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2008年8月31日 (日)

池田清彦・養老孟司 著『ほんとうの環境問題』

池田清彦・養老孟司 著『ほんとうの環境問題』

2008年3月15日発行
新潮社
ISBN978-4-10-423104-1
1,000円+税

 今朝の朝日新聞の耕論の養老孟司氏の著者の紹介の中で「近著」として紹介されていたので、早速図書館で借りてきて読んだ。単に共著と書かれていたので、誰と共著なのかわからなかったが、池田清彦氏との共著ということで、これは面白そうだ、と直感した。養老氏も池田氏もいわゆる「虫屋」であり、歯に衣着せぬ論客だからだ。

 全体は3部に分かれており、まず養老氏が『環境について、ほんとうに考えるべきこと』、次に池田氏が『環境問題の錯覚』について書き、さいごが『「環境問題」という問題』という両氏の対談という形式になっている。
 書かれていることは、二酸化炭素と地球温暖化に関する問題を中心とする環境の問題が中心である。まず、本当に地球が温暖化しているのか、とか、地球が温暖化すると本当に悪いことばかり起こるのか、などというところから疑問を呈している。論調は、二人とも「今の日本の政治家や官僚は環境問題のことを何も考えていない」というところがほぼ一貫していた。あてにならないデータにおどらされて無駄な金(税金)を使っているぐらいなら、その金を信頼できるデータをとるために回したら良い、などと至極もっともなことも書かれていた。京都議定書の承認に関しても、環境問題の本質は石油とカネの問題なのに、日本政府はそこがわかっていない、などとも書かれていた。少子化問題についても、地球環境のことをマジメに考えるなら、少子化は歓迎すべきことだ、とも書かれていた。自分のように、ある組織に所属しているような人間にはとても言えないようなホンネが書かれていて、実に痛快だった。
 霞が関のお役人や永田町の政治家の皆さんには、ぜひ読んでいただきたいと思った。
 この本の内容とは直接関係ないが、最近とみに目にしたり耳にしたりすることが多い「生物多様性」という言葉も、ぼくには怪しげな言葉に思える。この二人の考え方を聞いてみたいものだ。

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コメント

σ(^-^)も読みました。

池田さんは論旨明快、環境問題にずばずばと切り込んでいて爽快です。環境論に限らず、他著で展開する科学論、文明論、政治批評など、論点も明解だし、用いるデータも、論理構成も説得力があります。
これに対し養老孟司は支離滅裂、なんでこんな人がテレビやベストセラーでもてはやされるのか、池田清彦なんかが相手にするのか、脱力してしまいます。

本書でも巻頭に「環境についてほんとうに考えるべきこと」などというエッセイを寄せていますが、もし、池田清彦を知らずに書名を見てこの本に興味を持って買った人が、養老孟司の巻頭文から読み始めて、この本を投げ出してしまわないかとはらはらしました。

「私は若者をだます気はありません。エネルギーに頼らず、自力で暮らせばよいとは思います。ただし、いまの状況で山奥で畑を作れなんていいません。日本人がエネルギー抜きで理想社会なんてつくったところで、中国人や北朝鮮の人が侵入してくるだけのことでしょう」(P21養老)

この馬鹿まる出しの壁ぶりには恐れ入ります。科学者のハズの養老がエネルギーをどう考えているのか、「熱力学の第二法則」なんて振りかざして、ほんとうに理解しているのだろうかとあきれてしまいます。

》「生物多様性」という言葉も、ぼくには怪しげな言葉に思える。この二人の考え方を聞いてみたいものだ。
養老には聞かなくてもいいと思います。池田清彦はすでにあちこちで論を展開していますね。
私は、池田さん、なんで養老孟司なんかと共著するのですか・・・と聞いてみたい。

投稿: こけた | 2008年9月 1日 (月) 19時41分

こけたさん、どうもです。
 養老センセは、もうかなり前から開き直っていると思います。もう半ばヤケクソのところがあると思います。養老センセは、細かい論理の矛盾など、全く気にしていないのではないかと思っています。ぼくは、そう思って読んでいました。
 緻密さの違いは、これからの人生がそれほど長くない養老センセと、まだほどほどに長い池田センセという違いもあるのではないかと思っています。

投稿: Ohrwurm | 2008年9月 1日 (月) 23時11分

池田清彦・・・「やがて消えゆく我が身なら」なんて、老い先短しでやけくそ気味の書名の著書も上梓してますが、内容は誠実で、社会的な欺瞞への憤怒に触れると、σ(^-^)も感じたことはしっかり言わねば、つたなくとも理解されたいというように激励されるも思いで読みます。

これにたいし養老センセ、「バカの壁」なんて書名がそもそも、自分を理解してもらいたいなんて意欲を投げ捨ててるとしか思いません。こんな年寄りにはなりたくない!我が国の宰相たちと同じ穴の狢・・・(;;)

投稿: こけた | 2008年9月 2日 (火) 22時06分

こけたさん、再びコメントありがとうございました。
 こう言ってしまうと身も蓋もありませんが、こけたさんとぼくの世代の違いによる感じ方の違いも大きいのではないかと思います。養老センセはある特定の世代の人との間には確執があるみたいですし。
 こんどお会いできると思いますので、またその時にでもお話できたらお話しましょう。

投稿: Ohrwurm | 2008年9月 3日 (水) 07時02分

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