モンシロチョウが飛んだ
職場に設置してあるトラップの調査をしたら、オオクロナガオサムシ Leptocarabus kumagaii Komiya et Kimura, 1974 の2齢幼虫が全部で9頭も入っていた。オオクロナガオサムシはここでは常連の虫なので、採れることには何の不思議もないが、一度にこれほど採れたことは、今まで一度もなかった。昨日も今日も暖かいので、一気に活動を始めたのかも知れない。
今日はよく晴れて風もあまり無いので、いかにも蝶が飛びそうだと思った。キャベツ畑のトラップを調査していると、久しぶりにマルガタゴミムシの仲間 Amara sp. が入っていた。するとその時、足下からモンシロチョウ Artogeia rapae (Linnaeus, 1758) が飛び出した。ある程度予感はあったものの、本当に出て来たときは嬉しかった。
飛び出したモンシロチョウは近くのキャベツの葉に止まった。よく見てみると、雌のようだ。普通は雄の方が先に出て来るので意外だった。ついこの前まではモンシロチョウの幼虫がいたので、それはどうなったのかと思って探してみたが、モンシロチョウの幼虫はなかなか見つからなかった。キャベツの葉には鳥につつかれたような痕がいっぱいあったので、多くは鳥に捕食されてしまったのだろう。それでも何とか、1頭の幼虫を見つけることができた。5齢幼虫だ。次の世代の成虫が既に出現しているわけだから、この冬この場所では、幼虫で冬を越した個体が居たと言っても良いだろう。
モンシロチョウのことが気になったので、昼休みは卓球に行く前に、もう満開を過ぎかけている近所のカラシナの畑に出かけた。するとそこでは、3頭のモンシロチョウのほか、モンキチョウ Colias erate (Esper, [1805]) とキタテハ Polygonia c-aureum (Linnaeus, 1758) も飛んでいた。これだけのモンシロチョウを見れば、単発的な発生ではなく、もう本格的な発生が始まっていると見ても良いだろう。もちろん、こちらに転居してからこれほど早い時期にモンシロチョウの成虫が発生したのは初めてだ。地球温暖化が言われており、全く心配でないと言えば嘘になるが、春が来たと感じるのは、気持ちの良いことだ。
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コメント
今晩は。
安田さんのブログにも書き込んだ事が
あるのですが、こちらではナスタチウム(キンレンカ科)を食べるモンシロチョウが観察出来ます。石垣島でも見られましたか?モンシロチョウはアブラナ科の中でも栽培種好み、とかなりえり好みをしているのに、アブラナ科以外の食草の存在には驚きました。内地でも見られる食性なのでしょうか・・。
カメムシ(Dysdercus)の論文ですが
幾つかの植物学名とある一つの単語が訳せませんでした。植物名はまた時間をみつけて探索するとして、単語の意味合いを質問してもよろしいでしょうか?
タイトルと本文中にも出てくるDysdercus true bugsの「true」とは・・
真性の?ではしっくり来ないし、どう言い換えたら良いのでしょう?(内容には直接関わらない初歩的質問で申し訳ありません)
投稿: ひるぎ | 2007年2月22日 (木) 23時59分
ひるぎさん、コメントありがとうございます。
ナスタチウムのことは知りませんでしたので、ネットでざっと検索したのですが、ノンゼンハレン科で、カラシ油配糖体をもっているようですね。勉強になりました。
石垣島にいたときは、フウチョウソウ科のヒメフウチョウソウを食べるモンシロチョウを見ましたし、こちらでもセイヨウフウチョウソウを食べるのを見たことがあります。これらもカラシ油配糖体をもっています。
カラシ油配糖体はアブラナ科を特徴づける物質で、おそらくモンシロチョウの産卵刺激物質になっているので、ナスタチウムにも産卵するのでしょうね。
ところで、true bugのことですが、単にbugというと虫一般を示すこともあるので、本当の(狭義の)bugということで、true bugにしなさいと査読者からの指示があり、後からtrueを入れたという経緯があります。ようするに、狭義のカメムシの仲間(カメムシ型類、Pentatomomorpha)のことです。
投稿: Ohrwurm | 2007年2月23日 (金) 21時04分
Ohrwurmさま
いつもながら丁寧な解説を有り難うございます。研究者の方が直接疑問に応えて下さるとは、なんて贅沢な場だろうと思います。
論文を拝読しての感想は、
頭の中にまっさらの白地図があり、
そこへ幾種かのカメムシとそのホストが記入された・・感じです。何かを知る度にフィールドを見る目が変わるのは本当に楽しいことですね。有り難うございました。
ナスタチウムの科名、間違っていました。
キンレンカ(金蓮花)は別名でした。
葉も花も食用になりますが、やはりカラシナに似たピリッとした風味があります。
沖縄本島で近年モンシロチョウが増えたのは
ナスタチウムの半野生化が一因か?と沖縄昆虫同好会の例会で話題に上ったことがありました。
投稿: ひるぎ | 2007年2月23日 (金) 22時50分