福岡伸一著『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』
福岡伸一著『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』
木楽舎
ISBN978-4-8634-012-4
1524円+税
2009年2月25日発行
254 pp.
目次
「青い薔薇」−はしがきにかえて
プロローグ−生命現象とは何か
第1章 脳にかけられた「バイアス」−人はなぜ「錯誤」するか
第2章 汝とは「汝の食べた物」である−「消化」とは情報の解体
第3章 ダイエットの科学−分子生物学が示す「太らない食べ方」
第4章 その食品を食べますか?−部分しか見ない者たちの危険
第5章 生命は時計仕掛けか?−ES細胞の不思議
第6章 ヒトと病原体の戦い−イタチごっこは終わらない
第7章 ミトコンドリア・ミステリー−母系だけで継承されるエネルギー産出の源
第8章 生命は分子の「淀み」−シェーンハイマーは何を示唆したか
あとがき
ワトソンとクリックによるDNAの構造解明以降、「生物は遺伝子、分子へと還元すれば理解できる」という考え方が主流となっている。本書は様々な視点から、そういう流れに対して、「はたしてそうだろうか」と疑問を投げかけている。
本書全体を通して、生命は物質の流れのなかの動的な平衡状態として理解すべきだ、ということが貫かれている。
ぼく自身、生命現象を還元的に理解することに対して常々疑問を持っていたので、本書はその多くの疑問に答えてくれたように思う。
池田清彦氏によるところの、システムとして生命現象を捉える観点と通じるところがあるように感じられた。
福岡伸一氏の著書は何冊か読んだが、いずれも落ち着いた語り口で、大変読み易いと思う。本書も、生物学を専門にしていない人にとっても読み易いものだと思う。
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コメント
σ(^^は『世界は分けてもわからない』(講談社新書2009.8)を読みました。
ラストは「動的平衡でまとめていますが、トリプトファンやチロシンというアミノ酸の脳細胞での挙動に始まって、コーネル大学生物科学部生化学研究室での実験データ偽装事件の顛末の描写で終わる全編、実際の「動的平衡」をめぐる科学者たちのミステリアスなお話満載です。
法的に人の死を「脳死」で定義すると、法的な生命の発生は胎児に脳細胞ができたあたりか・・とする指摘も、生物分類や臓器移植の話と絡めて、興味深かったです。
》本書も、生物学を専門にしていない人にとっても読み易いものだと思う。
書店でちらっとめくりましたが。一見、とっつきにくい雰囲気でした(^^ゞ
読んでみます!
投稿: こけた | 2009年10月25日 (日) 15時38分
こけたさん、コメントありがとうございます。
最初に『世界は分けてもわからない』を読もうと思っていたのですが、図書館の本は貸し出されていて、今日やっと借りることができました。福岡さんの書き方もうまいと思うのですが、途中で読むのを止めることができず、一気に読み終えてしまいました。これも、項目をあらためて読後感を書こうと思っています。
投稿: Ohrwurm | 2009年10月25日 (日) 18時15分