池田清彦著『そこは自分で考えてくれ』
池田清彦著『そこは自分で考えてくれ』
角川学芸出版
ISBN978-4-04-621399-0
1400円+税
2009年3月15日発行
目次
法的規制とマイノリティーの権利
マイナーな普遍
民主主義のセキュリティー
世界最大の難問−人口問題編
世界最大の難問−エネルギー編
クレーマーは不治の病なのか
コニュニケーション不全社会
京都議定書のカラクリ
食と性の分かち合い
抹殺されるマイノリティー
デタラメな法律をつくること
虫を採りにラオスへ行く
アモク・シンドロームの行方
温暖化より危ないこと
暴走する正義
安全な場所に住む
国家は何のためにあるのか
分類とシステム
あとがき
本書は、角川学芸WEBマガジン(2007年7月から2008年12月)に掲載された「ものの見方について−イデオロギーのはざまで」を改題し、単行本化されたものである。
また池田清彦である。学生時代に池田氏の「構造主義生物学とは何か」を読んで、中身を皆目理解できず、ずっと池田氏の著書を避けていたが、構造主義生物学とは直接関係のない氏の本を読むと面白く、ついついはまってしまったというところである。
「そこは自分で考えてくれ」とは随分いいかげんで無責任なタイトルだが、要は、偏向した(池田氏によれば、日本の大新聞やマスコミはほとんどマジョリティーのみに与し、マイノリティを無視あるいは敵視しているというように偏向している)メディアの情報しか得られない一般国民に対して、情報を鵜呑みにしないで確かな情報をもとに自分で考えないとえらいことになりますよ、と言っているということだ。
めんどうな問題に出くわした時、ついつい自分が理解できるところまでは理解するが、そこで思考停止に陥ってしまうことはしばしばありがちである。本書(に限らず、生物学とは直接関係のない池田氏の著書のほとんどもそうだ)は、そこに警鐘を鳴らしてくれるような本である。
池田氏の考えの根底にあるのは、自由と平等の考え方である。今の世の中が、いかに不平等で問題の多いものであるかを、本書は教えてくれる。もっとも、これはぼく自身があまりに世の中の情勢の把握を怠っているか、ということにも関係しているが。無駄な法律が次々とつくられて、日に日に窮屈に感じているぼくにとって(本書に従えば、自分はマイノリティーに属する面が多いのだと思う)、本書はその理由を教えてくれているという点で、読んでいて気持ちがよくなる。
もっとも、ぼく自身の人生ももう半ばを過ぎていることは間違いないと思われるので、このような本は、これからの社会を動かす若い人に読んで欲しい。
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