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2010年2月21日 (日)

養老孟司・竹村公太郎著『本質を見抜く力』

養老孟司・竹村公太郎著『本質を見抜く力−環境・食料・エネルギー』
PHP新書 546
ISBN978-4-569-70194-3
760円+税
2008年9月30日発行
245 pp.

目次
まえがき 養老孟司
第一章 人類史は、エネルギー争奪史
第二章 温暖化対策に金をかけるな
第三章 少子化万歳!−小さいことが好きな日本人
第四章 「水争い」をする必要がない日本の役割
第五章 農業・漁業・林業 百年の計
第六章 特別鼎談 日本の農業、本当の問題(養老孟司&竹村公太郎&神門善久)
第七章 いま、もっとも必要なのは「博物学」
あとがき 竹村公太郎

 養老孟司氏と竹村公太郎氏の対談である。第六章は農業経済学が専門の明治学院大学経済学部教授の神門善久氏が加わった鼎談となっている。
 竹村公太郎氏は河川行政畑を歩いてきて、国土交通省の河川局長まで務めた人であるが、本書の読む限りにおいて、様々なデータをもとに、環境問題をはじめとする、様々な問題について考察してきた人だと言うことがわかる。養老孟司氏については、あらためて説明する必要もないと思う。第六章に登場する神門善久氏は『日本の食と農』(NTT出版)で2006年にサントリー学芸賞、2007年に日経BP・BizTech図書賞を受賞した人である。
 あとがきで竹村氏は、文明は下部構造と上部構造で構成されていて、下部構造は安全、食料、エネルギー、交流の四つの柱からなっていて、その上に政治、経済、産業、法律、学問、宗教、医学、芸術、スポーツなどのすべての人間活動からなっていると捉えていると述べているが、本書では、下部構造をしっかり見通す力を持つことが重要であるということが、対談によって明らかにされている。
 環境、食料、エネルギーのいずれの問題についても、人文科学的に実体のない概念だけで考えるのではなく、自然科学的にモノに立ち戻って考えることが、本質に近づくために必要であるということが述べられていると感じた。政治や経済についても、自然科学的にモノを理解している人が動かしていないことが問題である、と述べられているが、そのとおりだと思う。しかし、人間の活動が本格的に困るようになるまで、そのようなことが理解されるようになるとは思えないので、将来は暗いように思える。
 第六章では神門善久氏が加わって農業の問題が語られているが、ぼくの知らないことと言うか、普段気にしていなかったことに多くの病理を抱えていることが語られていて、自分自身反省すべき点が多いと感じさせられた。要するに、ぼくは「農業に被害を与える害虫の問題を、いかに環境に負荷を与えずに解決するか」という狭い問題の中だけに閉じこもっていて、農業全体の問題を理解していない、ということだ。片手間農家や農地持ち非農家のような「農家らしからぬ農家」の問題は、ぼくの普段の仕事の中でも意識しておかなければいけないと感じた。神門氏の『日本の食と農』は、今後読むべき本として記憶しておかなくてはならないと思う。

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