養老孟司/池田清彦/奥本大三郎 著『虫捕る子だけが生き残る』
養老孟司/池田清彦/奥本大三郎 著
「脳化社会」の子どもたちに未来はあるのか『虫捕る子だけが生き残る』
2008年12月6日発行
小学館 101新書 014
ISBN978-4-09-825014-1
700円+税
目次
まえがき
第一章 虫も殺さぬ人が人を殺す−虫の世界から見た教育論
第二章 虫が生きにくい社会にしたのは誰か−虫の世界から見た環境論
終章 虫が栄える国を、子どもたちに残そう−虫と共栄する未来へ
あとがき
12月6日の日本鱗翅学会東海支部第139回例会の折りに、特別講演の演者である著者の一人の池田清彦氏からも紹介があり、朝日新聞にも広告が出ていたので早く読みたいと思っていた。読むのが遅くなったのは、図書館にリクエストして、それが届くのを待っていたためだ。本代をけちろうと思っているのが主な理由というわけではなく(多少それもあるが)、面白いと思われる本は図書館買ってもらって、多くの人に読んでもらえた方が良いと考えるからだ。たかだか735円で買える本が買えないわけではない。
本書は、著者三名による鼎談を本にしたものである。この三名による鼎談を本にしたものには『三人寄れば虫の知恵』(洋泉社)があるが、本書は同じメンバーによる鼎談が12年ぶりに実現されたものだ。
この三人が集まれば面白くないはずがなく、実際に読んでみて、その場に居たいと思わせられる気になったのは、Zikadeさんと同じだ。しかしそれには、虫屋と自認している自分だからなのかも知れないと感じさせられる部分も多かった。明らかに誤りだと思われたり、言い過ぎだと思われたりする箇所はあちこちにあり、虫屋でない人に誤解を与えかねないと思われる部分も多々あった。特に第二章ではひどかったと思う。dantyuteiさんが批判する気持ちも理解できる。しかし、そこまで言いたい気持ちにさせられているのは、自分にはよくわかる。
全体としては、身近な自然的存在である虫という現実的存在を通して、頭の中だけで空想した仮想的(バーチャル)な世界だけではなく、決して人間が制御しえない現実的(リアル)な世界を、五感を通して理解することを重要性を強調しようとしていることは確かだと思う。
しかし現実問題として、自分が子どもだった頃と較べると、虫の数は明らかに少なくなり、特に街中では現実の虫に触れることすらままならないという現状では、身近なリアルな世界を体で理解する人間が、遠からず絶滅することは容易に想像できる。リアルな世界を体で理解できなくなった人間は、やがて絶滅するだろうし、頭の中だけで考えたことで政治や経済を動かしている社会の足元は、極めて危ういものだと言えると思う。そう言った意味で、『虫捕る子だけが生き残る』という本書の表題は、内容をよく表していると思う。
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コメント
面白いと思った本はすぐ読みたいからアマゾンで買います。 読むに値した本はいつ参照したくなるかわからないので、手元に置いておきます。
人それぞれですね。
投稿: 熊80 | 2008年12月30日 (火) 15時03分
熊はん、どうも。
図書館で借りてきて読んでみて、資料的価値が高いと思えば自分でも買います。引越のことを考えると、基本的にはなるべく本は増やしたくないんです。
投稿: Ohrwurm | 2008年12月31日 (水) 10時02分
私もかつては図書館を愛用しておりましたが、今は必要なもの、気に入ったものはだいたい買います。アマゾンも愛用。三省堂のようなところにも時々出没します。
たしかに嵩張りますね。うちの書庫ももう満杯状態になりつつあります。私の持分の書架2本でさえかなり塞がってしまいました。
アマゾンでミズテンで買って、「しょうもなかったなあ」と思わないといけないこともありますが、それは映画を同じで、それも含めて本に関わる楽しみではないかと考えています。
投稿: chunzi | 2008年12月31日 (水) 13時55分
chunziさん、我が家は人数が多いので、部屋の数が絶対的に不足しています。本を余裕をもって置く空間はありません。書斎が欲しいですなぁ。・・・家を買えってか!?!?・・・転勤が無ければねぇ。
投稿: Ohrwurm | 2008年12月31日 (水) 21時49分