佐倉統著「遺伝子vsミーム」
佐倉統著「遺伝子vsミーム」教育・環境・民族対立
2001年9月1日発行
ISBN4-331-85005-6
1,000円+税
廣済堂出版
目次
はじめに
第1部 ミームとは何か
1-1 メディアのミーム学
1-2 知識という生命体
第2部 遺伝子とミーム
2-1 利己的な複製子たち
2-2 ミームの恋愛
2-3 老年期の役割
第3部 文化の脊椎動物になるために
3-1 伝えることの意味
3-2 原罪としての環境問題
3-3 民族対立を越えて
あとがき
ブック&ウェブガイド
2001年発行の、この分野の本としては古い本だ。この本が発行された頃は石垣島に住んでいて、本を読むより自然を見る事を優先していたので、これまで読んでいなかった。
ミームとは、言うまでもなくリチャード・ドーキンスの著書「生物生存機械論(=利己的な遺伝子)」の中で作り出された概念だ。学生だった頃、ドーキンスの本(もちろん訳本だが)を読んで、大変面白い概念だと思った。
「遺伝子vsミーム」のあとがきの中で著者の佐倉氏は、ミームという概念はあまり評判がよくないようだ、と述べているが、この本を読めば、人間をとりまく社会や環境の問題を、ミームという概念を使うことによってよく理解できる。著者自身も述べているが、状況を理解できるだけであって、問題の解決にはあまり役に立たない、というところが評判がよくない原因ではないかということだ。
遺伝子は生物に寄生する生物的な自己複製因子だが、ミームは生物に寄生する文化的な自己複製因子だ。遺伝子とミームはしばしば対立するが、その対立をどのように解決するかが、人間がうまく生きて行けるかどうかの要点になるように思われる。
この本には遺伝子とミームの関係を見ることによって、教育、環境、民族対立などの問題がどこにあるのかがうまく説明されている。
佐倉氏の著書は、素人にとっても大変読み易く書かれていて、冷静で、大変好感が持てる。ミーム研究の最前線はどのようになってるかはわからないが、この本はミームの初心者にとって、良い入門書だと思う。
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コメント
最近あまり本を読まなくなったmodamaです。石垣島は「高層リゾートマンション訴訟」だの刺々しい時代になりました。
最近、住み着いた人の中には、そんなことしでかす人もいれば、何はさておき法に訴えて解決しようとする人もいます。
景観を守るとか言っても、景観を満たす空気そのものが違和感を覚えるようになりました。
でも、そんな中で「アンパルの自然を守る会」なる準備会に参加することになりました。
「何々を守る会」なんて好きじゃないのに。
「自然を守る」なんて嫌だ、嫌だ。
共に暮らして生きたいです。
投稿: modama | 2009年2月 8日 (日) 15時44分
modamaさん、ご無沙汰しております。ぼくが石垣島を離れてからまだ5年にもなりませんが、一昨年の夏に訪れたときにも、いろいろ変わっていたのが雰囲気が変わっていたのが肌で感じられましたので、その後もまたいろいろ変わっているんでしょうね。ぼくも原理主義的な「何々を守る会」というのは好きではありませんが、あまりにも環境の変化が激しいと、「現状を維持しようミーム」が発現してくるのも自然の流れだと思います。アンパルだけでなく、島全体をもっとゆったりとした流れの中に置いておけると良いですね。
投稿: Ohrwurm | 2009年2月 8日 (日) 16時44分
Ohrwurmさん、お久しぶりです。
modamaさんはじめまして。
modamaさんの最後の言葉、
>「自然を守る」なんて嫌だ、嫌だ。
>共に暮らして生きたいです。
に、強く共感しました。
(人が)自然を守る、というと、存在関係が「人>自然」となっているみたいで、思いあがった表現に思えてしまうのです。
少し外れるかもしれませんが、「地球にやさしい」のたぐいも、なんだか好きになれません。
投稿: でんでんむし | 2009年2月10日 (火) 12時32分
でんでんむしさん、オオカバマダラ羨ましかったですよ。
都市生活をしていると、自然を忘れがちですが、人間が自然の一部であることを忘れないようにしないといけませんね。でんでんむしさんのおっしゃるとおりです。
投稿: Ohrwurm | 2009年2月10日 (火) 20時58分