思えない。要は、どのように虫や植物を見るか、という点が重要だと思う。
(↑)成虫(2001年2月13日)
(↑)5齢幼虫(2001年2月13日)
(↑)1〜4齢幼虫(2001年2月13日)
・文献
Inoue, H. (2010) The generic affiliation of Japanese species of the subfamily Psyllinae (Hemiptera: Psyllidae) with a revised cheaklist. Journal of Natural History 44: 333-360.
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