エルンスト・マイア著「これが生物学だ」
Ernst Mayr (1904-2005) の "This is Biology" (1997) の全訳(八杉貞雄・松田学訳, 1999、シュプリンガーフェアラーク東京)を読了。読み応えがある本だった。
自分が勉強していないことを自白するようで恥ずかしいが、特に石垣島に住んでいた7年間は学問としての生物関係の本を真面目に読んでいなかった。自分の専門の基礎となる生態学については、ベゴンらの生態学の教科書の日本語訳が出版されたときにひととおり目を通したが、学問としての生物学の哲学に関わるような本は全く読まなかった。もっとも、持っている時間を自然の中で過ごす時間に割り当てる割合を意識的に大きくしていたので、客観的な自然観を身につけるためには役立ったのではないかと言い訳をしておきたい。と言うわけで、この翻訳本が出版されたのは7年も前のことなので、既に書評などはたくさん出ているだろうが、その書評も全く読んでいない。
この本では、自然科学としての生物学の物理学や化学との違いを明らかにすることからはじまり、生物学の特異性、生物学の歴史、哲学などが解説され、ダーウィンの思想が人類に与えた影響の大きさ、さらに最後には人間の倫理についても言及されていた。応用科学としての生物学で仕事にかかわっており、日頃さまざまな疑問にぶちあたっていたが、いくらかは靄が消えたように思える。
100歳を越えるまで生きていたマイアはこの本を90歳を過ぎてから書き下ろしたことになるのだが、長い研究者としての経歴の中からマイアが感じて考えて来たことが、この本に凝縮されているような気がする。これから生物学を学ぶ人だけでなく、全ての人に読んでもらって考えてもらいたい本だ。
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