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2009年12月 6日 (日)

三重昆虫談話会2009年度例会

 三重昆虫談話会2009年度例会に出席するため、四日市の郊外にある三重県環境学習情報センターに出かけた。毎度のことながら、車で行かなければいけない不便な場所だと思う。
 去年の例会は、去年の7月に亡くなった市橋甫さんを偲ぶ会になったが、今年は例年どおりの講演2題が予定されていた。そのうち一つは、自分も現場に僅かながら関わっていたので、どんな講演になるのか楽しみだった。
 会長の挨拶や会務報告などのあと、以下の2題の講演があった。
1) 三重県にフェモラータオオモモブトハムシSagra femorata (Drury)が定着か(秋田勝己・乙部 宏・中西元男)
2) ダイコクコガネCopris (Copris) ochus (Motschulsky)(稲垣政志)

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 まず最初の講演。演者は秋田勝己氏。今年の7月、松阪市在住の蝶屋の中西元男氏により、フェモラータオオモモブトハムシが発見された。フェモラータオオモモブトハムシは元々日本には分布していない種だが、東南アジア一帯には広く分布していて、現地では比較的普通に見られる種だ。ハムシの仲間としては非常に大型で、金属光沢があり美しい。中西氏の情報を元に、主に秋田・乙部の両氏による精力的な調査が行われ、松阪市のある地域においてフェモラータオオモモブトハムシが定着していることが確実であるという状況証拠が得られた。情報を辿って行くと、発見地近傍にかつて存在していたペットショップで数年前にフェモラータオオモモブトハムシが売られていたということだ。ということで、人為的に移入された個体が何らかの理由により逸脱し、定着してしまったということになる。熱帯地域にしか分布していない種が、冬にはそれなりに寒くなる三重県に定着してしまったとはかなり意外性があると思う。外来種というと何かと目の敵にされるが、このような美麗種だとついつい許してしまいたくなる。主な寄主植物はクズで、1年性の植物には寄生できないようなので、害虫として問題になることはないだろうと思う。

これはぼくが今年8月8日に撮影したフェモラータオオモモブトハムシの写真。情報を提供いただいた乙部氏には感謝。やはり、美しい虫を撮る(採る)と嬉しい。
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 稲垣氏の講演は野外におけるダイコクコガネの特に繁殖を中心とした生態調査の紹介。ダイコクコガネは様々な理由により、全国的に個体数が減少しているが、今でも比較的たくさん棲息している大分県まで足を運んで調査された。ダイコクコガネの餌である牛糞をあらかじめ日数を変えて野外に設置し、ダイコクコガネによって土の中に掘られたトンネルの中の様子を土を掘り返して観察しようという相当手間がかかる調査だ。ダイコクコガネの繁殖生態についてはある程度明らかになっていると思うが、おそらく実験的な条件での観察に基づいて得られた知見によるもので、このような実際の野外で観察しようという試みは、これまでほとんど成功していなかったと思う。土の中のトンネルの中で発見されたダイコクコガネの幼虫の餌になる糞球やその糞球を作っている成虫の様子や、ダイコクコガネに労働寄生するツヤマグソコガネの野外生態写真が紹介された。ツヤマグソコガネは動きが素早く、野外で写真を撮るのは大変難しいとのことだ。
 ツヤマグソコガネの生態の話を聞いて思い出したのが鳥飼否宇の小説『昆虫探偵~シロコパκ氏の華麗なる推理』。クマバチのシロコパκという探偵が活躍して、昆虫の世界に起こった様々な事件の謎を解いていくのだが、この中でツヤマグソコガネの生態が紹介されていた。この小説は、かなり詳しい昆虫の生態に関する知識に基づいて書かれているので、虫屋が読むとかなり面白いのではないかと思う。この小説を紹介してくれたT氏には感謝!

 講演が終わった後は、全員が順番に自己紹介。昆虫を趣味とする人の高齢化がいわれて久しいが、小中学生が3名もいてビックリ。本当に若い虫屋は絶滅危惧種だと言われているので、我々年長者が大切に育てていかなければいけないと思う。

 例会の後は懇親会も予定されていたが、帰りが遅くなるとキツいので失礼して帰ってきた。

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コメント

Ohrwurmさま

ご紹介をありがとうございました。これからも糞虫の不思議を追求してゆきたいと思います。まだ予備調査の段階ですが、これらの調査結果は少しずつでも発表してゆきたいと思います。

投稿: ドクトルふんふん | 2009年12月 6日 (日) 21時10分

こんばんわ。
私も本日参加予定をしておりましたが、急な用事ができ参加することができませんでした。ダイコクコガネの生態などぜひ聞いてみたかったのですが...。

投稿: 楽苦 | 2009年12月 6日 (日) 21時30分

こんばんは

本日は御出席ありがとうございました。

多数参加していただき会長、名誉会長ともども大変喜んでおられました。

ダイコクの糞玉の切断画像は見事でしたね!

投稿: シロヘリ | 2009年12月 6日 (日) 21時57分

みなさん、コメントありがとうございました。
 ダイコクコガネの話、大変面白かったです。ドクトルふんふんさん(とお仲間の皆様)の今後の成果を期待しています。

投稿: Ohrwurm | 2009年12月 7日 (月) 20時48分

美しいハムシ、ぜひ見てみたいです。熱帯産の昆虫なら、非休眠性と思われますが、成虫の出現時期はいつ頃でしょうね。
それにしても、もとはペットショップで売られていたとのお話。そもそも外来産ハムシなど売っていいんでしょうか。複雑な心境です。

投稿: JG | 2009年12月10日 (木) 22時11分

JGさん、こんばんは。
 Sagra femorataで検索すると画像はたくさん出てくると思いますが、やはり現物は良いです。
 休眠があるかどうかはわかりませんが、幼虫で越冬して、初夏に羽化するのではないかと想像されています。耐寒性さえあれば、休眠性の有無はあまり関係ないと思いますよ。安藤喜一先生が確かめたところによれば、雪国にも分布するオオカマキリの卵には休眠性が無いそうですから。
 外国産のハムシを持ち込むのは、明らかに違法です。でも、一度入ってしまったものを駆逐するのは困難ですから、経済的な被害が及ばない範囲なら大目に見るという選択肢もあると思います。

投稿: Ohrwurm | 2009年12月10日 (木) 22時49分

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