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2010年1月24日 (日)

朝日新聞出版編『天皇陛下科学を語る』

朝日新聞出版編『天皇陛下科学を語る』
朝日新聞出版
ISBN978-4-02-330452-9
2,000円+税
2009年10月30日発行
141+97 pp.

目次
I 天皇陛下のご講演と執筆原稿
 リンネと日本の分類学−生誕三百年を記念して−(英文も収録)
 天皇皇后両陛下 ヨーロッパ諸国ご訪問に際しての記者会見
 日本の科学を育てた人々(英文も収録)
 ハゼ科魚類の進化
 チャールズ二世メダル受賞に際しての天皇陛下ご挨拶(英文も収録)
II 天皇陛下の研究について
 陛下とハゼの分類学 渡辺 允(英文も収録)
 対談 科学者としての天皇陛下 日高敏隆×安野光雅
 天皇陛下のご論文・著作リスト
●研究論文
 ウロハゼの学名について(抄)
 日本産ハゼ科魚類カワアナゴ属の4種について(抄)

 図書館でふと目に留ったので借りてきて読んだ。
 今の天皇がハゼの分類の研究をしている(していた)ことは、テレビや新聞の報道で知っていたが、中身については何も知らなかった。
 この本を読めば、天皇陛下が一人前の分類学者であることが十分に理解できる。研究結果の発表についても、大変慎重な態度をとられているようである。今の職業研究者は、成果を上げることを要求されるので、自分の納得できるところまで時間をかけられることは少ないので、そのようなことを要求されないことについては羨ましいと思う。
 さすがに天皇に即位してからはご公務が多忙になり、皇太子時代ほど研究に充てられる時間がなくなったようであるが。普通の人であれば、定年になって時間ができると自分の好きな研究に没頭できるところだが、天皇陛下は生涯公務に時間を割かれるわけで、今後研究に没頭できる時間を持つことができないのは残念である。
 分類学は生物学の他の分野、例えば生態学や生理学や発生学と較べると、時間に拘束されることが少ない。極論すれば、標本と文献さえあれば、いつでも研究できると言っても良い。天皇陛下が分類学を選ばれたのは、そのあたりの事情があるようだ。
 分類学のこともさることながら、驚いたのは、天皇陛下が日本の江戸時代以降の近代科学史についての知識も豊富にお持ちだと言うことだ。この点については、ぼくは足元にも及ばない。

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