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2010年3月 7日 (日)

花里孝幸著『自然はそんなにヤワじゃない』

花里孝幸著『自然はそんなにヤワじゃない 誤解だらけの生態系』
新潮選書
ISBN978-4-10-603639-2
1,000円+税
2009年5月25日発行
175 pp.

目次
まえがき
第一章 生物を差別する人間
邪魔者扱いされる雑草;すばらしい庭でしょう;虫けらはバカものか;やがてロボットになる人間;差別される微生物;クジラだけがなぜ贔屓される;微生物は環境浄化の万能選手ではない;嫌われ者のユスリカが人を助ける;ドジな犬がヒロインになるとき;アマゾン奥地の未開民族が問いかける;誰もが満足する環境はあり得ない
第二章 生物多様性への誤解
生物多様性と直感;プランクトンは殺虫剤にどう反応したか;大型種ほど殺虫剤に弱い;殺虫剤が生物多様性を上げる;汚れた湖の方が生物多様性は高い;食物連鎖とエネルギー;水域で矛盾することを望む人間;洪水が河川の生物多様性を上げる;洪水と人間社会;「見えない」と「いない」は大きなちがい;ビルや道路も多様性に貢献
第三章 人間によってつくられる生態系
温暖化で増える生物もいる;見えることの落とし穴;大きさで異なる生存戦略;人間の攪乱を喜ぶ生物;r-戦略者が優占する生態系;r-戦略者がつくる食物連鎖;連鎖のルートは変わる;かつてある生物が地球環境を激変させた;人間が生態系を変えた後
第四章 生態系は誰のためにあるのか
存在するだけで影響を与えている;故郷は人によってちがう;冷静に水田をながめると;水田の我田引水;里山は人間と自然のせめぎあい;昔ながらの景観の意味;生態系は人類のために;地球に人間はいらない;少子化社会の維持を;火星人に学ぶ;主観的な生態系の危うさ
参考文献

 「生物多様性」、「生態系」、「里山」、「水田」、「農薬」などについて言及している点で、ほぼ同じ時期に出版された高橋敬一著『「自然との共生」というウソ』と通じるところがあるが、著者が置いてる目線はかなり異なっていると思われた。本書の表題は『自然はそんなにヤワじゃない 誤解だらけの生態系』となっているが、「自然はそんなにヤワじゃない」という表現は、やや誤解を与えかねないものだと思われた。本書を読み終えての感想としては「自然はそんなに単純ではない」すなわち「自然は人間の思うままにならない」というところだ。
 本書には、生態学を学んだことがないような人に対する入門書のような役割も感じられる。本書の著者は物質とエネルギーの流れに重きを置いているようで、その点ではオダム流の生態学のように思われる。もちろん本書だけで生態学を理解できるとは思わないが、自然の仕組みについて基本的なところは押さえているように思われた。
 人間と生態系の関係については、第三章、第四章で触れられているが、人間は自分が生まれ育った環境を心地よく感じるという指摘は『「自然との共生」というウソ』と同様であるが、『「自然との共生」というウソ』と較べると、突っ込みが足りないように思われた。何が問題か、という点に関しては『「自然との共生」というウソ』の方が本質を突いていると思う。が、その前に本書を読んでおくのも悪くはないと思う。
 本シリーズの本としては、吉村仁著『強い者は生き残れない』を読んだ。どちらも読者層として、あまり生物学を知らない人を対象にしているように感じられたが、本シリーズの方針なのだろうか?どちらも、ちょっと物足りない感じがした。

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コメント

は、早いですね、読むの。

著者の専門がプランクトンの生態ということで、そこからの視点が新鮮でした。

ただ、例えば殺虫剤を使う、などの人為的な擾乱による多様性の増大については、著者が微生物に目がいっているためか、大型種が絶滅する(少なくとも地域個体群が絶滅する)ことがある、そして、ひとたびそうなれば、それが二度と戻らないという視点がすっぽり抜けているように思いました。プランクトンならば、すぐに復活するでしょうけども。

>本書の著者は物質とエネルギーの流れに重きを置いているようで

うーん、なるほどという感じです。

>どちらも読者層として、あまり生物学を知らない人を対象にしているように感じられたが、

私もそうですが、生物学を知らない人が世の中の大多数なので、本を売るためには当然ではないでしょうか。どう考えても一般向けのシリーズですし。

ちなみに、吉村仁著『強い者は生き残れない』は、すでに読んでいました。
http://plaza.rakuten.co.jp/konton57/recommend/

投稿: 混沌 | 2010年3月 9日 (火) 01時48分

混沌さん、コメントありがとうございます。
 確かに著者の専門がプランクトンであるだけに、陸上の植物や動物を見ている者にとっては、違和感があったかも知れません。
 この本は一般向けかも知れませんが、『自然はそんなにヤワじゃない』という表題から期待されるほどの迫力が感じられなかったのが、物足りなく感じた理由かも知れません。

投稿: Ohrwurm | 2010年3月 9日 (火) 19時13分

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