日本昆虫学会第68回大会3日目(2008年9月16日)
昨晩早めに寝た甲斐があって、体力と気力はほぼ復活したように思われた。朝食をとりに食堂に行ったら、キャラビッドさんとウミユスリカさんに会った。キャラビッドさんは昨日ぼくが出たのと同じシンポジウムに出ていたので、それに関する印象について意見を交換したところ、キャラビッドさんもぼくと似たような感想を持ったということがわかった。来年は地元三重大学で開催することになっているので、シンポジウムの持ち方も少し考えないといけないと思った。
今日の一般講演は午前中だけでおしまい。ぼくも今回は前任地の6年前のデータで話をしたのだが、某Sさんは前任地での9年前でのデータで話をしていた。お互い転勤がらみでドタバタして、これまで話す機会を逸していたものだ。Sさんとはその件についてちょっと話をしたのだが、まあ仕方がないでしょう、というところで意見の一致をみた。
今日楽しみにしていたのは、伊藤文紀「戦後間もなく岩田久二雄がみた香川県の昆虫」だ。このブログの名前は、自然観察者の手記などを著した岩田久二雄にちなんでいる。しかしながら、恥ずかしいことに、ぼくは岩田久二雄が香川大学農学部の前身である香川高等農林学校で教鞭を執っていたことを知らなかった。岩田久二雄が「昆虫学50年」という著書の中に2年間の香川時代のことをいろいろ書いているということだが、「昆虫学50年」はぼくが高校生時代に読んだ本なので、もう完全に忘れていたのだ。この講演のあと、会場のすぐ近くにある香川大学博物館に行ったら、岩田久二雄に因んだ展示もあり、標本の現物も見ることができた。
昼食はMさん、Iさんと一緒に昨日のうどん屋へもう一度。ぼくはそこそこレベルの高い店だと思ったが、地元の人に訊いてみれば、まだまだですよ、などと言われるかも知れない。
昼食から戻ると学会会場前のホルトノキの前に人だかり。人が集まっていれば何か面白い虫がいるのではないかと、ますます人が集まってくる感じだった。カイガラムシや葉を巻く鱗翅目の幼虫が棲んでいたあとや、ヒロヘリアオイラガの繭などを見る。
午後はシンポジウム「樹液と昆虫の生態学」。樹液をめぐる生態学は面白いぞ、ということを宣言すること目標としたものだったと思うが、全体としての印象は、ちょっと期待はずれだったような気がした。市川先生のボクトウガの生態の話は熱弁で聴きごたえがあるものではあったが、最初に学会の一般講演で聴いたときほどの衝撃はなく、その後あまり進展していないという印象を持った。クヌギジュエキダニの話はちょっと地味すぎる感じ。カブトムシの話の内容はそれなりに興味深いものだったが、喋り方にもう少し工夫が欲しいと思った。多種共存メカニズムの話は、直感的に当たり前だと思われることをデータをもって示したに過ぎない感じがした。
夕方は「日本半翅類学会」の小集会。ぼくにとっては、アットホームな感じがする会だ。一人一話形式で参加者全員が何らかの話をしたが、ぼくは今年職場のガガイモで発生したヒメジュウジナガカメムシのパワーポイントファイルを持参して、ヒメジュウジナガカメムシの生態の一断面を紹介した。
そのあとは街に繰り出して「日本半翅類学会」の懇親会。ここでも2人から「ブログを読んでます」と言われた。読んでいただけるのは嬉しいが、下手なことは書けないなぁ、と思ってしまう。
この店を出たら、他のグループの一次会が終わったところに出くわしたら、そのなかに「斷蟲亭日乘」のMさんもいたので、「斷蟲亭日乘」の名前をつけた理由ついて訊ねた。永井荷風描くところの下町が好きだ、とのこと。
そこで「日本半翅類学会」の懇親会に参加したメンバーとも別れを告げる。
そう言えば、この学会中に鳴き声を聞いたセミはアブラゼミだけ。それに死にかけたクマゼミを見たが、何故かツクツクボウシの鳴き声は聞かなかった。街中ばかりにいたので、ツクツクボウシがいなかったか少なかったのではないかと思う。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
私は学会で京都に行っていましたが、街中では全くセミはいませんでした。結局、京都御所でツクツクボウシをきいただけでした。
投稿: Zikade | 2008年9月19日 (金) 15時23分
京都のことは熊80さんからも情報をいただきますが、さすがにニイニイゼミやクマゼミは終わってしまっているようですね。アブラゼミはまだ残っていそうな気がしますが。
投稿: Ohrwurm | 2008年9月19日 (金) 20時06分