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2009年8月13日 (木)

池田清彦+養老孟司著『正義で地球は救えない』

池田清彦+養老孟司著『正義で地球は救えない』
新潮社
ISBN978-4-10-423105-8
1000円+税
2008年10月25日発行

目次
はじめに(池田清彦)
I ニセモノの環境問題(池田清彦)
1 「地球温暖化脅威論」こそ脅威
2 北海道洞爺湖サミットでわかったこと
3 日本にエネルギー戦略はあるか
4 生物多様性の保全という「正義」
5 人口−ほんとうにほんとうの環境問題
II 人間と環境のあいだ(池田清彦×養老孟司)
1 ねじれた正義
2 人間は環境を乱暴に見ている
3 エネルギー問題のゆくえ
4 ほんとうの「エコ生活」とは
あとがき(養老孟司)

 今日から夏休みを取った。特に用も無いのに出かけるのはエネルギーの無駄遣いなので、図書館で借りて本を読むのは良い選択肢だと思う。
 本書は両著者よにる『ほんとうの環境問題』の後を受けたような位置付けになっているが、内容については『ほんとうの環境問題』と大きく変わるところはないので、『ほんとうの環境問題』を読んでいても読んでいなくても関係ないと思われる。
 本書の著者である池田清彦氏も養老孟司氏も、世間一般の考え方とはちょっと違った考え方を持っている人である。おそらく、ぼく自身の物事の考え方も、世間一般よりも池田氏や養老氏により近いと思う。だから、本書を読んでいても、あちこちで「そうだそうだ」とうなずきながら読むことになった。
 京都議定書を批准したことは政治的に失敗だった、と池田氏は指摘しているが、それは1990年を基準に二酸化炭素の排出基準を決めたことは、それ以前に日本はいわゆる省エネをかなり達成していたので、それ以上に二酸化炭素の排出を減らすことが極めて困難であることがであるのに、日本政府は議長国として良い格好をするためだけに受け入れたからである、という理由である。それはともかく、本書では二酸化炭素の排出などは些末な問題であると言い切っている。本当の問題は、エネルギー問題であり、人口問題であり、石油の供給量を減らせば二酸化炭素の問題は解決するはずなのに、石油の供給を増やして二酸化炭素を減らせというのは馬鹿げていると言い切っている。そのとおりだと思う。2008年7月の洞爺湖サミットでも、具体的なことが何も決まらなかったことを池田氏は評価しているが、なるほど、と思った。資源もエネルギーもない日本は、石油エネルギーが使えるうちに、それを使って代替エネルギーを開発するために、石油の消費を増やさなければえらいことになる、と指摘しているが、まさにそのとおりだと思う。
 生物多様性の問題にしてもそうである。来年名古屋で生物多様性に関する締約国会議が名古屋で開催されることが決まっているが、日本では、「生物多様性を守ろう」=「環境を保全しよう」というお決まりの表面的な考え方だけで動いており、生物多様性の何が問題で何が大切であるのか、少なくとも一般の人が理解できるような報道はなされていない。本書では、その点についても様々な指摘がされている。些細な話だが虫屋の立場から見た場合、絶滅が危惧されている種を採集すると罰せられるのに、ダムなどの人工物を作ってその環境を破壊して何のお咎めも無いのはおかしい、と。さらに、種の保存のためなら、人工増殖をすれば良いのに、一般の人が天然記念物に指定されている種を採集して人工増殖をすることは許されていないのはおかしい、と。要するに、何が大切なのか、政治家や役人や経済学者はわかっていない、と言っている。
 『ほんとうの環境問題』でも言えることだが、本書は、いわゆる常識に囚われてしまって見えにくくなっている本当に大切なことが何であるかを再認識させてくれる意味で、目を覚まさせてくれる本だと思う。
 本書の最後の方では、画一的な考え方でなく、考え方にも多様性があった方が良い、と指摘されている。原理主義ではまずいのである。そういう意味で、基準からはずれた人間が叩かれる日本という国は、考え方の自由が許されにくいという意味では北朝鮮よりもヤバいかも知れないと指摘されているが、それにも同意できる。
 普段の生活の中で様々な束縛感を感じているぼくとしては、本当は何事も「ほどほど」が良いと思っているが、本書でも「ほどほど」が良いと指摘されており、少し気が楽になったように思える。

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コメント

>特に用も無いのに出かけるのはエネルギーの
>無駄遣いなので

そういうことを言ってはいけません。今のうちにフィールドに出て「光合成」をしておかないと冬を乗り越えられません。

本を読んでいる場合ではありません(笑)。

投稿: Zikade | 2009年8月13日 (木) 17時15分

Zikadeさん、こんにちは。
本は読んでましたが、セミの声も聞きに出かけました(次の記事をご参照ください)。

投稿: Ohrwurm | 2009年8月13日 (木) 18時37分

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