第54回日本応用動物昆虫学会3日目@千葉大学
学会も最終日。今日は朝から夕方まで一般講演で、夕刻に小集会。面白く感じたものをいくつか。
まずは午前の部。
・安藤喜一「カマキリタマゴカツオブシムシの夏世代はカマキリの孵化済みの卵包で育つ」
年1世代のカマキリ(オオカマキリ、チョウセンカマキリなど)の卵に寄生するカマキリタマゴカツオブシムシが、カマキリの卵そのものがなくなってしまった後の卵包を利用して年2世代の生活史を成り立たせていることが紹介された。卵に比べれば栄養価が低いと思われる卵包を利用するというのは、かなり予想しづらいことだと思われるが、そういうことになっているらしい。
・寺尾美里・廣瀬譲・新谷喜紀「マメハンミョウにおける早熟変態の適応的意義」
マメハンミョウが過変態することは本で読んで知っていたが、実際に擬蛹がどんな形をしているか、ということなどは知らなかったので、それが紹介されただけでも面白かったが、餌条件が悪いときには、そのときの日長条件などにより、擬蛹のステージを飛ばして4齢幼虫から直接蛹になってしまうこともある、ということで面白く感じられた。擬蛹を経過することなく成虫になれるなら、何も擬蛹というステージを経過しなくてもよさそうなものだが、どういう理屈なのだろうか。マメハンミョウは変な虫だ。
昼は大学の生協の食堂で三重県のNさんと一緒に食事。食事が終わった頃、安藤喜一先生に声をかけられ、講演のあとで質問したことについて、再度説明していただいた。光栄である。
昼休みが終わったあとは、学生会員によるポスター発表のポスター賞の発表と表彰。19名が表彰された。受賞者の中には、ハンミョウの発表をしていた辻かおるさんの名前もあった。
午後一番は自分の発表。オチらしいオチの無い話なので、自分で喋っていても、今ひとつ気分が乗らない。その後はずっと同じ会場で、自分が参画しているプロジェクト関係の発表を聞いた。どれもプロジェクトの会議で少なくとも一度は聞いた話である。みなさん、大変な苦労をされてデータを取っているのはわかるが、明瞭な結果が得られるという話でものないので、自分を含め、なかなか辛いものがある。
夕刻は、「侵略的外来昆虫問題その2:植物防疫の現在と未来」に出た。2日目に「その1」が行われ(自分は他の小集会に出ていたので出ていないが)、外来生物法から見た話題提供と議論が行われたとのことだが、今日の「その2」は植物防疫法から見たもので、以下の4題の話題提供があった。
・森本信生「日本の外来昆虫相の特徴」
・増田俊雄「アシグロハモグリバエの発生状況−トマトハモグリバエとの関係は?−」
・徳田 誠「侵入害虫としてのゴール形成タマバエ類」
・佐藤 雅「日本の植物防疫について」
どの話も興味深かったが、日本の植物防疫のシステムについて、これまで曖昧にしか知らなかったので、佐藤氏の話を聞いて大変勉強になった。分類学の研究者との関係、植物防疫官の養成のシステム等々、現状にはいろいろ改善が望まれる点があることが理解できた。植物検疫は、新しい病害虫が入ってしまってから防除にかかるコストのことを考えれば、もっとコストをかけても良いことだと思うが、公務員の人件費が減らされている現状では、人員を増やすことも難しいことなのだろうなぁ。
小集会が終わったあとは、例によって飲み会が準備されていたが、風邪気味なのでまたもやパスして、一人で千葉中央駅の近くで担々麺を食べた。安い割には、まあまあうまかった。
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コメント
遅ればせながら、小集会にご来場いただきましてありがとうございました。
防疫所の人員は劇的に増やすのは難しい状況ですので、システムを改善して侵入する病害虫を減らすのが現実的だと考えています。
こういったことをテーマに来年以降も継続して開催していく予定ですので、またよろしくお願いいたしますm(_ _)m
投稿: まーしゃる | 2010年4月 4日 (日) 08時52分
まーしゃるさん、コメントありがとうございます。
来年以降も、他のもっと魅力的な小集会とカブらない限り、参加させていただくつもりです。
リスクとコストの関係は、なかなか判断が難しいところではあると思います。小集会で議論があったとおり、植物検疫官の採用にあたっては、採用してから訓練して養成するだけではなく、訓練された者を採用する、というコースがあるべきだと思います。でも、人事システムを変えるのも難しいのかなぁ?
投稿: Ohrwurm | 2010年4月 4日 (日) 10時15分
採用システムは植物防疫所や農水省がどうこうできる問題ではなく、人事院の所管なのでいかんともしがたいところがあります。
公務員全体の採用システムがどうなのかという議論になってしまうと思うので、主張が通じるかどうか。
本当に選考採用ができればいいんですが、植防のシステムを変えるより難しいように思えます。
投稿: まーしゃる | 2010年4月 7日 (水) 01時23分