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2010年2月 7日 (日)

福岡伸一著『もう牛を食べても安心か』

福岡伸一著『もう牛を食べても安心か』
文藝春秋 文春文庫 416
ISBN4-16-660416-3
720円+税
2004年12月20日発行
242 pp.

目次
はじめに−狂牛病が問いかけたもの
第一章 狂牛病はなぜ広がったか−種の壁を超えさせた“人為”
 【コラム1】狂牛病をBSEと呼ぶべきか?
 【コラム2】海綿(スポンジ)状脳症に共通的な特徴
 【コラム3】もう一つのヤコブ病−日本発、薬害ヤコブ病事件
第二章 私たちはなぜ食べ続けるのか−「動的平衡」とシェーンハイマー
 【コラム4】タンパク質代謝の研究前史
第三章 消化するとき何が起こっているのか−臓器移植、遺伝子組み換えを危ぶむ理由
 【コラム5】科学実験の失敗をめぐる判断の難しさ
第四章 狂牛病はいかにして消化機構をすり抜けたか−異物に開かれた「脆弱性の窓」
第五章 動的平衡から導かれること−記憶は実在するのだろうか
 【コラム6】グルタミン酸をとると頭がよくなる?
第六章 狂牛病病原体の正体は何か−未知のウィルスか、プリオンタンパク質か
第七章 日本における狂牛病−全頭検査緩和を批判する
 【コラム7】エライザ法とウェスタンブロット法
おわりに−平衡の回復
主な参考文献

 狂牛病は大変な騒ぎになったが、このところ狂牛病にまつわる話を耳にすることはほとんどなくなった。喉元過ぎれば何とやら、であろうか。それとも、しっかりと検査体制が敷かれることになって、問題とならなくなったのであろうか。
 本書の著書である福岡伸一氏が狂牛病に関する発言をしていることは知っていたが、これまでに著書を読むことはなかった。しかし、最近福岡氏の著書を何冊か読んだことにより、福岡氏の生命や環境に対するモノの見方には共感する部分が多いので、いささか時期外れの話題かと思ったのだが、福岡氏の狂牛病に関する著書を読んでみることにした。本書が書かれたのは2004年。アメリカからの牛肉の輸入が、まだ止まっていた時期だと記憶している
 福岡氏は本書に限らないが、後の著書の表題ともなっている、ルドルフ・シェーンハイマーによる『動的平衡』の考え方に重きを置いている。万物は原子の流れの中に作られたよどみ、あるいは結び目のようなものに過ぎない、という考え方である。
 本書は、狂牛病の問題点がどこにあるのか、ということを生物学的、政治的、経済的な側面から指摘したものであるが、その中で『動的平衡』の考え方についても、かなり詳しく説明している。
 狂牛病の問題点の一つとして、人間の都合だけで生物を操作し「効率的な」システムを作ったことにある。「効率的な」システムは、目先の効率だけを見たもので、生命現象としてとらえれば、実は無理があったシステムであった。栄養価が高い肉骨粉は本来子牛が食べるべきものではなかったのである。
 (アメリカ政府から圧力がかかったと言われている)検査体制の緩和についても、強い口調で批判している。ぼくなりに理解したところでは、特定危険部位を取り去れば安全というものではなく、特定危険部位とされている脳、脊髄、脊柱、遠位回腸などは病原体が集積しやすい場所というだけで、それ以外の場所でも低い濃度ながら病原体が存在しており、特定危険部位を検査すればより確実に病原体を検出できる、ということのようである。福岡氏は、全頭検査しなければ、検出から漏れた病原体が広がってしまう危険性も指摘している。また、全頭検査すれば、未だに全貌が明らかになっていない狂牛病の本質に、少しでも近づくことができることを指摘している。若い牛を検査から除外してしまった場合の危険性もまた指摘の対象となっている。狂牛病が人為による事故であることも指摘しており、全頭検査すれば、狂牛病が広がる可能性を確実に下げることができるとも指摘している。
 結びでは、福岡氏の生命や環境に対する考え方が書かれているが、自然を無理に改変したらそのしっぺ返しが来るという点は、ぼくには大いに同意できるところである。

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コメント

情報、ありがとうございます。

米国は、自国内で禁止している部位を輸出用には認めている、と聞いていたので、ふざけるな!と理論よりも感情として「牛肉は、米国産だけは絶対に買わない」を貫いて来ました。この日記を読んで、同じ姿勢を続けようと改めて決意しました。

投稿: でんでんむし | 2010年2月 9日 (火) 02時07分

でんでんむしさん、こんにちは。
もっとひどいと思ったのはイギリスですね。肉骨粉が原因だとわかってから、自国で使用が禁止されたら、それを輸出にまわしている。
そのほかにも、示唆に富むことが書かれていますし、読みやすい、引き込まれるような文章ですから、ご一読を!

投稿: Ohrwurm | 2010年2月 9日 (火) 07時40分

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