日本昆虫学会第67回大会2日目(2007年9月16日)
今朝は6時半に目覚ましがなるまで熟睡した。シャワーを浴びて、少し持ち帰ってきた昨日の懇親会の残りの料理と、なんばウォークのわしたショップで買ったカップの沖縄そばを食べた。昨日の懇親会の料理がまだお腹の中に残っている感じだったので、これで十分満腹した。
8時15分ぐらいにホテルを出て、JR元町から六甲道に行こうかとふと考えたのだが、神戸市営地下鉄の「みなと元町」駅の写真を撮ろうと思い直したので、結局そこを通って、神戸高速鉄道の花隈駅に向かった。あとは昨日と同じ経路。
朝一番の安藤喜一先生の講演「オオカマキリの「雪予想」は間違いである」の会場へは、一番乗りしたので一番良い席を確保できた。安藤先生は、去年の昆虫学会の大会で、初めて酒井與喜夫著「カマキリは大雪を知っていた」 (社)農山漁村文化協会 人間選書250 ISBN4-540-03114-7 に書かれている内容に対して批判をした。示された根拠は、カマキリの卵のうは雪に埋もれても死なないどころか、雪に埋もれた方がかえって孵化率が高い、というものだった。それだけでも十分だとは思うのだが、さらに今年は、雪解けの水の中に長時間浸されても卵は死なない、というデータも付け加えられた。
その結果、酒井氏の著書に対する評価は、「雪に埋もれた卵はすべて死んでしまうという間違った思い込みに基づいているため、書かれている内容は全く根拠が無いものである。酒井氏の文章表現が巧みであるため、それを信じてしまう人がいても不思議ではない。この間違いがおこったのは、適切な指導者なり助言者がいなかったことが原因である。酒井氏が得たデータには酒井氏の基準に基づいた様々な補正が加えられた上で有意な相関があることが示されていることから、積雪量を予測しているのはオオカマキリではなく酒井氏自身である。」というもので、ぼくがこの本を読んだときの感想とほとんど同じものだった。酒井氏はこの研究で博士の学位を得ているが、それが理学博士や農学博士ではなく、工学博士だったことは、せめてもの救いだったかも知れない。安藤先生には、酒井氏によって作られた間違った定説を正すための一般の人向けの啓蒙書を書いていただきたいものだと思った。
世の中に似非科学がはびこっているのは事実らしい。江本勝氏の「水からの伝言」からはある種の悪意を感じ取ることもできるが、「カマキリは大雪を知っていた」からは著者である酒井氏の全く悪意というか、うさんくささは全く感じられず、それがゆえにかえって間違いを正すことが難しいのではないかと感じられる。
その他の講演で面白く感じられたのは、高知大学の原田哲夫先生グループの外洋棲のウミアメンボの話題2題。ゲッチョ先生の著書『ゲッチョ昆虫記—新種はこうして見つけよう』に書かれていることと併せると、外洋棲のウミアメンボ類の密度はけっこう高く、海流の流れに身を任せて漂っている、という生活をしていることが窺われる。
午後のシンポジウムは一般への公開も兼ねていた。時間が種分化にどのような影響を与えたか、というような内容の話が3題あったが、結局は時間が種分化に影響を与えたのではなく、進化の結果、時間的な形質が分化したのではないか、というところに落ち着いたと理解した。
このシンポジウムでは、たまたますぐ前の席に若い女性2がいたので、学会員ではないと思ったので声をかけて話をしたところ、学校の先生に話を聞いて面白そうだと思ったから、という理由で参加した地元の神戸高校と御影高校の生徒だった。2人とも虫が好きで、将来はこの方面の勉強がしたいとのことだった。こういう若い人がたくさん仲間になって欲しいものだ。特に正木先生と竹田先生は英語の専門用語を多用されたので、高校生のためには理解の妨げになったのではないかと思った。この2人には宮竹先生の話が一番面白いと感じたとのことだった。ぼく自身も、宮竹さんの話が一番解りやすかった。しかし、見知らぬ女子高生と話をしたのは何年ぶりのことだろうか。
シンポジウムの後は「日本半翅類学会」の小集会に出た。京都大学の藤崎先生による奄美大島のカメムシの写真がいろいろ紹介された後、一人一話形式で全員が少しずつ話をした。藤崎先生の奄美大島のカメムシに対してはいろいろ疑問なり自分の考えなりがあったが、時間の制約もあったので、そのあとの懇親会でゆっくりと、と思っていたが、藤崎先生は別のグループの懇親会に参加されたようで、話をしそこねてしまった。藤崎先生も忙しいはずだが、お暇なときに一度京都におしかけて、話をしたいと思う。
半翅類学会のグループは三宮の居酒屋に繰り出して、多いに喋った。林先生と若い学生さんがいると、話が盛り上がって大変楽しい。明日のこともあるので、10時半ぐらいに一応お開きになり、花隈まで電車に乗り、ホテルに戻った。
明日は最終日。かなり疲れが溜まってきた感じだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
こんにちは。
今日(2007.12.16)付の朝日新聞日曜版に「カマキリ予測」についての記事が出ています。「異論も出ている」とも書かれていますが、朝日新聞が取り上げると言うこと自体に問題を感じます。
投稿: Zikade | 2007年12月16日 (日) 22時05分
Zikadeさん、コメントありがとうございました。
ぼくも読みました。「異論が出ている」と書かれていましたが、その異論を紹介して欲しかったです。朝日新聞の科学部もダメになっちゃったんでしょうかねぇ。「科学朝日」や「サイアス」が出ていた頃だったら、もう少し突っ込んだ記事になっていたのではないかと思います。その頃の編集責任者だった柏原精一さんは今どうされているのでしょうかねぇ?もう定年になられたのでしょうか?
投稿: Ohrwurm | 2007年12月16日 (日) 22時16分