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2010年4月22日 (木)

青木淳一著『ホソカタムシの誘惑』

青木淳一著『ホソカタムシの誘惑 日本産ホソカタムシ全種の図説』
東海大学出版会
ISBN978-4-486-01855-1
2,800円+税
2009年11月20日発行
195 pp.

目次
1章 ホソカタムシに関するQ&A
2章 ホソカタムシの魅力
  1.老生物学者、昆虫少年に戻る
  2.ホソカタムシの恰好よさ
  3.ホソカタムシの家族離散
  コラム1 甲虫の種類数
3章 ホソカタムシの研究法
  1.採集する
  2.標本を作る
  3.図を描く 
  コラム2 ガム・クロラール液の作り方
4章 採集日記から
  1.G.Lewisの足跡を辿って湯山へ
  2.徳之島のホソカタの木
  3.石垣島はホソカタムシの宝庫
  4.絶海の孤島、北大東島
  5.意外と昆虫相が豊かな種子島
  6.神奈川県金沢自然公園での収穫
  7.憧れの小笠原諸島へ
  コラム3 甲虫の分散
5章 ホソカタムシ採りの達人たち
  1.達人のコツと執念
  2.珍種発見は幸運と努力
  3. 新しい採集法の考案
  4.生息場所を見つける眼力
  5.誘惑されたもう一人の人
  コラム4 アマチュア研究者の貢献
6章 日本産ホソカタムシ種名リスト
  コラム5 記載と外国語
7章 日本産ホソカタムシ図説(分布図付き)
 A.ムキヒゲホソカタムシ科
  1.サビマダラオオホソカタムシ
  2.クロサワオオホソカタムシ
  3.オガサワラスジホソカタムシ
  4.ムネクボスジホソカタムシ
  5.フカミゾホソカタムシ
  6.セスジツツホソカタムシ
  7.ヒゴホソカタムシ
  8.イチハシホソカタムシ
  9.イノウエホソカタムシ
  10.タナカミスジホソカタムシ
  11.ミスジホソカタムシ
  12.アトキツツホソカタムシ
  13.クロツヤツツホソカタムシ
B.コブゴミムシダマシ科
  14.アバタツヤナガヒラタホソカタムシ
  15.ツヤナガヒラタホソカタムシ
  16.ルイスホソカタムシ
  17.ムネナガホソカタムシ
  18.ノコギリホソカタムシ
  19.ナガセスジホソカタムシ
  20.ヒメナガセスジホソカタムシ
  21.ユミセスジホソカタムシ
  22.ツヤケシヒメホソカタムシ
  23.ヒラタサシゲホソカタムシ
  24.サシゲホソカタムシ
  25. ノコムネホソカタムシ
  26.ヘコムネホソカタムシ
  27.ダルマチビホソカタムシ
  28.ヒサゴホソカタムシ
  29.マメヒラタホソカタムシ
  30.オニヒラタホソカタムシ
  31.コヒラタホソカタムシ
  32.ヤエヤマコヒラタホソカタムシ
  33.ヒラタホソカタムシ
  34.ミナミヒラタホソカタムシ
  35.トゲヒメヒタラホソカタムシ
  36.トカラトゲヒメヒラタホソカタムシ
  37.ニセサシゲホソカタムシ
  38.ナガヒラタホソカタムシ
  39.クロヒメヒラタホソカタムシ
  40.メダカヒメヒラタホソカタムシ
  41.クロモンヒメヒラタホソカタムシ
  42.ヨコモンヒメヒラタホソカタムシ
  43.ベニモンヒメヒラタホソカタムシ
  44.ハヤシヒメヒラタホソカタムシ
  45.ケブカヒメヒラタホソカタムシ
  46.ホソマダラホソカタムシ
  47.マダラホソカタムシ
  48.オキナワマダラホソカタムシ
文献
謝辞
あとがき
索引

 本書は雑誌か何かの宣伝を読んでその存在を知っていたが、ホソカタムシなどという姿形もよく知らない虫のことなので、とくに興味を惹かれることもなく、自分で本を買うつもりは全くなく、読むことのない本だろうと思っていた。ところが、津市津図書館で生物学関係の書棚を物色していたところ、本書が目に留ったので、迷わず借りてきて読んだ。
 著者の青木淳一氏はササラダニの分類学者であり、土壌動物学の教科書も書かれているので、名前だけは前々から知っていた。
 本書は非常にマニア好みの本だと思われるが、著者自身のあとがきにも書かれているように、ちょっと風変わりな本でもある。第1章は初心者向けのホソカタムシに関するQ&A、第2章は著者のホソカタムシに対する思いが込められたエッセイ、第3章はホソカタムシの研究法に関する教科書、第4章はホソカタムシの採集記、第5章はホソカタムシに関わる人(ぼくが三重県に転居してからおつきあいいただいている生川展行も「名採集人」として紹介されている)に関するエッセイ、第6章は日本産ホソカタムシのカタログ、第7章は日本産ホソカタムシに関する図説、というように入門書からエッセイ、さらには学術書としての役割までが盛り込まれている。やや誇張気味に書けば、この本を読めば日本産のホソカタムシに関することはほとんどわかる、と言えると思う。
 ぼくは(おそらく)ホソカタムシを採集したことはない。もし採集していたとしても、目に留ったことはない。しかし、この本にはホソカタムシの魅力がたくさん語られており、ついつい「ちょっと採集してみようか」などという気にさせられてしまう。もっとも、本書に書かれているように、ホソカタムシを採集するのは、かなりのコツが必要なようなので、そう簡単なことではないと思うが。そのように、何の興味も無かった人(ぼくは虫好きな人間なので、何の興味も無い、などと書くと語弊がありそうだが、虫はとにかく種類が多いので、ホソカタムシについては何も知らなかった)をその気にさせるという点で、著者の語り口の巧さがあるのだと思う。
 それにしても、このような構成の虫の本はこれまでにあまりなく、虫の世界に人を引き込むために有効な構成なのかも知れない。ぼくももしかして将来、『ホシカメムシの誘惑』とか『ハサミムシの誘惑』とかいう本を書くことになったとしたら、本書の書き方は大変に参考になる。そういう意味で、本書は図書館から借りてきて読む本ではなく、手元に置いておきたい本だと思う。
 第7章の図説には採集データがたくさん記されているが、その中に「高橋敬一採集」というものがたくさんあった。高橋敬一氏は『熱汗山脈』(随想舎)や『八重山列島昆虫記』(随想舎)や『昆虫にとってコンビニとは何か?』『「自然との共生」というウソ』の著者である。高橋氏の採集品の中には、ぼくと同じ職場に勤務していたときの石垣島での採集品がたくさんあった。あの頃は、「朽ち木から小さな虫を採っているみたいけど、何なんだろうなぁ?」などという程度に思っていたのだが、その一部がホソカタムシであったことが、本書を読んで判明した。高橋氏の採集品の採集地には、高橋氏の自宅のある地名もあったので、おそらく高橋氏の自宅の横にある雑木林で採集されたものだろうな、と想像している。
 それはともかく、昆虫に興味のある人は読むべし、だと思う。ところで、本書は津図書館の司書が選んだ本とは思われないので、誰かのリクエストによるものだと思う。誰がリクエストしたのか、ちょっと気になる。

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コメント

こんばんは。数ヶ月以内だったと思いますが、日経新聞の最後の面にある文化面に青木氏自身のホソカタムシに対する思いが載っていました。それで図書館に入ったのでは?

*検索をかけたら、1月28日らしいです。

投稿: Zikade | 2010年4月22日 (木) 20時35分

Zikadeさん、コメントありがとうございました。
 日経新聞はまったくチェックしていないので知りませんでした。それならその可能性はありそうですね。

投稿: Ohrwurm | 2010年4月22日 (木) 20時38分

もちろん刊行されてすぐに購入しました。

本書を読んで、いまや全国的にホソカタムシを探す甲虫屋が急増しています。この類書には珍しく、増刷されるかもしれないと思わせるほどの売れ行きではないでしょうか?。自分もかなり刺激を受けた一冊でした。

投稿: オコック | 2010年4月23日 (金) 05時11分

オコックさん、コメントありがとうございます。
甲虫屋さんは出版されて即買われた方も多いでしょうね。おっしゃるとおり、この本を読んでホソカタムシを探す人が増えているというのは、非常によくわかります。甲虫屋ではないぼくでも「その気」にさせられるような内容でしたから。

投稿: Ohrwurm | 2010年4月23日 (金) 07時09分

2011年9月21日(水)
たまたまとっておいた記事を今日になって目を通しました。
私は2010年1月28(木)の日経新聞の文化欄の記事で青木淳一氏のことを知り、Webで調べているうちにここに到着しました。
青木淳一という人はスケッチ画も文章もドイツ語もユーモア優れている人ですね。
 ササラダニの研究がご専門ですが、最初に発見したのにつけた名前がおもしろいです。
http://www.brh.co.jp/s_library/j_site/scientistweb/no41/index.html


投稿: WaerMelon | 2011年9月21日 (水) 20時07分

WaerMelonさん、はじめまして。
 Zikadeさんからもご紹介のあった日経新聞の記事をご覧になっていたわけですね。
 面白いウェブサイトの記事もご紹介いただき、ありがとうございます。

投稿: Ohrwurm | 2011年9月22日 (木) 06時51分

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