日高敏隆著『なぜ飼い犬に手をかまれるのか』
日高敏隆著『なぜ飼い犬に手をかまれるのか 動物たちの言い分』
PHPサイエンス・ワールド新書 002
ISBN978-4-569-77205-9
820円+税
2009年10月2日発行
目次
まえがき
第1章 動物たち それぞれの世界
庭のタヌキ;冬の越しかた;春のチョウ;小鳥の給餌;田んぼのカエル;陸の上のホタル;ヒミズ 餌探しのふしぎ;寄生って大変;冬の準備;虫たちの越冬;冬の寒さを意に介さない虫たち;四季と常夏;虫と寒い冬;春を数える;チョウたちの“事情”;アブラムシの季節;夏の夜のヤモリ;カタツムリたち;ガとヒクラシと;秋の鳴く虫;ヘビたちの世界;ヤマネの冬眠;カラスの賢さ;猫の生きかた;犬の由来;ネズミたちの人生;渡り鳥ユリカモメ;猿害;コウモリ;夏のセミたち;シャコ貝;トンボ;イノシシ;サギに冷たい?万葉人;来年のえと「サル」
第2章 動物の言い分、私の言い分
稲むらの火;京都議定書;二つの美;トルコの旅で感じたこと;遠野を訪れて;環境と環世界;日本庭園は自然か?;一年を計る時計;「未来可能」とは何か;珊瑚の未来;地球研いよいよ上賀茂へ;外来生物の幸運;梅雨に思う;デザインと機能;虫がいなくなった;いじめと必修科目;伝統と創造;京都議定書10周年;地球温暖化の思わぬ結果;イサザという魚;京都議定書は大丈夫か?;チョウはなぜ花がわかるか?;靖国神社;虫たちの冬支度;イリオモテヤマネコの日常;紅葉はなぜ美しい?;自動化:温暖化取引;雑木の山;ミツバチ;暑い夏;コスタリカ;雑木林讃;生物多様性;なぜ老いるのか;利己的な遺伝子;ミーム;ぼくのファン
帯・扉イラスト 大田黒摩利
本文イラスト 後藤喜久子
第1章は中日新聞に2001年1月19日から2003年12月12日まで掲載されたもの、第2章は京都新聞の「天眼」に2005年2月5日から2009年7月11日まで掲載されたものである。日高先生は2009年11月14日に亡くなられたので、第2章の終わりの方は、もう闘病生活に入られてからのものではないかと思う。
第1章は、日高先生の目を通して見た動物たちの暮らしぶりがエッセイとしてまとめられたものである。日高先生が書かれた動物の暮らしぶりを子どもの頃に読んでこの道に足を踏み入れた研究者も多いのではないかと思うが、これまでに書かれた動物に関するエッセイと同じような書き方がされている。ちょっと気になる動物の変わった暮らし方にはそれなりの理由があるのだ、ということが書かれている。
第2章は、第1章より取り扱われている範囲が広く、自然観や地球環境についてもふれられている。地球温暖化関して、京都議定書や二酸化炭素排出権取引についての懸念が書かれており、これについては養老孟司氏や池田清彦氏と同様の立場だと思われるが、書き方はかなり控えめである。『ぼくにとっての学校』では、日高先生の本音と思われることがかなり強い調子で書かれていたので、死が見えてきたと思われるこの時期に、こんなに控えめに書かなくてもよかったのではないかと思われるのだが、本書が書き下ろしではなく、新聞の連載だったからなのかも知れないし、こういう書き方をすることが日高先生の「格好良さ」なのかも知れない。
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