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2008年10月23日 (木)

熊野の森ネットワークいちいがしの会編『明日なき森 カメムシ先生が熊野で語る……後藤伸講演録』

20081023blog1
熊野の森ネットワークいちいがしの会編『明日なき森 カメムシ先生が熊野で語る……後藤伸講演録』
吉田元重・玉井済夫監修
2008年10月10日発行
新評論
ISBN978-4-7948-0782-3
2,800円+税

 この本は、2003年に73歳で亡くなった後藤伸さんの講演を文章にしたものだ。後藤伸さんは、和歌山県生まれ和歌山県育ちで、和歌山県立田辺高等学校に長く教鞭を執られ、その傍ら紀伊半島の自然を見て、行動されてきた方だ。自然全般に関して様々な経験をされ、体で自然を理解しておられる方だ。
 と、このように書いたが、ぼく自身は後藤伸さんについて詳しく知っていたわけではなく、この本に収録されている講演録を読んで、そのように感じたのだ。
 後藤伸さんは、生物の中でも、昆虫のカメムシに特に造詣が深い。実は、1997年、ぼくが石垣島に移り住んだ年に、和歌山県の虫仲間と、宮本正一先生をはじめとするプロのカメムシ研究者等、総勢10名以上の団体で石垣島においでになり、そのときに一度お会いしてお話したことがある。そのときに記念写真を撮り、それは高橋敬一著「八重山列島昆虫記」(随想舎、2001年)の76~77ページに掲載されている。実を言えば、そのときは、こんなに壮大な思想の持ち主であることを知らなかった。もっとじっくりをお話をしていれば、ぼくのその後の生き方も変わっていたかも知れない。
 とにかく、この本はあまりに面白く、一気に読み終えてしまった。普通の人間は、物心ついた後のことしか思考が及ばないものだが、後藤伸さんは何百年、何千年という単位で自然の移ろいを想像できる力をもち、しかもそれを他の人に理解できる言葉で語ることができる、類稀なる人物だと言える。文献などで得た知識を持っていても、実体験を持っていない、いわゆる偉い学者の考えを一刀両断で斬り捨てていることなどは、痛快ですらある。実体験は重いのだ。
 昨今のエコロジーブームなど、この後藤伸さんの言葉を読めば、いかに浅はかなものであるかがわかる。これから自然を考える気のある人は、ぜひともこの講演録を読んで、自然を読んで考えるとはどんなことであるか、ということを理解して欲しいものだと思った。もちろん、ぼく自身もそうである。この講演録を読んで、目から鱗が何枚はがれ落ちたことか。
 亡くなった73歳という年齢は、最近にしてはちょっと早い。晩年は癌との闘病生活をおくられ、辛かったことだろうと思う。もう少し長く生きて、もっと多くのことを語って欲しかったと思う。 

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コメント

晩年の後藤先生とは2回ほどお会いする機会があり、最後にお会いしたときにはご自宅に泊めていただきました。すでに癌との闘病中でしたが、日本の自然について熱く語り合ったことが今でも心の大切な財産になっています。

投稿: ウミユスリカ | 2008年10月24日 (金) 08時07分

ウミユスリカさん、コメントありがとうございます。ぼくの視野が狭かったため、直接お会いするまで後藤伸さんという人物の名前を知りませんでした。この本を読んで、ものすごくスケールの大きな考え方のできる人だということを知り、驚いています。南方熊楠も紀州の人物ですが、紀州の自然はそういう人物を育てる魔力を持っているのかも知れないと思いました。

投稿: Ohrwurm | 2008年10月26日 (日) 22時07分

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