池田清彦著『38億年生物進化の旅』
池田清彦著『38億年生物進化の旅』
新潮社
ISBN978-4-10-423106-5
1,400円+税
2010年2月25日発行
222 pp.
目次
【附】地質年代略年表
第1章 無生物から生物がいかにして生まれたのか
第2章 シアノバクテリアの繁栄と真核生物の出現
第3章 多様化−単細胞から多細胞生物へ
第4章 カンブリア大爆発
第5章 動物や植物が陸に上がりはじめた時代
第6章 「魚に進化した魚」と「魚以外に進化した魚」
第7章 両生類から爬虫類へ
第8章 恐竜の進化と、鳥の進化
第9章 爬虫類と哺乳類のあいだ
第10章 ほんとうの哺乳類
第11章 様々な有蹄類たち
第12章 ヒトはどのようにしてヒトになったか
終章 進化とは何か
あとがき
生物の進化の歴史の38億年を200ページで解説する、というキャッチフレーズの本である。
生命が誕生したとされる38億年前から現在に至るまでの生物の進化について、これまでに明らかにされたことが淡々と語られている。が、随所に著者の主張するところの構造主義生物学的な解釈が織り込まれ、ネオダーウィニズムに対して批判が行われている。
ぼくは、古生物学に関してはほとんど知識がないので、どこが間違っているとか、この解釈はおかしいとかいうことは指摘できない。しかし、遺伝子の突然変異が自然選択を受けることの積み重ねによって新しい種が誕生するというネオダーウィニズム的な解釈ではなく、遺伝子の使い方が変化してシステムがかわり、新しい機能がまず最初に生まれ、そのあとに環境に応じた適応放散で種が多様化した、という著者による構造主義生物学的解釈の方がより説得力があるように感じられる。また、生物進化は一貫として複雑化の方向(新しい構造や機能が付加する)に向かい、決して単純化することはない、というところも押さえておくべき点だと思われる。もちろん著者はネオダーウィニズムを全面的に否定しているわけではなく、小進化におけるネオダーウィニズム的な考え方は肯定されている。
その他、著者の主張するところは、地球が温暖化したときには生物の大規模な絶滅が起こらず、寒冷化したときに大規模な絶滅が起こっている、ということだろうか。
本書は読んでいてワクワクさせられるような本ではないが、生物進化を概観する、という点においては、淡々とした文章で書かれていることもあり、手頃な入門書ではないかと思う。
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