西田隆義著『天敵なんてこわくない』
西田隆義著『天敵なんてこわくない 虫たちの生き残り戦略』
八坂書房
ISBN978-4-89694-909-4
2,000円+税
2008年6月5日発行
206 pp.
目次
1章 自然における天敵の役割
疑問のきっかけ−食うものと食われるもの−;天敵による制御は本当にないのか?;天敵による制御をもたらすロジック
2章 適応をいかにして説明するか?
3章 スペシャリスト捕食者と被食者の関係−熱帯林での実態−
研究のきっかけ−隔離されたカメムシの集団−;ホシカメムシの繁殖の実態;捕食圧の操作実験−野外における検証−
4章 天敵導入による検証−寄生蜂とカイガラムシ−
応用研究との接点;天敵導入の効果とその理由−ヤノネカイガラムシを例に−;寄生回避のコスト;寄生回避の進化
5章 身近な生物にみる天敵の影響−日本の休耕田での実態−
普遍化を目指す;休耕田でカエルはなにを食べているのか?;バッタの捕食回避策−死にまねは有効か?−;休耕田における鳥の捕食と自切−生き残りのコスト−;みつからないための工夫−隠蔽色と紋の効果−
6章 捕食回避の生態学的意義
あとがき
文献一覧
索引
著者の西田隆義氏は、ぼくが大学院に入ったとき、同じ研究室に机を置いていた先輩である。その当時は、オオツマキヘリカメムシというカメムシを材料にして、配偶システムに関する進化生態学的な研究をされていた。近年は捕食者による非致死的効果が被食者に与える影響を様々な視点で研究されていた。
捕食者と被食者の関係を見ようとしたとき、捕食者がどんな餌種をどれだけ食べたかを調べるのがオーソドックスなやり方だ。西田氏はそれだけでは十分ではないと考える。現在見られる捕食者と被食者の関係は、自然選択の結果、隠されてしまった部分がたくさんあるというのだ。表面からは隠されてしまってる捕食者と被食者の関係を見つけ出そうという過程で、西田氏が何を考え、それに対してどんな実験系を組み立て、どのようなことを明らかにしたかが本書の中に紹介されている。
捕食者と被食者の関係というのは、古くから生態学的に研究されてきた課題だが、このようなアプローチの仕方もあるのかと感心させられた。知的好奇心が満たされる好著である。読むべし。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
この本、去年読みました。
いやあ、面白かったですね。
久々に知的興奮を味わったという感じです。
この本はおススメですね。
八坂書房のこのシリーズは面白い本が多いですね。
投稿: 混沌 | 2010年4月 9日 (金) 11時29分
混沌さん、コメントありがとうございました。
著者がどのように考えたか、ということを読み取ることができる本は、やはり読んでいてワクワクします。
投稿: Ohrwurm | 2010年4月11日 (日) 08時54分