盛口満著『ゲッチョ昆虫記—新種はこうして見つけよう』
盛口満著『ゲッチョ昆虫記—新種はこうして見つけよう』
2007年6月15日発行 どうぶつ社 1,500円+税
ISBN978-4-88622-336-4 C0040
一昨日からとある研修の講師などという慣れない仕事をしていたので、その準備の段階から普段にない疲れを感じていた。とにかく今日のお昼までで終わったので、最低限の日常の仕事だけを片付けて、早々に帰宅した。とりあえず昼寝でもしようかと思っていたのだが、郵便物が届いているのに気が付き、それに目をやった。それはゲッチョ先生からのものだった。岩崎卓爾に関する本を出すという話をうかがっていたので、それに違いないと思った。
中を開けて出て来たのが表題の本。早速布団の上でゴロゴロしながらも読み終えた。
ゲッチョ先生の著書で「昆虫記」と名が付いている本は、『ぼくらの昆虫記 』(講談社現代新書)に次いで二冊目だ。副表題は「新種はこうして見つけよう」。なかなか惹かれる表題だ。昆虫少年にとっての憧れは、新種の昆虫を見つけることだ。自分も子供の頃はそういう夢を持っていた。昆虫学者になって新種の虫を見つけるんだ、などと。
時が経ち、熱帯に行かなければ新種など見つけられないと思うようになってからは、そればかりが理由ではないが、昆虫の行動や生態の方に興味が移った。しかし、石垣島で暮らす機会を得てから、自分も思いがけず新種を発見する機会に恵まれた。しかし、それはそれなりの理由があったというのが、この本を読んで納得できることが多い。
この本には昆虫の名前に名前を遺した二人の人物、すなわち、九州帝国大学の昆虫学教室の教授だった江崎梯三博士と、石垣島気象台の所長として半生を石垣島で過ごし、天文屋の御主前(てんぶんやーぬうしゅまい)として親しまれた岩崎卓爾翁に迫り、昆虫の新種はどのようにして見つけられるのか、ということが昆虫に詳しく無い人にもわかるように書かれている。要点だけ書けば、他の人が虫を採らないような場所で虫を採る、ということだ。詳しく知りたい人は、本書を読んで欲しい。
この二人を結びつける虫の一つにイワサキオオトゲカメムシ Amblycara gladiatoria (Stål, 1876) があり、それについても少し紹介されている。残念ながら、この虫の絵は描かれていない。ぼくがもう少し早く標本を送っていれば、この本の挿絵に描かれたはずだったと思う。このカメムシの寄主植物を明らかにすることに半分ぐらい貢献した自分にとっては、ちょっと残念だった。
本書に登場するゲッチョ先生の回りの人物の描写も愉しい。類は友を呼ぶと言うか、なんとなく気が合いそうだな、と思われる人がゲッチョ先生の回りに集まっている。スギモトくんも相変わらず活躍されているようだ。人気ブログを書いているマルヤマさんも登場しているので、マルヤマさんのブログでも紹介されるに違いない。ぼくとはまた違った読み方をされると思うので、書評を期待したい。
さいごになったが、愉しい本を贈っていただいたゲッチョ先生に感謝する。
参考文献
- 河野勝行・林 正美,2003,イワサキオオトゲカメムシの寄主植物と生態に関する知見.Rostria No. 51: 55-59.
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コメント
おはようございます。お世話になっています。スギモト君を通じてゲッチョ先生から、本を送りたいので住所を知りたいとの連絡を頂き、先ほど住所をお伝えしたところです。届きましたら拙ブログでも紹介する予定でおります。いまから楽しみです!
投稿: 丸山 | 2007年6月15日 (金) 08時31分
丸山さん、コメントありがとうございました。書評、楽しみにしております。
ところで、17年ゼミの大発生をご覧になった(お聞きになった?)とのこと。羨ましいです。
投稿: Ohrwurm | 2007年6月15日 (金) 19時59分
こんばんは
週刊ポスト7月27日号
Post Book Revew「味わい本 発見」でこの本が取り上げられてます。
ご存じでしたか?
必要でしたら、サロンの時に差し上げます。
投稿: しろへり | 2007年7月23日 (月) 20時03分
シロヘリさん、こんばんは。情報ありがとうございました。週刊誌は図書館に行ったときにたまに読む程度なので、知りませんでした(津市図書館に週刊ポストは無かったかも知れませんけど)。どんなことが書かれていたか気になりますので、次回のサロンのときに持参してだけると嬉しいです。
投稿: Ohrwurm | 2007年7月23日 (月) 22時23分